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退行睡眠療法という、幼児期の感覚、感情、記憶へ遡らせる(年齢退行)催眠誘導の使い方をストーリー化したのは『飢餓の家(1)』

退行睡眠療法という、幼児期の感覚、感情、記憶へ遡らせる(年齢退行)催眠誘導の使い方をストーリー化したのは『飢餓の家(1)』

退行睡眠療法という、幼児期の感覚、感情、記憶へ遡らせる(年齢退行)催眠誘導の使い方をストーリー化したのは『飢餓の家(1)』です。なかのゆみさんが、ぶんか社から上梓しています。その他全5編の短編漫画を収録しています。

退行催眠療法(ヒプノセラピー)を、ご存じですか。

現在抱えている悩みについて、その原因を探し出すべく、苦しい思い込み、思い出、ネガティブな自己イメージからの脱出、当時の出来事に対する新しい理解、自他への許し等を状況に応じて行うのです。

まあ要するに、本人も意識していないような、潜在的な昔の記憶を呼び覚まして、それを沈めたり消したりするなどの解決を試みるわけです。

昔の年齢に戻る、という意味で「退行催眠」なわけです。

で、確度はわかりませんが、一部には、それが幼少時の記憶にとどまらず、前世の記憶まで残っているという説もあり、前世療法、前世催眠療法、なんていう向きもあります。

後半にも書きますが、こちらはどうなんでしょうね。

そもそも前世自体、科学的に証明されていないわけですから。

それはともかくとして、本書は、退行睡眠をモチーフとした『私を殺さないで』など5作を収載した、『飢餓の家』(1)をご紹介します。

著者は、なかのゆみさんです。

目次です。

本書は2023年2月28日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

ということで、「私を殺さないで」をご紹介します。

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親は許すべきものなのか

お腹の中の胎児のシーンから始まります。

「私、もうすぐ生まれるんだ。きっと楽しい世界が待っている。」

ところが、まだ28週でした。

帝王切開することになりました。

「経膣分娩よりリスクは最小限で止められますが、未熟児はその後、障碍が残る可能性があります。覚悟してください」と主治医

「はい」と母親。

帝王切開で取り出した赤ん坊は850gぐらい。

「この子を助けたって、どうせ死ぬだろう。適当に処置しておけ」と主治医。

しかし、未熟児は、「いやだ。私は生きるんだ」と心のなかで叫んでいます。

父親は、「ハズレの子だな。大凶を引いてしまった。どうせ長生きしない。障碍が残る可能性があるのなら、殺しちゃってください」と、200万円包んで主治医に安楽死を依頼します。

そういったやりとりは、全部赤ちゃんに聞こえています。

「ひどすぎるよ。お腹の中にいた頃は、2人で明るく笑っていたじゃないか」

主治医は、カネに目がくらんで、酸素吸入の管を抜こうとしますが、赤ちゃんは自らそれを拔き、自力呼吸を始めます。

「この子すごいよ。呼吸している」と感動する研修医。

父親は、男の子を欲しがっていたので、赤ちゃんが女の子だったこともがっかりしたようです。

母親は、密かに「かすみ」という名前を考えていました。

そして10年後。

かすみは成長して、成績もよく、ピアノも上手。

でも、心の隅にモヤモヤしている嫌な部分がある。

だから、人より頑張って勉強する。

いい子でいようとする。

母に褒められるよう努力する。

母は父の言いなり。

父は銀行マンで偉そうにしていて、あまり好きじゃない。

ストレスで、過食になったり拒食症になったりしたけど、父が躾のことで母に辛く当たるので、がまんしていい子になっている。

そして、かすみは27歳。

財務省のキャリア組に入った。

父より偉くなりたかったからだそうです。

そんなとき、父親が縁談を持ってきます。

「相手は婿に入ってもいいと言っている。スポーツマンだし、丈夫な子どもができると思うよ」

「丈夫な子ども」という言葉を聞いて、かすみは気分が悪くなりました。

いてもたってもいられないような気持ちになって、かすみ自身もパニック障害を疑います。

仕事を休み、生まれたときの病院に行きます。

心療内科の医師は、NICUのときの研修医でした。

もちろん、その時点で彼女は気が付きませんが、研修医の方はきがつきました。

「先生。私とても自分に自身が持てないんです。どんなに勉強しても、どんなに働いても、貯金しても、まるで心の中に黒い澱でもすみついているようなんです」

「退行催眠でその原因を探ってみましょうか」

医師は、退行催眠をかけ、かすみは、だんだん過去の記憶を話し出します。

「かすみちゃんは、今5歳です。なにをシていますか?」

「ピアノの練習とお受験の勉強。お父さん、『ゃっぱりこの子はバカなんだ』と言ってる。お母さんも私を叩いて勉強させるの。痛いよ、お母さん」

そして、問題の0歳時に……

「お父さんが、私を殺してくれって言ってる。人工呼吸器を先生が抜いても、私生きてやる。私、お父さんとお母さんと会いたかったのに、殺さないでよ」

「そうだったのか。丘先生がそんなことを……。よく頑張って、自力呼吸をして大きくなってくれたね。赤ちゃんなのに、大変なショックを受けていたんだ」

退行催眠で、これだけはっきりと記憶が蘇るかどうかはともかくとして、赤ちゃんがなんで言葉がわかるんだ、というツッコミは少し違うような気がします。

具体的な文法を勉強しなくても、言葉を発する気持ちは理解できるのでしょう。

たとえば、胎教ってそういうことですよね。

かすみは退行催眠で、当時の研修医が、今の医師であることにも気が付きます。

「先生、父は自分の子供なのに『大凶』なんて許せない。親の資格ができてないわ」

「そうだね。泣いていいよ、思いっきり」

かすみは家に帰ると、身の回りのものをまとめ、家を出ました。

以来5年、父親が電話しても出ないかすみ。

というか、一応電話番号は教えたんですね。

メッセージには、「母親が胃がんで、あと半年の命」と吹き込まれています。

病院に面会に行くと、ご都合主義の父親は、「戻ってきてくれ。昔のことなんて気にもしていなかった。医者には口止め料50万円わたしたのに」と言います。

この父親も大概ですね。

「めんどうな子はいらないという、そんな親は私もいらないわ。さよなら」

しかし、母親はその後、2年たっても生き、父親が長々と謝罪の手紙を送ってきたことで、かすみは両親を許してしまいます。

憎しみからは何も生まれない、というのですが、うーん、最後だけちょっと白けた(笑)

だって、水に流すだけでも、何も生まれないと思いますよ。

同じことを繰り返すだけじゃないのかな。

何らかの「けじめ」がないと、なにかあるたびに、昔を思い出すということだってないとは限りません。

手紙一本とは、ずいぶん安い「憎しみ」だったんですね。

ま、いいか(笑)

退行催眠は前世もわかる?

この物語で、キーワードとして挙げたいのが、退行催眠です。

過去世・前世療法などともいわれます。

幼児期の感覚、感情、記憶へ遡らせる(年齢退行)催眠誘導をいいます。

漫画のようにスムーズにいくことは、なかなかないと思いますが、それを目指しているということは間違いないでしょう。

一般には、理性や雑念、固定観念が強まっている人ほど、退行催眠に期待をかけても効果が現れないといわれています。

つまり、常識人ほどかかりにくい、というわけです。

かかってなるものか、というバリアがはたらくんでしょうかね。

そもそも催眠術って、どうなんでしょう。本当にかかるのかな。

私が小学生の頃、催眠術に凝ってる先生がいて、嘘発見器のようにそれを使われたな(笑)

何度も何度もかけられたけど、一応かかったふりだけしておきました。

でも、催眠術の施術者に言わせると、たとえかかったふりだろうが、施術者の質問に答えたり、言う通りに行動したりシたら、もうそれはかかっているのと同じことだそうです。

まあ、そうかもしれませんね。

ただ、それをもって、「小さいときの記憶」だの「前世」だのまで決められたらたまんないですよね。

それは、真偽が問われることですからね。

たとえば、『ヨガ・シャラ細江たかゆき』チャンネルの細江たかゆきさんは、「退行催眠によるネパール人の前世を呼び覚ました」とする動画を紹介しています。

前世や生まれ変わりはあると思いますか。YouTube動画における、住職や宗教家、退行催眠施術者などの見解をまとめてみました。
前世や生まれ変わりはあると思いますか。YouTube動画における、住職や宗教家、退行睡眠施術者などの見解をまとめてみました。同じ「仏教」でもなぜか見解が真っ向から異なる場合もありますが、みなさんは輪廻転生についていかがお考えになりますか。

これについては、否定的な批評もありますが、どうなんでしょうね。

文句のつけようもない成功例ってあるんでしょうか。

もっとも、「文句のつけようもない」証明自体がいずれにしてもむずかしいかもしれませんけどね。

みなさんは、いかがお考えですか。

なかのゆみさんは、これまで難病シリーズを何冊かご紹介しました。

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集
『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。人間はいつ誰がそうなるかわからないし、そうなってもおかしくない。そんな厳しい人生の偶然を考えさせてくれます。

こちらもあわせてお読みいただけると幸甚です。

以上、退行睡眠療法という、幼児期の感覚、感情、記憶へ遡らせる(年齢退行)催眠誘導の使い方をストーリー化したのは『飢餓の家(1)』、です。


飢餓の家 (1) (ストーリーな女たち) – なかのゆみ

私を殺さないで(単話版)<飢餓の家(1)>【電子書籍】[ なかのゆみ ] – 楽天Kobo電子書籍ストア

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