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『図解MMT現代貨幣理論の基盤』(シェイブテイル著、Kindle版)は、話題のMMT(Modern Monetary Theory)について解説

『図解MMT現代貨幣理論の基盤』(シェイブテイル著、Kindle版)は、話題のMMT(Modern Monetary Theory)について解説した書籍です

『図解MMT現代貨幣理論の基盤』(シェイブテイル著、Kindle版)は、話題のMMT(Modern Monetary Theory)について解説した書籍です。これまでの経済学説をひっくり返すような指摘に対して、誤解やデマに基づいた反論は少なくありませんが、本書を読めばそれらも解決です。

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MMTとはなんだ

現代貨幣理論(Modern Monetary Theoryy⇒略称MMT)という学説が、昨今大変話題になっています。

30年に渡るデフレ、GDPや労働者の賃金などの伸び率の停滞で、先進国の看板を返上すべき事態になっている日本。

その解決に「もっとお金を刷れ」「いや、財政破綻する」という「議論」がいよいよ活発化し、そのキーワードとなっているからです。

では、MMTとはいったい何でしょうか。

MMTは、ケインズ経済学・ポストケインズ派経済学の流れを汲む、マクロ経済学理論の一つです。

税収や政府債務ではなく、インフレ率を基準に財政(市中のお金の量)を調整すべきとする説 です。

『図解MMT現代貨幣理論の基盤』は、図解でMMTについて説明されています。

私たちの暮らしの財源に対する考え方は、現代貨幣論(MMT)と、その立場取らない人々(主流派経済学者などといわれます)では正反対です。

そのために、従来の「常識」をひっくり返したような学説に思われるかもしれません。

いくつか、具体例を挙ましょう。

信用創造

お金って、そもそもどうやって誕生するのですか。

造幣局がお金を刷っている?

もちろん、それもあります。

でも、それは実はごく一部なんです。

現代貨幣論(MMT)では、貨幣は銀行貸出、つまりお金を借りることから始まり、その結果、その金額の預金が生まれるという貨幣観です。

ですから、実際の貨幣があるわけではなく、銀行がその金額を書類(通帳)に書き込むだけなので、「万年筆マネー」による創造(信用創造)により起こると捉えています。

しかし、現在の主流となっている経済学は、まず誰かの預金があり、銀行はその一部を貸し出すことができるという預金又貸し説を土台として組み立てられています。

つまり、MMTと主流派経済学では、預金と負債の因果関係が正反対なのです。

国家の「借金」は国民の資産

財務省の公式サイトや、その意を受けたマスコミ媒体では、「日本政府の借金」は、令和3年度末には990兆円に上ると見込まれることを喧伝しています。

そして、それをわざわざ日本の人口で割り、1人あたりいくらいくらと数字を出し、さも「日本国民の借金」のように話をすり替え、孫子の代までつけを残すのか、などと脅しています。

今の世代が借金をして、自分たちのために支出を行うと、子どもや
孫、ひ孫など、将来の世代に重いツケを回すことになります。(『日本の財政を考えよう』より)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202007_zaisei.pdf
その上、ここ2~3年はコロナ禍で、政府は200兆円以上の補正予算を組んでいます。

その財源は国債発行。

そこには、わざわざ「赤字」国債と、いかにも借金然とした表現を使っています。

しかし、本当にそれは借金なのでしょうか。

そもそも、「日本政府の借金」なるものは、孫子の代で支払わなければならない「日本国民の借金」なのでしょうか。

本書、『図解MMT現代貨幣理論の基盤』は、そうしたデマゴギー、もしくは誤解を解き明かしてくれる書籍です。

金は天下の回りもの、ということわざがあります。

誰かが金を使うと、誰かが儲かり、今度は儲かった人がその金を別のところに使えば、別の人が潤う。

お金ってそういうものですよね。

何を言いたいかと言うと、誰かがお金を使えば、つまり債務ができれば、誰かが同額の債権を持つということです。

では、話を戻して、政府が「赤字」国債を発行すると、それは誰にいくのか。

国民に行きます。

企業や個人に渡ります。

つまり、政府の借金なるものは、国民にとっては資産になっているということです。

ですから、冒頭に示した財務省の『日本の財政を考えよう』における「将来の世代」云々カンヌンというのは、資産と負債の関係を正反対に描いているデマゴギーです。

残高を増やし続けなければならない『借金』

「私たちの借金でないことはわかった。でも、政府の借金であることは事実なんだろう?」

と思われますか。

では、国債発行というのは、「借金」なんでしょうか。

国債発行は「借金」ではありません。

正確に書くと、わたしたち個人や法人の立場で言う「借金」とは概念が異なるということです。

わたしたちは、たしかに「借金」が一方的に増えていったら、いずれは破綻(破産)してしまいます。

借金の残高を、増やし続けてはいけない、と言っていいでしょう。

しかし、国債は、それとは逆に、「残高を増やし続けなければならない『借金』」なのです。

先程書いたように、国債発行によって、民間の資産が増えて政府の負債が増えます。

逆に、政府が負債を減らすということは、国債発行残高を減らすということですから、民間に回っているお金が減るということです。

ですから、国債発行残高、つまり政府の借金は、増やし続けないと市中の経済は活性化しないのです。

「そんなこといったって、お金が増えていったらインフレになってしまうじゃないか」

と思われますか。

それはそのとおりです。

ただし、インフレが悪いことかと言うと、むしろインフレではない方が、つまりデフレのほうが経済は冷え込んでしまいます。

政府は2013年1月に、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」という日本銀行法に基づき、「インフレ率2%」を実現することについて、日本銀行と政策協定を結んでいます。

これは、現在の岸田政権でも継承することが答弁されています。

つまり、適度なインフレこそが、「国民経済の健全な発展」につながるものであり、具体的な数字(インフレターゲット)も決まっているのです。

ですから、その緩やかなインフレを持続するために、国債は発行し続けなければならないのです。

「でも、そうやって借金を増やし続けたら、日本政府は破綻してしまうのではないか」

政府が、子会社といってもいい日本銀行に作らせているお金の「借金」をいくら増やしたところで、誰が督促するのでしょう。

スペンディングファースト

政治家の不祥事や、批判される公的な支出があると、「我々の『税』金が無駄に使われた」と嘆くことがあります。

それは要するに、私たちが支払っている税金を財源として、この国の経済は動いている、という認識なのでしょう。

税金は、本当に財源でしょうか。

少なくとも、私たちの払った税金をいったんプールして、その総額をもとに予算の分配を行っているわけではありません。

財務省の公式サイトには、2021年度予算の一般会計歳入、つまり国家予算の財源106.6兆円の内訳が記載されています。

それによると、

所得税17.5%(18.7兆円)
法人税8.4%(9.0兆円)
消費税19.0%(20.3兆円)
その他税収8.9%(9.5兆円)
その他収入5.2%(5.6兆円)
公債金40.9%(43.6兆円)

と記載されています。

つまり、半分近くは税金以外が財源になっています。

思い出していただきたいのですが、その年度の予算は、1月に召集される通常国会で話し合われ、国会の議決を経て(おおむね野党は反対しますが与党の賛成多数で)予算として成立することになります。

ということは、法人の少なくとも3末の確定申告や個人の確定申告などを待たずに、4月以降の新年度の予算案は決まり、それが議決されるということです。

税収が国庫に入る前に、支出が決まってしまうのです。

いくら入るかもわからないのに、です。

もし、これが家計だったら、おっかない話ですよね。

いくら収入があるかわからないのに、支出だけ決めたら、どれだけ赤字になるかわからないじゃないですか。

これは、私たちの経済が、スペンディングファースト(支出が先)で成立していることにほかなりません。

税金の役割は?

さすれば、税金は、私たちの経済にとってどんな意味を持っているのか。

たとえば、

・市中のお金が多くなりすぎてインフレになったら税金で回収する(インフレ抑制)
・金持ちほど税金で回収する累進課税によって、富裕層と中流層・貧困層との格差を広げないようにする(格差の是正)
・納税制度によって貨幣に価値を与える
・遊興や嗜好品に課税することで、社会の秩序や国民の生活をコントロールする

といった、社会の方向性をコントロールするためのもの、というのがMMTの立場です。

それがまた後の予算の財源になるのは、むしろ副次的なものと思ったほうが、実態に即して通りがいいと思いますがいかがでしょう。

「でも、歳入の中に税収が含まれているのは事実だから、概念とかハチノアタマとかカタイこと言わずに『税金=財源』ということでもいいんじゃないの?」

と思われますか。

なぜ、そこにこだわるかというと、税金=財源という考え方をしている限り、冒頭に述べた財務省のデマゴギーである、「プライマリーバランス」論にハマってしまうからです。

つまり、税金=財源、公債(国債)は借金、という考え方です。

借金を返さないと財源がなくなって破綻しますよ、という脅しです。

財務省はそれだけでは済まず、繰り返しますがその借金とやらを、あたかも「国民の」ものであるかのように描いていますよね。

それをきちんと論駁できるためにも、「我々の税金から出ている」ではなく、「公費」もしくは「公金」と言い換えたほうがいいのではないでしょうか。

以上、『図解MMT現代貨幣理論の基盤』(シェイブテイル著、Kindle版)は、話題のMMT(Modern Monetary Theory)について解説した書籍です。でした。


図解 MMT現代貨幣理論の基盤 – シェイブテイル

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