『紙の爆弾』2007年10月号(エスエル出版会)
月刊『紙の爆弾』10月号
9月7日発売!
A5判/112頁
定価500円(本体476円+税)
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村田らむのテケテケ見聞録
マッドアマノ「風刺画報」
芸能裁判を読む17
美しい国ニッポンに住む人々
ニッポン主義者同盟(遊郭派)
ベラミ伝説11
高須新聞
「おもいッきり」以降、一九九五年四月五日には「ためしてガッテン」が、一九九六年一〇月二七日には「発掘!あるある大事典」が放送開始され、それ以外にも類似番組が次々登場した。そうした健康情報番組隆盛は、ひとつに「ビジネス」とのつながりが指摘されている。
「おもいッきり」の「特集」で採り上げられた食材は、その日のスーパーの棚から消える(瞬く間に完売する)という話をよく聞く。これだけなら、無邪気で単純な視聴者に苦笑するだけだが、もし、そうした視聴者の反応を読んで、あらかじめ業者がその食材を採り上げるよう番組にはたらきかけていたらどうだろうか。
このての番組で、脳卒中のリスクを説明する中で、脳ドックによる早期発見の重要性が説かれることがあるが、前出の中原は「脳ドックの有効性自体が誤解されている」と言う。
「成人の五パーセントは未破裂状態の動脈瘤を持っていると言われています。これが脳ドックで見つかれば、医師は当然『手術しましょう』と言うことになる。
ところが、手術には副作用や後遺症のリスクが伴う。自覚症状のない動脈瘤手術の結果、死亡するケースもあります。一方、一センチ未満の動脈瘤が破裂する確率は、年当たり〇・〇五パーセント。四十年間で二パーセントの確率でしかない。脳ドックは、わずかな確率しかないリスクのために、手術を勧めるきっかけを作ってしまう。私なら動脈瘤が見つかっても手術は受けません」
日本の脳外科医は、人口が倍のアメリカが三千人なのに対して日本は五千人、CTスキャン台数は人口百万人あたり九七台でアメリカ(三二台)、ドイツ(二九台)と比べて桁外れに多い。脳ドックのPR放送でこのことは決して触れられない。
もうひとつは、専門家の間でも必ずしもきちんと指摘されていないが、国策とのつながりである。一九八〇年代以降、我が国では第二臨調主導のもとで社会保障制度の見直しが積み上げられてきた。そこでは、社会保障の「公費出し惜しみ」に留まらず、健康管理の自己責任化と社会保障制度を市場化へシフトさせる「構造改革」が企図されてきた。
ありていにいうと、従来の国民皆社会保険による医療サービスでは「医療費がパンクする」から、健康管理は国民各自の責務によるものとし、足りないところは民間事業による私的なサービスなども利用してもらうというわけだ。その方針が具現化されたひとつが、公的サービスと民間サービスが混在する介護保険である。
国はその法制化のために、「第一次国民健康づくり対策(一九七八年?)」「第二次国民健康づくり対策(一九八八年?)」「第三次国民健康づくり対策「健康日本21」(二〇〇〇年?)」など段階的に運動を推進し、二〇〇三年には強行採決で「健康増進法」を成立させた(第一五四国会)。
同法は、各自が健康状態を自覚せよという「国民の責務(第二条)」とともに、「特別用途表示食品(第六章第二六条?第三三条)」という、いわゆる健康食品の一部にお墨付きを与える条項もある。
つまり、国民に健康管理の責務を押しつけ、その対策として健康食品を検討することを国が法律で定めているのである。メディアの健康情報番組隆盛と国民の関心の高さは、こうした背景が下支えしていることを見逃してはならない。言い方をかえれば、一見他愛ない健康情報番組は、実は国民・視聴者を国策にのせるためのプロパガンダとしての役割すら果たしているということである。
巷間、健康情報番組を批判する論調はあるが、そのほとんどは、番組の健康情報が科学的根拠に疑問のある「疑似科学であること」を指摘するに留まっている。しかし、こうした番組がのさばれる背景や社会動向から見ていかなければ、事態の本質的な改善を提言することはできないだろう。
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