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高橋お伝の“冤罪人生”を描いた漫画『娼婦お伝』は、『まんがグリム童話 昭和の淫らな風習』(汐見朝子著、ぶんか社)に収録

高橋お伝の“冤罪人生”を描いた漫画『娼婦お伝』は、『まんがグリム童話 昭和の淫らな風習』(汐見朝子著、ぶんか社)に収録

高橋お伝の“冤罪人生”を描いた漫画『娼婦お伝』は、『まんがグリム童話 昭和の淫らな風習』(汐見朝子著、ぶんか社)に収録されています。斬首された女囚として、政府に極悪人扱いされて教科書にも使われましたが、その経緯はいささか違いました。

高橋お伝という人をご存知ですか。

高橋お伝は、斬首された女性死刑囚として、当時の教科書でも“明治の毒婦”と呼ばれましたが、実際は毒婦ではなく、殺人行為は相手に非があったことがわかっています。

その“冤罪人生”を描いた漫画『娼婦お伝』は、『まんがグリム童話 昭和の淫らな風習』の中に収録されています。

汐見朝子さんが、ぶんか社から上梓しました。

斬首(ざんしゅ)とは、罪人の首を日本刀により胴体から切断する刑罰です。

高橋お伝が処刑されたのは、明治12(1879)年ですが、翌年から斬首刑が廃止されているので、高橋お伝は「最後の斬首刑囚」といわれています。

もっとも、正確には「最後の年度の斬首刑囚」で、斬首刑の最後の被執行者というわけではないといわれています。

いずれにしても、「毒婦」として知られているお伝の生涯を漫画で追ったのが『娼婦お伝』です。

本書『まんがグリム童話 昭和の淫らな風習』は2022年12月07日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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不遇な出自からスタートして絶命後も人権無視の扱い

お伝の犯行までのいきさつは、本書を中心にご紹介します。

お伝は、母親が奉公していた沼田藩の家老との間に出来た不義の子だったため、生後すぐに母子で高橋家に持参金付きで押し付けられたとあります。

一般には、お伝は「高橋さん」と結婚して高橋姓になったように広まっていますが、本作では、生まれた時から「高橋」となっています。

押し付けられた「孕み女」だったため、夫となった人や祖母となった人からは、お伝やお伝の母親はいつも虐待されていました。

昔の婚姻は「自由意志」とは言い難いのかもしれませんが、少なくとも持参金もらったんだから文句なしだろう、と思いますけどね。

いずれにしても、子供のお伝には何の責任もないんですけどね。

祖母からは、「いつもヘラヘラしている」と、せっかんされるお伝でしたが、それは「謝っていい子にすれば好いてもらえる」という、お伝なりの処世術でした。

近所の子供達からも、いじめられていました。

そんなとき、「いい子にしていれば、いつかは……」

と自分に言い聞かせるものの、ついぽろりと涙も出ようというものです。

そんなとき、流れた涙の先に、ハンディサイズのマリア像が落ちていました。

お伝は、「いい子にしていたご褒美に、神様がくれたんだ」と思いました。

その日からお伝は、悲しいとき、辛い時は、その像に祈ったそうです。

そんなとき、「私がお前の父親になってやろう。養女のカネが嫁に行くことになってね。また誰か子供を育てたいと思って」と、養父の実兄である久右衛門が声をかけます。

久右衛門は、一族の中でも商売に成功した裕福な家で、身寄りのない子を何人も育てては嫁に出してやり、立派な人物として近所でも有名でした。

「ご立派ですな、久右衛門さん。恵まれぬ娘を養女にしては教育して出してやる。なかなかできんことですなあ」

といっても、性悪説、もしくは性弱説者の私は、この時点であやしいと思いますけどね。

半年後に、嫁ぐ養女・カネは歓迎してくれました。

「半年だけでも私たちは姉妹として暮らすんだから、姉さんて呼んでね」

字も編み物も教えてくれたカネ。

本当に親切ですが、ただひとつ気になることを言います。

「ごめんね。私はアンタが来てくれたからお嫁に行けるの。アンタも大人になるまでの辛抱だからね。どうしても我慢出来ない時は、横浜の私の嫁ぎ先まで逃げておいで」

その意味は、カネが嫁いだ夜、わかります。

養女は、少女しか愛せない久右衛門の御伽をさせられていたのです。

たしかに、昼のうち、お伝はお嬢様のように暮らしました。

学業を習い、美しい着物を与えられて……。

世間の有象無象は、そこだけを見て「立派な養父だ」というでしょう。

ね、久右衛門は論外ですが、毒親ってこういうことなんです。

ネグレクトととか、暴力とか、わかりやすい虐待なら、まだ周囲は気づいてくれるんです。

「大学まで出してやったんだから、親に感謝しろ」とかね。

親の世間体で、親の希望する大学に入らされ、それと引き換えに子供の人権が踏みにじられる、

いわゆる「隠れ毒親」というのですが、こういうところを見ないで、他人は無責任なことを言ってはいけないのです。

それはともかくとして、久右衛門にもて遊ばれたお伝は、18歳になって「大人の女はもういらぬ」と払い下げられるかのように、親族の男に嫁がされました。

夫の名は高橋浪之助。

ああそうか、久右衛門の親族だから、やはり「高橋」姓なんですね。

新婚初夜。

お伝は浪之助に対して、久右衛門にしたような御伽をしかけて浪之助は驚き、久右衛門との活を察します。

以来、浪之助は、宝物を扱うようにお伝を大事にしました。

お伝にとって生まれて初めての幸せな日々でしたが、ただ、それは長続きしませんでした。

浪之助が「らい病」(ハンセン病)にかかってしまったのです。

今は、薬で治ると判明しましたが、当時は不治の病であるだけでなく、「らい予防法」なる人権を無視した差別や偏見がまかり通り、患者は罪人のように扱われていました。

たとえば、女性は子供を産めなくさせられるとかね。

しかし、薬は高い、差別はされるで、困ったお伝は、横浜の「姉さん」を訪ねます。

姉さんは居候を歓迎してくれましたが、気持ち悪いのは亭主の吉蔵。

古物商と金貸しを営んでいるのですが、お伝をジロジロなめるように見ています。

吉蔵からは、「俺が貸してやろうか」と言われましたが、お伝はそれを断り、娼婦になってカネを稼ぎます。

異人相手は、「大きい」ので辛かったそうですが、マリア像に「我慢する」ことを誓います。

しかし、マリア様はお伝のことなんか考えてくれなかったようです。

吉蔵は、浪之助とカネを薬殺したことで、ついに堪忍袋の尾が切れ、お伝は吉蔵を殺害してしまいます。

お伝は、わざわざ「かたきをせいばいする」などという書き置きを証拠に残したために、殺害の罪で逮捕。

裁判でも、お伝はそれを繰り返しましたが、裁判官は、どうせ娼婦なんだから、うさんくさい吉蔵と一緒になりたくて、じゃまになったカネと浪之助を始末したとされ、死刑に処せられました。

明治政府は、お伝の話を、「毒婦」の物語に仕立て上げて道徳教科書にまで利用。

本書によれば、定説の尊さを説くため、お伝のことは、男を利用しては殺し、男好きゆえに娼婦になった…という歪められた虚像が描かれたといいます。

「夫を毒殺して男たちを手玉に取った稀代の毒婦」などという歌舞伎まで大ヒット。

斬首されたお伝の遺体から、なんと医学者が性器を切り取ったという話もあります。

たとえ殺人事件でも、そこまでするか、というのが、我が日本が戦前に実際にやってきたことなんです。

そして、当時の日本人というのはその程度の国民なんです。

戦前は良かったとか、嘘言うなよ保守論壇のインチキ野郎と思います。

差別がなく人権に優しいという保守論壇の虚偽がまるわかり


ということで、やはりマイケル・サンデル先生の唱えるように、「育ち」が全てでした。

マイケル・サンデル教授先生の『実力も運のうち』で、オバマ氏の「努力は必ず報われる」が社会の分断招いたという指摘が話題
マイケル・サンデル教授先生の『実力も運のうち』で、オバマ氏の「努力は必ず報われる」が社会の分断招いたという指摘が話題です。中村佑子さんが書評で解説していますが、努力による「功績」偏重社会の奥底に眠る人間の奢りをあぶりだしています。

酷い出自から、這い上がる人もいますが、人生は必然と偶然によって結果が出ますから、この偶然というのは、私たちの現実としてはまさに偶然。くじ引きのようなもので、本人の責任に関係なく、這い上がるきっかけになる場合もあれば、さらに転落するきっかけになる場合もあるのです。

で、前提が悲惨ですと、「偶然」の部分も悪い偶然であることが多くなってしまいます。

もうひとつは、繰り返しになりますが、保守論壇のインチキさですね。

保守論壇は、東アジアの「彼の国」は地上の楽園ではなかったとか、反日思想だとか、いやゆる野党陣営を攻撃します。

で、そう言われても仕方のない部分はあると私は思います。

ですが、翻って保守論壇よ、あんたらどうなんだ、という話です。

日本は差別のないいい国なんて平気で言う人がいますが、これほど差別と人権無視の犠牲者はいないでしょう。

それと、私だけが感じたことかもしれませんが、「既存宗教の虚しさ」ですね。

作品中に、無力なマリア様が出てきましたが、仏教ですと、こうして悪いことが重なる人生を、すぐ前世のせいにしてしまうのです。

前世という言い方ぐらい、腹立たしいものはないでしょう。

だって、よく考えるとおかしいから。

何故、何の罪も無い人間が酷い「ほしのもと」に生まれ、繰り返し不運・不幸を経験するのか。

前世の行いがというけれど、前世の行いが悪いと、現世で何の罪もおかさず、前世の記憶も全く無いのに、罰を与えるのはおかしいのではないか。

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これに対する答えはないんですよね。

結局、何も解決していないし、真実(前世はあるのか、あるとしてもなぜ前世の報いを「その時」に受けなければならないのか)にも肉薄したためしがない。

原始仏教から大乗仏教となり、現在まで、仏教の歴史が正確に何年あるか知りませんが、前世があるのかどうかという、もっとも根本的なことをそもそも客観的に明らかにしたことは1度もありません。

その大前提がはっきりしないのに、どうして輪廻転生から外れた涅槃なんて概念が出てくるのでしょう。

仏教を否定しているのではありません。

いい加減な経典で韜晦趣味に浸ってないで、このようなどん底の人達を救うための説得力ある道筋を明らかにしてほしいと言っているのです。

以上、高橋お伝の“冤罪人生”を描いた漫画『娼婦お伝』は、『まんがグリム童話 昭和の淫らな風習』(汐見朝子著、ぶんか社)に収録、でした。


まんがグリム童話 昭和の淫らな風習 – 汐見朝子


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