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ザ・女の事件 愛する苦悩の果てに難病の息子を手にかけた母(ユサブル)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の息子を手にかけた事件

ザ・女の事件 愛する苦悩の果てに難病の息子を手にかけた母(ユサブル)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の息子を手にかけた事件

ザ・女の事件 愛する苦悩の果てに難病の息子を手にかけた母(ユサブル)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の息子を手にかけた事件を漫画化しています。収載したのは『ザ・女の事件【合冊版】Vol.3-3』(ユサブル)。かわしま梨花さん作画による実録漫画です。

ザ・女の事件【合冊版】Vol.3-3 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) Kindle版(ユサブル)は、テーマが『悲しみの身内殺人』です。

かわしま梨花さん、小牧成さん、なせもえみさん、桐野さおりさんらが描いた「身内の事件」を収載しています。

それぞれ単冊で書籍化されている5作品をまとめた『合冊版』です。

『本書収録の作品は、すべて実際にあった事件を元に構成したフィクションです』と断り書きがあります。

表紙には、『母が子を、姉が妹を、夫が妻を、ああ骨肉の愛憎!!』と書かれています。

「骨肉」という表現を使うと、たとえば身内の遺産争いなどを連想しますが、そのような話ではありません。

母が子を、姉が妹を、兄が弟を、夫が妻を……血を分け、ともに暮らし、運命を共有する…身内間の刑事事件です。

例によって、ひとつひとつの作品の単冊版は追加料金、つまり書籍の代金がかかりますが、合冊版はAmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

書籍代金を別払いせず、かつ他の作品も読めますから、合冊版をおすすめします。

今日はその中で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の息子に手をかけた事件をもとに描いた『愛する苦悩の果てに難病の息子を手に掛けた母』のあらすじをご紹介します。をご紹介します。

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生きることを諦めないから国会議員になった例もある

その前に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)について、まず簡単に触れます。

確率は少なくても誰もがなり得る難病

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、体を動かすのに必要な筋肉が徐々にやせていき、力が入らなくなる病気です。

筋肉は全身にありますから、全身が動かなくなっていく、ということです。

歩けなくなる、座ったり立ったりできなくなる、箸を持てなくなる、離せなくなる、自分で自分の体を動かせなくなっていきます。

それでも症状が軽いうちは、PCなど使えますが、やがてそれも使えなくなり、視線で字を追うことでしか表現できなくなります。

ただし、脳の病気ではなくあくまで筋の難病なので、何年もかけて身体の機能が徐々に失われていくにもかかわらず、意識だけはしっかりしている二重に残酷な面を持ちます。

この難病が注目されるようになったのは、現在ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者である、舩後靖彦さんが参議院議員に当選したことや、京都のALS患者の女性に対する、東京と宮城の「医師」の「嘱託殺人」といわれた事件があったことなどが挙げられるでしょう。

死刑判決のやまゆり園事件。ALS患者の舩後議員が施設での「虐待経験」を告白 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
「意思疎通できない障害者は不幸を生み出すだけ、生きていても仕方がない」。そんな極端な考え方を正当化し、19人もの命を奪った被告は、公判を通してもその考えを最後まで変えることはなかった。神奈川県相模市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起き...

舩後靖彦さんは、このインタビューで次のことを述べています。

舩後靖彦参議院議員はもともと、大学を出て、時計や宝石を輸入する専門商社で、6億円を売り上げるトップセールスマンだったそうです。

舩後靖彦さんの存在は、社会の最前線で活躍している人が、突然障碍者になってしまうことがある、ということを改めて気づかせてくれます。

つまり、この記事は、障碍者をバカにしているあなたの明日の思いかもしれないよ、という前提で成り立っています。

舩後靖彦さんは、国会議員という責任ある立場にあり生きがいがあるので、こうした発言ができるといえばそれまでですが、ともすれば延命を悪いことのように見る風潮に対して、ALSだからといって延命を遠慮しなくてもいいんだよ、というメッセージは受け止めてもいいのではないでしょうか。

患者が生き続けることを悩む難病でも……

2020年7月、死を希望する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に致死薬を与えて死亡させたとして、京都府警は23日、嘱託殺人の疑いで宮城県名取市と東京都の医師が逮捕されました。

医師同士は面識がなく、しかも女性からは130万円の謝礼が支払われ、そもそも「嘱託殺人ではない」という見方が出たことでも話題になりました。


ジャーナリストの今一生さんは、上のOGPでこう述べています。

ということです。

この事件についての詳細はこれ以上は書きませんが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の場合、次第に会話も困難となるので、本人が回復が望めず家族の介護なども踏まえ、生きることに葛藤を感じることや、相手に自分の気持ちを伝えにくくなることなどから、「嘱託殺人の疑い」が起きやすい難病です。

ただし、舩後靖彦さん、今一生さん、いずれも、生きることを決して否定はしておらず、私はその点に共感しています。

尊厳ある生き方は「ピンピンコロリ」なのか

『愛する苦悩の果てに難病の息子を手に掛けた母』のあらすじをご紹介します。

ときは2004年8月。

ALSが進んだ息子の昇が、かけているCDを替えようとする母親に文字を追う方法で話しかけています。

「おふくろ ごめん ありがとう」

「そう……?もう、いいの?そういうこと…?」

ここでいう「もう、いい」は、CDのことではありませんでした。

夜になって、昇の父親・山下秀隆(61)が帰宅すると、妻・澄子(60)は、左手首と胸を自ら刺して倒れており、4年間寝たきりだった長男・昇は、人工呼吸器のスイッチを切られ、すでに死亡していました。

「お父さんへ。これは昇とよく話し合って決めたことです。ごめんなさい」

というメモ書きの「遺書」が傍らに……。

しかし、澄子は一命をとりとめ、入院先には刑事が「あなたを殺人容疑で逮捕します」と。

山下秀隆・澄子夫妻は東北の山形生まれで、ともに十代で上京。

結婚後は一男二女に恵まれました。

秀隆は路線バスの運転士。

長男の昇は父を尊敬し、会社は違いますが自分もバスの運転士になりました。

2000年のある日、昇は服のボタンをうまくはめられないことに気が付きます。

「指、どうかしたの?」という澄子の問いには、「いや、ちょっと……モノがつかみづらいみたいな……。痛くはないんだけど」

実は、体の不調はそれだけではありませんでした。

階段の昇降も息が切れ、横になれば胸が苦しくなりました。

眠れなくて、早番なのにお酒に手を出し、父親に「お前、運転士だろう!!仕事前に酒なんか一滴も飲んじゃいかんだろう!!」と止められることも。

当初は「脳梗塞の疑い」で、大学病院に緊急入院しましたが、肺に血栓も認められず、呼吸困難の原因は見つかりませんでした。

しかし、昇の体調は悪くなる一方で、右脚にも力が入らなくなり、2001年1月にはついに足が全く動かなくなり、ALS(筋萎縮性側索硬化症)であると診断されます。

「なんで…おれなんだ…?」

医師は両親に、冷徹に大事なことを確認します。

「発症してから平均して3~5年内には寝たきりになり、話すことや食べること、呼吸することもできなくなりますが、そうなった喉を切開して人工呼吸器を装着しますか?」

ガタガタ震える両親には、何も聞こえなかったかもしれません。

しかし、これは大事なことで、いったん人工呼吸器を装着したら、何があっても亡くなるまで外せません。

はずしたら殺人になります。

繰り返しますが、筋だけが衰え脳は何でもありませんから、介護は生涯24時間、進行が遅いほどより負担を増しながら長くなります。

しかし、両親は、人工呼吸器をつける選択をします。

親としては、ここで諦めろと言われても諦められるはずがありません。

選択は当然だと思います。

介護にあたっては、交際していた女性との別れのやむを得ないことでした。

子どものいる看護師が、病院まで訪ねてきます。

連れ子がいるからか、両親には内緒でした。

「私、看護師の資格を持っています。私きっと、昇さんとお義母様のお役に立てると思います」

この一言に、澄子は顔つきが変わります。

「つまり、同情?昇の介護をする代わりに、生活の面倒を見てほしいってこと?」

「そんな…!!」

「昇はなんて?」

「別れたいって……」

「あなたの幸せを想うなら、昇はそう言うしかないでしょう。今回はご縁がなかったということで、互いに諦めるしか……」

退院までの間、看護師の厳しい指導が両親に行われます。

退院後の介護について、カニューレを入れたり、痰を取ったり。

うーん、私も11年前に同じことをしているので、思い出してしまいました

自宅療養後、両親の壮絶な介護が始まります。

澄子の枕元には、目覚まし時計が6つ。

下の世話は1日5回。

昇のプライドを考えて、おむつを使わないので大変です。

医師・吉野の訪問は週に1度。

昇と同世代で信頼関係を築きやすかったのですが、だからこそ昇は本音も。

死にたい 何かいい方法はありませんか。尊厳ある死をください

吉野医師は、「酒はやっぱり焼酎だなあ。いつか一緒に飲もうよ」と、口では雑談しながら、まったく関係ないメモ書きをして昇に見せます。

治療の自己決定権を根拠に主治医の僕に呼吸器の取り外しを求める訴訟を起こしてみては?

ここまで言ってくれる医師は、そういないでしょう。

「裁判なんてしたら、先生に迷惑がかかるだろう?」

「でも…、その間、君には、生きる目的ができるだろう?」

そうなんです。吉野医師は、死ぬための提案ではなく、尊厳を持って生きるための提案をしていたのです。

ここまでして「尊厳を持って生きる」ことを求めるって、泣けてきますね。

それに比べ、巷間流行している「ピンピンコロリ」が、いかに生きることに不真面目なうすっぺらい妄想か。

しかし、さすがに医師に迷惑がかかると思ったのか、裁判は行われず、ただし昇は、吉野医師や妹たちの助けを借りて、発病から3年間の、家族との小旅行や介護施設へのショートステイの体験や、病期の進行を記していたそうです。

しかし、病気は進行し、冒頭に書いたような結果に。

ただし、裁判では「嘱託殺人」が認められ、刑(懲役5年)の執行を猶予(3年)されました。

要するに、殺人罪としての刑の執行はありませんでした。

「こんなに大変だったから、許してもいいんじゃないか」と思われますか。

本作には、他のALS患者当事者たちが、その「温情判決」に対して、澄子に同情しつつも、「弱者切り捨て、間引きを認める考え」との反論もあったそうです。

当事者の複雑な心情が伺えますね。

ALS患者当事者、家族でなくても、ご一読をおすすめします。

以上、ザ・女の事件 愛する苦悩の果てに難病の息子を手にかけた母(ユサブル)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の息子を手にかけた事件を漫画化、でした。


ザ・女の事件【合冊版】Vol.3-2 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) – 桐野 さおり, 小牧 成, 神崎 順子, かわしま 梨花


ザ・女の事件【合冊版】Vol.3-3【電子書籍】[ かわしま梨花 ] – 楽天Kobo電子書籍ストア

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