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コーヒーの習慣的な飲用は特定の腸内細菌を増加させ、炎症を抑える可能性が示唆。主観的なストレスの軽減や注意力の向上にも寄与

コーヒーの習慣的な飲用は特定の腸内細菌を増加させ、炎症を抑える可能性が示唆。主観的なストレスの軽減や注意力の向上にも寄与

コーヒーの摂取が、メンタルヘルスや身体機能に与える影響を調査した最新の研究結果が発表されました。習慣的な飲用は特定の腸内細菌を増加させ、炎症を抑える可能性が示唆されており、主観的なストレスの軽減や注意力の向上にも寄与しています。

これまでにも、コーヒーの健康効果については、いろいろ報告がありました。

今回は、飲食物にありがちな「相関関係」ではなく、「因果関係」にまで踏み込んだ研究報告です。

アイルランドの、コーク大学(APC Microbiome Ireland)の研究チームが解き明かしたのは、コーヒーと「腸脳軸(gut-brain axis)」の密接な関係です。

腸脳軸とは、脳と腸が自律神経やホルモン、免疫系を介して双方向に密接に影響し合う仕組みのことです。

学術誌 Nature Communications(2026年) に掲載されました。

検証内容


コーヒー習慣が、

腸内細菌(マイクロバイオーム)
気分・ストレス・認知

にどう関係するかを、腸脳軸の枠組みで検証したものです。

単なるアンケートではなく、次のような設計です。

健常成人約60人に、「コーヒー飲用者 vs 非飲用者」を比較しました。

さらに、2週間「断コーヒー」、その後「再摂取(カフェインあり/なし)」を同時に測定。

腸内細菌(メタゲノム解析)
代謝物
気分・ストレス・認知機能

などを調べました。

飲んだコーヒーの量は「何杯」と定められていませんが、欧州食品安全機関(EFSA)の基準が紹介されており、「1日3~5杯の摂取は、多くの人にとって安全かつ適量とされる」と記載されていることから、研究における日常的なコーヒーの摂取量も、この1日3~5杯という水準がひとつの目安として想定されていると考えられます。

主な結果

① 腸内細菌が変化
コーヒー摂取は腸内細菌の構成と多様性に影響
特に
酪酸(butyrate)産生菌などの有益菌が増加

② 腸→脳のシグナルに関与
腸内細菌が作る物質(例:短鎖脂肪酸、GABAなど)が増えた。
→ 脳機能に影響する可能性

③ 気分・ストレスの変化と連動
コーヒー摂取群では、気分改善、ストレス低下が観察され、それが腸内環境の変化と関連。

④ カフェイン以外の効果も大きい
デカフェ(ノンカフェイン)でも同様の影響。つまり、コーヒーが「カフェイン飲料」だからはなく、ポリフェノールなどの複合作用と考えられる

この結果、何を考察できるのでしょうか。

「ストレスそのもの」を減らすのではなく「感じ方」を変える

これまで、コーヒーを飲むと、ストレス軽減ができるかのようにいわれてきましたが、コーヒーを飲んでも、ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」の生理的なレベルには大きな変化は見られないことが、今回の研究でわかりました。

コーヒーは、体内の物理的なストレス反応を遮断するわけではありません。

今回わかったコーヒーの効能は、ストレスに対する「主観的な認知(感じ方)」です。

生理的な負荷は同じでも、それを「つらい」と感じるか「乗り越えられる」と感じるか。

コーヒーはその心理的なバッファーを提供し、メンタルヘルスを健やかに保つ手助けをしてくれるのです。

この「認知の転換」こそが、日常の質を大きく左右する鍵となります。

「うつ病」の対策も期待できると考察されています。

体内の「炎症」を抑える、最も身近なサプリメント

さらに研究では、コーヒーが一種の「天然の抗炎症デバイス」として機能している可能性も浮かび上がりました。

コーヒーを常飲している人は、体内の炎症マーカーが低く、抗炎症に関連する指標が高い傾向にありました。

興味深いのは、コーヒーの摂取を2週間中断すると、炎症関連の指標が再び上昇したという点です。

コーヒーの習慣を維持することは、体内の微細な炎症を抑え続けることにつながっています。

慢性炎症が、がんや動脈硬化につながることは、現代の医学で明らかになっていますが、日々のコーヒーに抗がん作用があるというのは、この作用があるからでしょう。

コーヒーとBDNFの関係

最近、ウォーキングや筋トレの成果としてご紹介しているBDNF(脳由来神経栄養因子=脳を活性化する物質)とコーヒーの関係についても、「コーヒー → 腸内細菌 → 代謝物・炎症・神経内分泌 → BDNF保護 → 認知機能維持」という“間接経路”で影響を与えることが示唆されています。

「え、BDNFは、筋トレや速歩などの運動で増えるんじゃないの?」

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もちろん、それはそのとおりです。

それはそれとして、コーヒーを飲むことでも、「腸がBDNFを“間接的に”動かす」ということが示唆されています。

たとえば、コーヒーによって腸で増える「酪酸産生菌」は、脳内でBDNF発現を促進します。

また、腸内環境改善によって、慢性炎症、神経炎症を解消し、それがBDNF低下を防ぐことにもつながります。

そして、腸内細菌が迷走神経を刺激し、海馬のBDNFを増やす期待ができます。

ただ、腸内細菌は、人によって環境が全く違うため、コーヒーをどれぐらい飲めば腸内環境がどう変わってBDNF産生にどのくらい影響するか、という定量的変化までは断定できません

でも、前述のように、デカフェ(ノンカフェインコーヒー)でも同じ効果があるということなら、「コーヒーはカフェインが強いから苦手」という方でも、ちょっと試してみてもいいのではないかと思いませんか。


コーヒーの医学 (からだの科学primary選書1) – 野田 光彦

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