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イヴの末裔-Y氏の隣人特別編(吉田ひろゆき著)は世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描く1話完結の短編オムニバス作品

イヴの末裔: Y氏の隣人特別編(吉田ひろゆき著)は、世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描く1話完結の短編オムニバス作品

イヴの末裔: Y氏の隣人特別編(吉田ひろゆき著)は、世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描く1話完結の短編オムニバス作品。1988年~2002年まで『週刊ヤングジャンプ』(集英社)に連載されましたが、本書はその21世紀版。全8編うち1本は新作書き下ろしだそうです。

『Y氏の隣人』は、主人公が幸福になったり不幸になったり、また幸福が約束されているのに主人公自らがそれを辞退したりする展開を通して、世の中の不条理や、人生の幸福について問うています。

ストーリーは、1話完結のオムニバス作品です。

以前、『Y氏の隣人完全版』をご紹介しました。

Y氏の隣人完全版(吉田ひろゆき著、電書バト)は、いじめられっ子が不思議な道具を与えられる1話完結の短編オムニバス作品。
Y氏の隣人完全版(吉田ひろゆき著、電書バト)は、いじめられっ子が不思議な道具を与えられる1話完結の短編オムニバス作品。主人公が幸福になったり不幸になったりすることで、世の中の不条理や、人間のエゴを描いています。

その第1話は、宮沢賢治の『よだかの星』の現代若者版ともいえる秀作で、それ以降も全話仏教の教えである「人生は一切皆苦」を感じさせる深い話ばかりですが、なんと今回は21世紀バージョン。

何より、お釈迦様のクローンベビーも登場します。

全8編うち1本は新作書き下ろしだそうです。


おそらく他の7作も、比較的最近描かれたものだと思います。

やはり、不器用で小心な主人公に、あるツールが供され、彼らの人生が大きく変わります。

その結末は果たして吉とでるのか凶とでるのか。

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社会的な成功だけが自己実現とは限らない

『Y氏の隣人』といえば、世の悩める者の元に、幸福の伝道師・ザビエール、トヤマ、阿多福化粧品といった妙な人が訪れ、不思議な道具を無料で与えて悩みを解消してくれました。

今回は、一貫して、ホモサピエンス管理局極東支部の、今西ぎんじ調査官が使者になっています。

この調査官、上司の所長に対しても、「マジかよ」なんて言い放つ現代的な言葉遣いで、毎話の主人公ともコミュニケーションが成立してしまいます。

その今西調査官が、極東某国(まあいうまでもなく日本)を調査。

「この国のヒトビトはビョーキだね。しかもかなりの重体だ」

環境汚染や格差社会などの現実を挙げ、厳しい生存競争に負けた敗残者、いわゆる負け組と揶揄されているヒトは間違いなく絶滅する、といいます。

「それはいかん。なんとなせねば」と所長。

そこで、それらの人々に「モデルチェンジ」を行うことにしました。

具体的には、毎話の主人公に、たとえば未来が見える「目」を与えたり、天才の子どもを授けたりします。

それによって、主人公のうだつのあがらない人生は、どんどん上向きます。

しかし、必ずしもハッピーエンドにはなりません。

『ドラえもん』ののび太のように、調子に乗ってツールを使いすぎたから、ではありません。

逆に、自分には過ぎた人生だとか、他人を不幸にしてまで勝ち抜きたくないといった理由で、そのツールの恩恵を放棄したり、うまく行き過ぎて逆に寂しさを感じたりしています。

授かった子どもが特別な力を与えられ、社会的に成功するのですが、その結果、親との距離ができてしまうという話もあります。

主人公たちはみな不器用で小心な人たちです。

人生は、社会的な成功や、競争に勝つことが自己実現とは限りません。

そんな人生の奥深さを考えさせてくれるストーリーなのです。

仏教の真髄である慈悲の心を感じる作風

本書を読んで、改めて作品のモチーフに、仏教の真髄を感じました。

一切皆苦の人生で、しかも格差社会の厳しい世の中だけど、慈悲の心は失わないで頑張って生きていってほしい、という吉田ひろゆきさんの温かいメッセージが伝わってきます。

たとえば、「偉人アーカイブス」という話では、冒頭に書いたようにお釈迦様のクローンベビーが登場。

失業中で、かつ昔の同級生に騙されて高い健康食品を売りつけられるような悲惨な主人公は、ゴータマベビーをお世話してから幸運が舞い込むのですが、今西調査官は、その将来をあんじます。

「でもよお、お釈迦様ってのは本来、金持ちの王子様として生まれ育ったんだろう。奴みたいな貧乏人を里親にして、この先大丈夫かあ?」

所長はそれに対して、主人公には「誰よりも深い優しさがある」から大丈夫だと太鼓判を押しています。

主人公が、必ずしも社会的成功をおさめているとは限らない結末ですが、一貫しているのは、慈悲の心を持つ主人公は、みな自分の幸福を掴んでいる、ということです。

私は、『Y氏の隣人』というと、『週刊ヤングジャンプ』(集英社)に連載されていた1988年~2002年頃を思い出し、作品とともに自分のその頃も思い出し懐かしい気持ちになるのですが、本作のモチーフは、令和時代のこんにちでも十分に光を放っていることが本作で改めてわかりました。

ぜひ、みなさんおすすめしたい作品です。

以上、イヴの末裔: Y氏の隣人特別編(吉田ひろゆき著)は、世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描く1話完結の短編オムニバス作品、でした。


イヴの末裔: Y氏の隣人 特別編 – 吉田 ひろゆき

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