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漫画で読む文学『注文の多い料理店』(原作/宮沢賢治、漫画/だらく)は、狩猟に来た青年2人が入った奇妙な西洋料理店の話

漫画で読む文学『注文の多い料理店』(原作/宮沢賢治、漫画/だらく)は、狩猟に来た青年2人が入った奇妙な西洋料理店の話

漫画で読む文学『注文の多い料理店』(原作/宮沢賢治、漫画/だらく)は、狩猟に来た青年2人が入った奇妙な西洋料理店の話です。宮沢賢治が生前に出版した唯一の童話集『注文の多い料理店』の中のメインの作品で、今も絵本やアニメ化される初期の代表作です。

漫画で読む文学『注文の多い料理店』は、タイトル通り宮沢賢治の『注文の多い料理店』を、だらくさんが漫画化したものです。

Kindle版の描き下ろしのようですね。

西洋紳士の格好をした、ちょっと見栄っ張りのハンター2人組が、山奥で見つけた注文の多い料理店で怖ろしい目にあう物語です。

道楽で動物を撃つ2人に怖い思いをさせるストーリーによって、無用な殺生で自然を私物化することの愚かさを表現した物語と言われています。

本書は2022年12月27日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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注文はハンターに対してだった

2人の若い紳士が、白熊のような犬を二匹連れて、狩りをしているところから始まります。

漫画では、一人が鼻の下に髭をはやし、もうひとりはアイドルの握手会のためにCDを大量に買いそうなメガネデブです。←今こういう表現まずいのかな。

「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣けものも一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」

「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞いもうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒たおれるだろうねえ。」

怪しからんのは、道楽で殺生するこの2人の方ではないかと思うのですが、ご本人たちはそうは思っていないようです。

その2人は、調子に乗って山中奥までやってきたので、迷ってしまいました。

白熊のような犬は2匹とも、めまいを起こして泡を吹いて死んでしまいました。

原作には、「あんまり山が物凄いので」死んだとあります。

寒かったのか、道が険しかったのか。

しかし、2人に弔う言葉はありませんでした。

「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」

「ぼくは二千八百円の損害だ」

死んで用をなさなくなったから「損害」というのです。

まるで機械と同じです。

いや、機械でも愛着を持って使っていたら、寿命を惜しむ言葉があるでしょう。

「ぼくはもう戻もどろうとおもう。」

「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空すいてきたし戻ろうとおもう。」

ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
 風がどうと吹ふいてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「喰べたいもんだなあ」

この2人は、計画性がまったくないんですね。

どこで食べるか、ということも考えなかった。

弁当も持参しなかった。

風は、ざわざわひゅうそゅう吹いています。

2人は焦りうろうろしているうちに、立派な一軒の西洋造りの家にたどり着きました。

そして玄関には

RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒

という札がでていました。

「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」

「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」

「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」

「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」

玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。

「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」

当時の日本語は、今と微妙に違うのでしょうか。

「遠慮はいりません」ではなく、「遠慮はありません」なんですね。

日本語がかわったわけではなく、先方が遠慮しないという意味だったのかもしれませんね。

2人組は店に入ります。

「ことに肥ったお方や若いお方は大歓迎いたします」

という硝子戸の裏側の金文字。

「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ」

「ぼくらは両方兼ねているから」

一応、自分で肥っているという自覚はあるんですね。

前に進むと、また扉が。

「どうも変な家だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう」

「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなそうさ」

無理に納得しようとしているのか、自分は詳しいんだよとマウンティングしたいのか。

2人はその扉をあけようとすると、上に黄色文字が。

「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」

「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」

「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」

「注文の多い」というところを、「客からのオーダーが多い流行っている店」と解釈したようです。

その後、いくつも「注文」があります。

帽子と外套をとれとか、金物類をとれとか、クリームをぬれとか。

飲食店なのに、クリームを塗るあたりで「おかしい」と思ってもいいと思うのですが、「通」ぶりたい2人は、こじつけ的な理屈をつけて、自分たちを納得させようとします。

それでも、香水と称する酢を振りかけさせたり、塩を身体にもみ込ませたりするに至り、やっと2人は怪しいと感じます。

「沢山たくさんの注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」

「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家うちとこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」

 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、
「いや、わざわざご苦労です。
 大へん結構にできました。
 さあさあおなかにおはいりください。」
と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉めだまがこっちをのぞいています。

そして、出てきたのは、あの白熊のような犬2匹でした。

「ああ、食べられてしまう」

と、覚悟を決めた2人組でしたが、西洋料理店は、幻影であるかのように消えてしまいました。

ただし、彼らが脱いだ外套や眼鏡は、草の中のあっちの枝えだにぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしていました。

そして、恐怖でくしゃくしゃの紙くずのようになった2人の顔は、家に戻って温かい風呂に入っても、もとに戻らなかった、という話です。

不殺生戒と諸法無我

本作を通じて宮沢賢治さんは、みだりに動物を撃ち殺し、自然をあたかも自分のものであるかのように勘違いすることを戒めた、といわれています。

これは、先日ご紹介した『銀河鉄道の夜』にもいえることですが、宗教(仏教)的なメッセージがあるような気がしますね。

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浄土真宗を入り口に、法華信者になったといわれています。

仏教では、ハエや蚊の殺生も禁じています。

仏教には五戒と言って、不殺生戒(ふせっしょうかい)・不偸盗戒(ふちゅうとうかい)・不邪淫戒(ふじゃいんかい)・不妄語戒(ふもうごかい) ・不飲酒戒(ふおんじゅかい)という5つの禁止事項があります。

五戒の第一は不殺生戒で、人間の生命を保つ最小限以外の不要な殺生を禁止されています。

生命自体は、諸行無常と言って、亡くなる摂理は否定していません。

しかし、無用な殺生は、諸法無我に抵触すると考えられます。

諸法無我というのは、世の中のすべてのものごとはつながりあっていて、個として独立しているものは一つもない、という意味です。

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人間にかぎらず生命は、その諸法無我のバランスの中で成立しているという考え方です。

ですから、無用な殺生をすることで、そのバランスが崩れます。

そして、その「しわ寄せ」は、因果応報で自分に来るのだ、ということです。

「しわ寄せ」で、しわくちゃな顔になってしまった2人組ハンターは、まさにその象徴ということでしょう。

本書は、漫画によって、それをさらにわかりやすく表現してくれています。

大人も子供も楽しめるので、ぜひご覧いただきたいですね。

以上、漫画で読む文学『注文の多い料理店』(原作/宮沢賢治、漫画/だらく)は、狩猟に来た青年2人が入った奇妙な西洋料理店の話、でした。


漫画で読む文学『注文の多い料理店』 – 宮沢賢治, だらく

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