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『年収100万円の豊かな節約生活術』は生活費月3万円、20年間定職に就かず生きてきた自称プータローの著者の豊かな暮らしを描いた

『年収100万円の豊かな節約生活術』は、生活費月3万円、20年間定職に就かず生きてきた自称プータローの著者の豊かな暮らしを描いた

『年収100万円の豊かな節約生活術』は、生活費月3万円、20年間定職に就かず生きてきた自称プータローの著者の豊かな暮らしを描いたものです。といっても著者は「落ちこぼれ」ではなく、東大を出て一流企業に勤めたこともある人だったのです。

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本書の内容

『年収100万円の豊かな節約生活術』(文藝春秋社)著者の山崎寿人さんは、1日の食費500円、1ヶ月の生活費3万円で20年間も定職に就かず生きてきたといいます。

といっても、この書籍は、婦人誌などに出ている小手先の倹約術を披露するとか、年収300万円で暮らすといった類の、「負け組」が数字だけをテクニックでやりくりする「対処療法」ではありません。

「貧乏は極楽」をモットーに、人生観・生活観そのものを変えることで、お金を使わなくてもできる生活のすばらしさを訴えたものです。

どう変えたのか。

そもそも山崎寿人さんは、東京大学を出て大きな会社で大きな仕事をし、日本新党の立ち上げにも関わってきました。

つまり、今の価値観で言えば「勝ち組」の側にいた人です。

何もないから苦し紛れに「節約生活」にせざるを得なかったわけではなく、節約せずとも人並み以上の「上級国民」の生活だったできたのに、自分の意志で節約生活を選択したということです。

会社をやめ定職に就かず、世俗的な名声や成果を一切求めない生き方に変えたことで、勝ちだの負けだのといった価値観自体から距離を置いた生き方をできるようになった。

その生き方の結果として、家賃収入の「年収100万円」でも「豊か」な生活ができているという話です。

節約とは言いますが、一体どんな窮乏生活をしているかと思いきや、ベランダにはハーブ菜園、食卓はご馳走、毎週のように友人を招いて宴会と、まったく貧乏臭くない生活ぶりです。

どうしてこんなに豊かな暮らしが実現できるのか?

スマホは使いません

もちろん、「節約生活」というタイトルにもある通り、現代社会で年収100万円で生活する以上、できることとできないことは当然ありますし、できないことは「節約」せざるを得ません。

ただし、それは、無駄なもの、過剰なものは一切消費しない、ということと、できることの中で楽しもう、というゲーム感覚によって、我慢するという「負の努力」なしに行っています。

たとえば、いろいろなものを食べたいと思えば、そのつど外食をしなくても、酒と乾きものを持参してもらうホームパーティーを何度も開くことで、そのたびにメニューをかえれば実現できる、といいます。

その一方で、便利でも物の値段自体は安くないコンビニや、固定電話があれば使わない携帯電話などは利用しません。

携帯電話は、移動中には便利ですが、移動中にどうしても連絡を取らなければならないような休養は、勤め人でなければないでしょう。

書籍では、コストに比べて豪勢に見える料理のレシピも紹介されています。

勝ち負けの二元論的世界観を嗤う

厳密にいうと、100万円以外にも、ポイントサイトやその他、PCを使った数多くの「アルバイト」も経験しています。

中には割りのいいものもありましたが、いずれにしてもたくさん稼ごうとしません。

定職がないのなら、そしてどうせやるのなら、そこに時間を費やしてたくさん稼いで、ネットビジネスで食べられるようにがんばればいいのでは? 

なんて考えますが、そこは山崎寿人さんの趣旨と根本的に違うところなのです。

繰り返しますが、東京大学出身の山崎寿人さんは、稼ぐなら待遇の良く安定しているサラリーマンをやっていればいいのです。

山崎寿人さんは、定職がないからこそ、そこに時間を費やすことはしたくないのだといいます。

結局、そこでガツガツ稼ごうとすれば、数字を目標にしてしまうので、営業成績を上げるためにガツガツはたらいていたサラリーマン時代と同じメンタリティになってしまうからです。

つまり、お金の問題ではなく、時間(と気持ち)の問題ということです。

周囲の人々は、善意も含めて、プーな生き方に意見をするそうです。

それを聞くたびに山崎寿人さんは、「思えば遠くへ来たもんだ」と思うのだとか。

この生活をしていると、「まだ今日の自分は○○をやってないじゃないか。早く○○をしなければ」という焦りや自責の念にさいなまれもしなければ、「問題は、何をするかだ。何もしない時間など、無駄なだけ」などと、説教を垂れられることもない。
 そのうえ、今の世に蔓延している「勝ち組か負け組か」「善(正義)か悪か」「成功か失敗か」「正しいか間違いか」「(自分はあいつより)上か下か」というように、世界を二色に塗り分け、それだけで人間の価値を評価してしまうような二元論的世界観とは、とうの昔におさらばしてしまってもいるので、「何かをしてなんば」「何かになってなんば」という観念や、二元論的世界観の上に立った「かくあるべき」「ねばならぬ」「意味があるかないか」という発想で自分の考え方や行動に価値判断を下し、己れの人生を縛り上げることは、もうやめてしまったというわけだ。
だから、“仕事をしていない=何もすることがない=ヒマ=退屈”や、“何もしない=怠惰=悪”“毎日家に独りでいる=引き籠もり=心の病”といった奇妙な等式を自分に当てはめて色々言われても、出るのはため息ばかり。料理に入れ込んでいるからといって、それをすぐに店を出すなどと、短絡的に結びつけられても弱ってしまう。

う~ん、なんて自由な考え方なんでしょう。

目からうろこ、というのはこういうことをいうのかもしれません。

私は先日体験したのですが、むかーし同級生だっただけで、何十年もあっていない人とのクラス会で、いちいちマウントを取りにくるバカバカしいやつがいました。

「誰が出世頭」だの「(負け組の)誰それでさえ来た」とか、ばっかじゃなかろうかと思いましたが、本書の考え方は、まさに「我が意を得たり」です。

いったい人間は何のために生きているのかを考え直させてくれる

私は2011年、火災で公私共に物的なものをほぼすべて失いました。

仕事も立ち行かなくなりました。

が、「今在るもので生活する」という気持ちがあれば、生きていけないわけではないこともわかりました。

事故前の私の生活には、物心両面で、山崎寿人さんいうところの過剰なものがあったのかもしれません。

その意味でも、私には山崎寿人さんの達観はよくわかります。

もっとも、山崎寿人さんは家庭をもっていませんが、私には妻子があります。

その違いがある以上、まったく同じようにはできないかもしれませんが、人間の幸福とは何か、いったい人間は何のために生きているのか、ということを改めて考えさせられた書物であることは確かです。

以上、『年収100万円の豊かな節約生活術』は、生活費月3万円、20年間定職に就かず生きてきた自称プータローの著者の豊かな暮らしを描いた、でした。


年収100万円の豊かな節約生活術 – 山崎 寿人


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