高橋英樹さんに聞く(後)
撮影現場は相当劣悪な環境

"前回に引き続き、時代劇のエース"高橋英樹さんに時間を割いていただき、私の好きな70年代ドラマについてお話ししていただいた。(草野直樹)
草野 今まで、いちばん影響を受けた俳優さんは?
ひとつのものを作り上げる中で何が一番大切かというと、ぼくは子供時代のどろんこ遊びをいつも思い浮かべるんですよ。どろんこ遊びってみんながドロの中で作り上げていくからおもしろいんで、外にいて遠くから眺めていてもちっともおもしろくない。みんなで作るということが大事なんであって、のべつ焼き肉大会、チャンコ鍋大会、と、○○大会をやっています。 京都には未だにぼく専用の大きな鍋があります。それで自分で作るんですよ、カツラしたままで、自分で仕入れからやって。「今日は無礼講だっ」て。ビール並べてグァーッと飲んでみんなで同じものを食べて。それで「撮影がんばろう!」って。そういうことをのべつやってましたね。そういうことが大事なんじゃないですかね。 35ミリのフィルムをビデオに焼き付けたものはいいんです。ただ、16ミリをビデオに焼き付けると、解像度の問題か何かで色味などもよくないんですね。このへん、技術的に研究すれば何とかなる問題だったと思うんですが、いかんせん、値段がビデオテープの方が安いですよね。だから、どうしてもビデオテープの方に移行してしまう。テレビの視聴者の皆さんは、ビデオのものを見続けていますから、フイルムものが出てくると何か昔の作品を見るような違和感があって、ますますビデオ化していったということでしょうね。 でもぼくは、やはり時代劇はフィルムの方がいいんじゃなかろうかと思います。研究を十分行わずに、「こんなもんじゃないの」で終わってしまったところは否めないんじゃないのかなあ。それがビデオ技術に取って代わられてしまったと。デジタルの小さなカメラで撮ってフィルムに焼き付け、それをビデオで起こすというような試みとか、もっと研究をすべきだと思いますね。 翻って日本では、「映画っていうのはこんなもんだ」という固定観念から離れず、角度が悪くても「カメラは入れませんから」と頑なになって撮っているところがあります。そんなとき、ちっぽけなカメラで撮ったっていいわけじゃないですか。ビルがないから大俯瞰が撮れないと言うけど、デジタルカメラを風船でとばせば大俯瞰が撮れるじゃないですか。失敗したらやり直せばいいんだから。柔軟性がないということなのかな。そのへんでフットワークよく、みんなが考えていかないと、ということですね。ビデオ化には綺麗さが求められていますが、それでもまだまだ考えるべき所はあると思います。 でもNGは、笠置衆さんも原節子さんもたぶんいっぱいやっていると思う。それは出しませんよね。だけど、今はその方が視聴率がいいんですから。他人の失敗は楽しいんでしょうが、自らの作り上げてきた映像の世界から見て、どこかで自分たちの首を絞めることにならないかと思うんです。 否定はしますけど、まあ、世の中の流れとして、あることだから、使われることだろうと思いながら演じてはいるんですけど。 昔と違って情報もありますから、正義の味方を演じている人が家でもそうだとまでは思われません。ではそういう人間が普段はどうなのか知りたい、演じる立場の人間の普段の姿を見せてほしいという要望が視聴者の中に高まってきた。そこにギャップがあると、その役者が魅力的に感じられる。ですからバラエティー番組にも多く出るようにしています。普段の自分をいかにご覧いただくかということが、役を演じるときの変化につながっています。 ぼくは普段からおしゃべりで、ずっとおもしろいことを話し続けているもんですから、撮影所でもいつも人だかりがあると真ん中にいるのはぼくなんです(笑) 逆に、それを主張し出すと、向こう側に座っていらっしゃる回答者の方たちが、「だまされてきているなあ、揺れ動いているなあ」「この人たち、今、頭の中がパニクッているなあ」ということが見えるんですね。それがぼくらはおもしろいです。 仕事が楽しいというのが一番だと思うんですよ。これはどんな仕事でも一緒です。楽しいか。楽しく仕事をしているか。楽しくないか。これは偉い違いです。どんな仕事でも楽な仕事はありません。どう楽しく自分自身を表現できるか。カット一つでも、楽しいカットか、楽しくないカットかによってできあがりは全く違ってきます。 それが原点となっているので、今、ものすごく楽しいです、何やっても。嫌だなあ、と思うことはないですね。 ふたつの道があったら、必ず険しい道を上りなさいといつもぼくは言うんです。楽な仕事とつらそうな仕事と二つあったら、つらそうな仕事を選びなさいと。険しい道をすぎれば、平坦な道は長く続きます。でも平坦な道を上ったら、あとは険しくなります。どっちがいいかっていったら、体力・余力があるウチに険しい道を上りなさいと。そうすれば自分自身を高めることができます。楽をしたらストップをするときですね。
聞いたところでは、「インディージョーンズ」でトロッコが地下道を行くシーンは、日本のコンパクトサイズのカメラのコマ連写でずっと撮ってつなげていたそうですね。これならどこからでも撮れるので、広大なセットを作らなくてもいいわけです。日本の技術を向こうはうまく使っているわけですよね。楽ではなく楽しく仕事をすることが大事
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