近年、AI技術の進化は目覚ましく、教育の現場にもその波が押し寄せています。その中でも注目を集めているのが、OpenAIが開発した対話型AI「ChatGPT」です。
受験生の間でも「ChatGPTを使って勉強できる?」「問題集を作らせられる?」といった関心が高まりつつあります。では、実際にChatGPTを使って受験勉強用の問題集を作ることは可能なのでしょうか?この記事では、その可能性と活用方法、そして注意点をわかりやすく解説していきます。
ChatGPTは「問題集メーカー」になれるのか?
結論から言えば、ChatGPTは十分に受験勉強用の問題集を作ることができます。ChatGPTは、言語ベースのAIでありながら、さまざまな教科の知識に対応しています。日本史・世界史・英語・数学・化学・物理・現代文・古文・漢文など、主要教科について、単語帳形式のクイズから選択肢付きの問題、記述式の問題まで幅広く生成できます。
たとえば、以下のような指示を出せば、その場で問題が作成されます:
-
「共通テストの英語リーディング風の読解問題を作って」
-
「高校日本史の江戸時代について記述問題を5問出して」
-
「数列の漸化式に関する数ⅡBレベルの問題を3問作って、解説も付けて」
-
「センター古文レベルの文章を使った読解問題を作って」
これらはすべて、ChatGPTが即座に対応可能な内容です。さらに、繰り返し同様の指示を出すことで、オリジナルの問題集を大量に自作することも可能です。
ChatGPTの活用方法:オーダーメイド問題集の時代
ChatGPTの最大の魅力は、「自分だけの問題集」を作れることです。市販の問題集はもちろんよくできていますが、自分の苦手分野だけを重点的に練習したいとき、あるいは少し変わった視点から問題を解いてみたいとき、市販教材だけでは対応が難しい場合があります。そんなとき、ChatGPTは以下のように活躍します:
-
ピンポイント対策ができる:「関係代名詞に特化した英作文問題を10問」など、テーマを絞った問題を作成可能。
-
レベル調整が柔軟:「基礎レベル」「難関私大レベル」「東大レベル」など、難易度を調整して出題。
-
解説つきで理解を深める:問題だけでなく、詳しい解説や別解も依頼すれば書いてくれる。
-
インタラクティブな学習:「なぜこの答えになるの?」と質問すれば、すぐに補足説明が返ってくる。
こうした活用をすれば、まるで「自分専用の家庭教師兼問題集メーカー」を手に入れたような感覚です。
注意点:ChatGPTを使う際の落とし穴
しかし、万能のように見えるChatGPTにも、使用にあたって注意すべきポイントがあります。
-
情報の正確性に限界がある
ChatGPTは非常に自然な文章で問題や解説を生成しますが、すべてが100%正確とは限りません。特にマイナーな知識や専門性の高い分野、最新の入試傾向には弱い場合があります。作成された問題や解答を使う前に、自分で確認したり、先生や参考書と照らし合わせたりすることが重要です。 -
出題形式にバリエーションが偏ることがある
一部の形式(たとえば選択肢問題や記述問題)に偏りやすい傾向があります。自分の受験する大学の出題傾向を参考にしながら、出題形式を明示して指示するとより実践的な問題が作れます。 -
「わかった気になってしまう」危険性
ChatGPTの解説は分かりやすいため、読み流して「理解したつもり」になってしまうことがあります。実際に手を動かして問題を解く、音読するなど、自分なりの「定着」の工夫が必要です。
まとめ:ChatGPTは使い方次第で「最強の相棒」になる
ChatGPTは、使い方次第で、受験勉強の強力な武器になります。問題を自作できるだけでなく、その場で疑問点を解消できる双方向性があり、学習の質と効率を大きく向上させる可能性を秘めています。ただし、AI任せにせず、自分自身で確認し、理解を深めていく「主体的な学習姿勢」が不可欠です。
受験勉強において最も重要なのは、「自分の頭で考えること」。ChatGPTはそのためのサポーターとして活用し、オリジナル問題集をどんどん作って、勉強を楽しみながら進めていきましょう。
ChatGPTで「境界知能の中3生」向けの数学問題集は作れるのか?
AIの進化が加速する現代、ChatGPTのような生成AIは教育分野にも革新をもたらしています。特に注目されているのが、「個別最適化された学習支援」です。
今回はその中でも、知的境界(いわゆるグレーゾーン)にある中学3年生の生徒を対象とした数学問題集をChatGPTで作ることは可能か?というテーマで、実際の教育現場を想定しながら、その可能性と注意点を掘り下げてみましょう。
境界知能とは?
まず簡単に確認しておきましょう。いわゆる「境界知能」とは、IQがおおよそ70〜85程度の範囲にある人々を指す言葉です。学習障害や発達障害と診断されるほどではないものの、一般的な授業進度に追いつくことが難しく、抽象的な思考や複雑な手順の処理に困難を感じやすいのが特徴です。
中学3年生ともなれば数学では「2次方程式」「平方根」「関数」「図形の証明」など、抽象度の高い単元が登場します。こうした内容を境界知能の生徒が理解するためには、「やさしい言葉で」「具体的に」「ステップを分けて」説明する工夫が欠かせません。
ChatGPTはこのような教材を作れるのか?
ここで本題です。ChatGPTは、境界知能の生徒に合ったやさしい数学教材を作成できます。その理由は主に以下の3点にあります。
やさしい言葉で説明する能力
ChatGPTは、言葉のレベルを指定して出力できます。たとえば、
「中学3年生向けの『平方根』の問題を、やさしい日本語で作ってください。1問ずつゆっくり説明してください。」
といった指示を出せば、たとえば次のような出題と解説が得られます:
問題1:
9の平方根はいくつですか?
ヒント:
平方根とは、「同じ数を2回かけてできる数」のことです。
答え:
9 = 3 × 3 なので、平方根は 3 です。
このように、言葉をかみ砕き、図や例を使って丁寧に説明するような形式で問題を生成できます。
段階的な学習ステップの構築
境界知能の生徒には、1つの問題の中で「何をするのか」が明確でないと混乱しやすい傾向があります。ChatGPTでは、ステップごとに指示を出す形に変えて問題を構成することも可能です。
たとえば:
問題2:2次方程式のやさしい練習(ステップ方式)
次の問題を、ゆっくり解いていきましょう。
(1)x² = 16 のとき、x は何ですか?
ステップ1:16の平方根を考えましょう。
ステップ2:それは 4 × 4 ですか?それとも 5 × 5 ですか?
ステップ3:正しい答えを選びましょう。
答え:
x = ±4
このように「ガイド付き学習」に近い形で問題を構築できるのも、ChatGPTの強みです。
繰り返し・個別対応ができる
ChatGPTは、一度作った問題を繰り返し出したり、少しずつ変化させたりすることが可能です。これにより「理解→定着→応用」のステップを本人のペースに合わせて進めることができます。たとえば、「同じ平方根の問題を10パターン出して」などと依頼することで、反復練習も容易です。
注意点と限界
とはいえ、ChatGPTを使う上での注意点もあります。とくに、境界知能の生徒を支援する際には次の点を意識しましょう。
-
教師や支援者の介在が不可欠
AIは学習のパートナーにはなれますが、感情面のサポートや状況判断はできません。生徒の反応を見て難易度や語彙を調整するのは、人間にしかできない重要な役割です。 -
問題の正確性・適切さのチェックが必要
ChatGPTが生成した問題や解説は、時に不正確だったり、やや難しすぎることもあります。使用する前に、大人(教師・支援者)が一度確認することが推奨されます。 -
視覚的補助は別ツールで補完を
図や表を使った視覚的な説明は、ChatGPT単体では十分にできない場合があります。必要に応じて、ホワイトボードや図形アプリと併用するのがよいでしょう。
結論:やさしい学びをAIとともに
ChatGPTは、境界知能の中学生に対する個別的・やさしい数学学習支援にも十分に活用できます。出題の言葉をやさしくする、ステップを分ける、繰り返しに対応する——こうした工夫を加えることで、「できた!」という成功体験を積み重ねやすくなります。
もちろん、AIは魔法の杖ではありません。しかし、「寄り添い型の学び」を実現する一助として、ChatGPTは強力なサポートツールになるでしょう。本人の理解度や反応を見ながら、柔軟に内容を調整できるのは、人間とAIが協力するからこそできる新しい学びの形です。
境界知能とグレーゾーンの子どもたち – 宮口 幸治, 作画 佐々木 昭后