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60歳からの脳の使い方(茂木健一郎著、扶桑社)は、脳に「余生」はない、60歳からを最高の黄金期に変える「驚きの新常識」を唱える

60歳からの脳の使い方(茂木健一郎著、扶桑社)は、脳に「余生」はない、60歳からを最高の黄金期に変える「驚きの新常識」を唱える

「最近、人の名前が思い出せなくて……」「還暦を過ぎてから、どうも新しいことに踏み出す意欲が湧かない」。こうした悩みは、多くの方が抱く切実な声です。私たちは無意識のうちに「60歳を過ぎれば脳は衰える一方だ」という、科学的根拠のない呪縛に縛られてはいないでしょうか。

しかし、脳科学の最前線が提示するのは、これまでの常識を覆す希望に満ちた景色です。脳は、私たちが思う以上に柔軟で強靭な「可塑性」を秘めています。

脳にとって60代は衰退の始まりではなく、豊かな経験を土台にしてさらなる進化を遂げる「第二の春」、あるいは人生最高の黄金期への入り口なのです。

60歳からの脳の使い方(茂木健一郎著、扶桑社)の知見をもとに、あなたの脳の可能性を鮮やかに解き放つ「驚きの新常識」を紐解いていきましょう。

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脳トレよりも「面倒くさいこと」が脳を喜ばせる

「脳を若く保つために計算ドリルや数独を欠かさない」という方は多いはず。しかし、意外な事実があります。

カナダのウェスタン大学やイギリスのアバディーン王立病院などの研究(SOURCE_IMAGE_45)によれば、特定の「脳トレ」は、その課題自体の習熟度を上げるだけで、脳全体の認知機能や記憶力の改善には直結しないことが示唆されています。

なぜなら、脳の司令塔である「前頭葉」は、ルーチンワークが大嫌いだからです。

前頭葉を「会社の社長(CEO)」、その他の領域を「一般事務職」に例えてみましょう(SOURCE_IMAGE_46)。

同じパズルを解き続けるのは、社長に延々と事務作業を強いているようなもの。これでは、組織のリーダーシップは磨かれません。

社長である前頭葉を本気で動かし、活性化させるのは「未知の体験」というトラブルや挑戦です。

「新しいことに挑戦すると、脳が喜ぶ!」(SOURCE_IMAGE_46より)

未知の情報に触れると、脳内では「ドーパミン」という報酬系の物質が分泌されます。

これがやる気を引き出し、神経細胞の新たな結びつきを作る「可塑性(かそせい)」を促進します。

例えば、現代の魔法とも言える「AI(ChatGPTなど)」に触れてみるのは、最高の脳へのプレゼントです(SOURCE_IMAGE_48)。

慣れ親しんだ習慣を脱ぎ捨て、少しの「面倒くささ」をあえて楽しむ。その好奇心こそが、脳の「社長室」に再び火を灯すのです。

「忘れること」は脳の高度な整理術である

物忘れが増えると「衰え」だと嘆きがちですが、視点を変えてみましょう。脳科学の観点から見れば、忘れることは情報の取捨選択という極めて高度な「整理術」です(SOURCE_IMAGE_21, 22)。

かつて、江戸時代の「寺子屋」や中国の「科挙」の時代(SOURCE_IMAGE_23)、知識の丸暗記こそが知性の象徴でした。しかし、指先一つで世界中の知識にアクセスできるスマホ時代の今、情報を詰め込む価値はかつてないほど低下しています。

脳は今、不要な情報を捨てることで、本当に価値のあるアイデアや創造的な思考に集中するための「スペース」を作ろうとしています。

余計な知識を「忘れる技術」があるからこそ、私たちは複雑な現代社会で本質を見抜く「洞察力」を磨くことができるのです。物忘れは脳が賢く進化しようとしている証であり、もはやネガティブに捉える必要はありません。

脳には最強のバックアップ「代償機能」が備わっている

「加齢で脳が萎縮したら、もう元には戻らない」という絶望。これも大きな誤解です。

私たちの脳には、たとえ一部の領域がダメージを受けても、他の領域がその役割を肩代わりしてネットワークを再構築する「代償機能(代償作用)」という驚異のバックアップシステムが備わっています(SOURCE_IMAGE_2, 17, 18)。

この力は凄まじく、脳梗塞などで麻痺が生じた患者さんが、リハビリを通じて失われた機能を回復させるのも、この代償機能の働きによるものです(SOURCE_IMAGE_18)。

脳のポテンシャルを象徴する例として、数理物理学者のロジャー・ペンローズ氏は、89歳にしてブラックホールの研究でノーベル賞を受賞しました(SOURCE_IMAGE_33)。

「脳に余生はない。いくつになっても成長し続ける」(SOURCE_IMAGE_18より)

脳は私たちが諦めない限り、何度でも新しい回路を繋ぎ直そうとします。

自分自身の限界を決めつけてしまうことこそが、脳の成長を止める唯一のブレーキなのです。

定年退職は脳にとっての「フリーズ・スイッチ」になり得る

脳の老化の真犯人は、誕生日を重ねることではありません。最大のリスクは「社会的役割の喪失」による刺激の激減です(SOURCE_IMAGE_14, 15)。

定年退職を機に、「〇〇株式会社 元部長」といった過去の肩書きに固執し続けることは、脳を組織という殻に閉じ込めたままフリーズさせてしまいます。

大切なのは、自分を「組織人」から一人の「個人」へと解放することです(SOURCE_IMAGE_42)。

欧米の若者が取る「ギャップイヤー(空白期間)」を、今こそシニア世代が取り入れるべきではないでしょうか。

特定の組織に属さないこの期間に、かつて夢見た旅に出たり、ボランティアに身を投じたりする。歴史を振り返れば、ニュートンはペストによる休校期間(空白)に万有引力の発見に至り、ダーウィンはビーグル号での5年間の航海という「目的のない時間」があったからこそ進化論を打ち立てました(SOURCE_IMAGE_41)。

退職後こそが、ビートルズやローリング・ストーンズを聴いて胸を熱くしたあの頃のような、純粋な「個」の感性を取り戻す絶好のチャンスなのです。

日本特有の「老害」という言葉が脳を萎縮させる

「年甲斐もない」「もう若くないから」……日本社会に蔓延するこうしたエイジズム(年齢偏見)や「老害」という言葉は、実は脳を物理的に萎縮させる「呪文」になり得ます(SOURCE_IMAGE_27, 29, 30)。

周囲から否定的なレッテルを貼られ、自らも「努力しても無駄だ」と学習してしまうと、脳は「学習性無力感」に陥り、本来のポテンシャルを封印してしまいます。

しかし、世界に目を向ければ、アメリカの大統領が70代後半や80代で重責を担うのは珍しくありません。彼らにとって年齢は単なる記号であり、能力を判断する基準ではないのです(SOURCE_IMAGE_32)。

欧米の「Age is just a number(年齢はただの数字)」という考え方は、脳科学的にも極めて合理的です。年齢を気にせず新しいファッションを楽しみ、最新技術に触れ、自由に振る舞う。そんな「エイジレス」な生き方こそが、脳を瑞々しく保つ最良の処方箋です。

今日が、あなたの脳の「一番若い日」

脳の状態は、あなたがこれまで積み重ねてきた習慣と考え方の「通知表」です(SOURCE_IMAGE_3)。

しかし、この通知表は固定されたものではありません。今日、この瞬間から書き換えることができるのです。

脳を変えるためのアクションは、驚くほど身近なところにあります。

こうした小さなフィードバックが、脳の再解釈機能をポジティブに働かせ、活性化の呼び水となります。

脳科学的には、不平不満を言う人よりも、何事もポジティブに捉える人の方が脳を効率よく使えることがわかっています。

最後に、あなたに問いかけます。 「もし、年齢という数字がこの世から消えてなくなったとしたら、あなたがいま一番やってみたいことは何ですか?」

その答えこそが、あなたの脳が求めている「新しい冒険」の地図です。今日という脳にとって一番若い日から、最高の黄金期を始めましょう。


60歳からの脳の使い方 (扶桑社新書 540) – 茂木 健一郎

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