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ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治/鈴木マサカズ、新潮社)は、累計60万部を突破したといわれる話題の新書を漫画化

ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治/鈴木マサカズ、新潮社)は、累計60万部を突破したといわれる話題の新書を漫画化

ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治/鈴木マサカズ、新潮社)は、累計60万部を突破したといわれる話題の新書を漫画化した書籍です。少年院に収監される非行少年たちには、少なくない確率で境界知能(IQ71~85未満)の少年がいるといいます。しかし、本書は軽度の知的障害、発達障害への偏見を助長しかねない内容でもあると私は思いました。

『ケーキの切れない非行少年たち』は、宮口幸治さんのベストセラーを、鈴木マサカズさんが漫画化して新潮社から上梓したものです。

鈴木マサカズさんについては、『「子どもを殺してください」という親たち』(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)についてご紹介したことがあります。

「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています
「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています。統合失調症などの子弟を、説得で病院に移送するサービスを日本で初めて創始。移送後の自立・就労支援にも携わっています。

精神障害者移送サービス業を描いた漫画でした。

『ケーキの切れない非行少年たち』は2022年7月3日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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反人権的で被害者のためにもならない

本書『ケーキの切れない非行少年たち』のタイトルから見ていきます。

「ケーキの切れない」というのは、丸いケーキを3等分できない、という意味です。

では、非行少年たちは、なぜケーキを3等分できないのか。

私は最初、家庭環境とか、非行に走る共通した「闇」があるのかと思いました。

しかし、本書によると、たんに知的障害者(IQ71~85未満の境界知能)だから、ということでした。

私は本書に対して、不快感をいだきました。

特別支援学校には、境界知能にすら満たない児童・生徒がいます。

境界知能で反省しない犯罪者だったら、その子達はいったいなんだというのでしょうか。

それとも、ケーキを切れないと犯罪者予備軍なのか。

私は知的障害と言われたことはなく、むしろIQは小学校時代は校内一と言われたこともありましたが、たぶん本書に書かれているように、ケーキの切り方は縦に3等分にしていたのではないかと思います。

そもそも、IQ130なら犯罪は絶対しないのか。

それとも、高知能者の犯罪は「いい犯罪」で、発達障害や知的障害者の犯罪は、読み物や漫画のネタにしてもいい「憎むべき犯罪」なのか。

そうじゃないでしょう。

ケーキを3等分に切れないからなんだというのか。

ケーキを3等分に切れる犯罪者なら許してもいいのか。

そうじゃないのなら、なぜ少年院の中で、ケーキを切れない子だけをピックアップする必要があるのか。

それは、発達障害や知的障害をピックアップしたい口実と勘ぐることもできます。

被害者からしたら、そんなピックアップに何の意味があるのか。

手をかけたのが障碍者なら許せないが、エリートなら許せるのか。

そんなことない。

だから、ケーキを切れるかどうかという命題自体、疑問です。

本書は、そういうツッコミから逃れられないモチーフで構成されている人権上の疑義を感じる、とのそしりは免れない気がしました。

ケーキを切れるかどうかだけで線引することへの疑問

本書の内容はシンプルで、児童精神科医である六麦克彦が、少年院の非行少年を診る話です。

少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いる、と描いています。

しかし、それがなぜ社会的に問題なのかは解明されていません。

繰り返しますが、私も多分、ケーキを3等分はできなかったと思います。

でも、IQが学年一になったこともあるし、知的障害の診断を受けたこともありません。

ケーキの話自体が、センセーショナリズムのそしりを免れないのではないか。

そういうタイトルだと、本を買う人がいるだろうと。

原作者は、本書の目的は3つあるとしています。

1つ目は、世間にこういった少年たちの存在を知ってもらい、犯罪に至った人たちに対して憎しみ以外の観点でも見てほしいということ。

2つ目は、小・中学校で障害に気づかれていない子どもたちを早期に見つけてほしいこと、そして非行に走らないよう力を貸してほしいこと。

3つ目は、これを読んで少年院の教官や医師のイメージをもってもらい、少年院といった矯正施設で働いてみたいと思う人たちが少しでも増えてほしいこと。

うーん、「こういった少年たち」というのは、要するにケーキを切れない少年たちのことですか。

それって、「憎しみ以外」というけれど、だったらこの限りでは「哀れみ」しかないでしょう。

「以外」って具体的に何なのか、原作者は旗幟鮮明にすべきです。

「障害に気づかれていない子どもたちを早期に見つけてほしい」といいますが、ケーキを切れるかどうかだけで線引するのは何度も書くけど違うと思います。

それに、知的に問題のある子が入ってくる施設、というレッテルを貼って、「働いてみたいと思う人たちが少しでも増え」るでしょうか。

要するに原作者は、悪いことをして少年院に入った子供の中には、知的障害があってスポイルされた者もいる。

そのへん理解してやろう、という話なんですよね。

でももしそうだとしたら、知的障害者に失礼ではないでしょうか。

なぜなら、本書の根幹には、「彼らは可愛そうな人である」という思いを感じるからです。

もちろん、障碍者に対して「理解と支援」は必要ですが、このように恣意的な線引をしてピックアップをした上で、「でも彼らは事情がある」といっても、障碍者当事者は喜ばないと思います。

著者は、それがどのくらいわかっているのでしょう。

だって、自己肯定感をつぶされて非行に走る、というなら、何も知的障害者ではなくたって有り得る話 だからです。

どうして、知的障害者の問題としてピックアップしたのでしょうか。

ということで、正直、どうも今回は賛成できません。

こんな嫌な気になる書籍は初めてです。

みなさんのご意見もお伺いしたいです。

ぜひ1度読んでみてください。

以上、ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治/鈴木マサカズ、新潮社)は、累計60万部を突破したといわれる話題の新書を漫画化、でした。


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