料理研究家リュウジ氏のエピソード「あ、片親パンね」といわれたとの告白ポストで、再び注目を集めた「片親家庭」への偏見問題。この出来事を機に、私たちは改めて「片親」という言葉に込められた歴史的な差別意識と、現代社会における変遷についてまとめてみました。
戦前から続く「欠損家族」という見方
2025年10月5日、料理研究家のリュウジ氏が、自身が子供の頃に好んで食べたパンをめぐり、「片親パン」という言葉を投げかけられた経験談をXにポストしたところ、瞬く間に拡散されて370万回以上表示され、3万5000件を超える「いいね」がついたという話です。
飲みの席で子供の頃どんなの食べてた?みたいな話になって
砂糖かかったでけえパンとチョコ入った棒のパン旨いよねー!!って言ったら一言
「あ、片親パンね」
まあ確かに俺片親なんだけど、お前女手一つで育てた俺の母親の気持ち考えた事あんのかってなった pic.twitter.com/s8tEccUEsj
— リュウジ@料理のおじさんバズレシピ (@ore825) October 5, 2025
日本において片親家庭(ひとり親家庭)への偏見は、実は長い歴史を持っているようです。
AIのGensparkから引用します。
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戦前から戦中にかけて、特に未婚の母や離婚による母子家庭に対する社会的差別は非常に厳しく、排除的な態度が一般的でした 歴史的にみる母子家庭の政策の変遷とその課題。この時代、片親家庭の子どもたちは教育機会や生活支援が乏しく、社会的孤立を余儀なくされていました。
戦後復興期に入ると、1952年の「母子及び寡婦福祉法」制定や1964年の「母子寡婦福祉資金貸付金制度」など、制度的な支援が整備され始めました。しかし、法的な支援が充実しても、社会に根深い偏見や差別意識は残り続け、母子家庭であるだけで就職や進学に制限がかかることも珍しくありませんでした。
特に注目すべきは、戦後の高度経済成長期(1950年代~1970年代)に確立された「標準家族」モデルです。父親がサラリーマンとして働き、母親が専業主婦として家事育児を担う核家族の形が、社会の「理想」として定着しました。この「標準家族」観の普及により、それから逸脱する家族形態への偏見がより一層強化されることになったのです。
研究者の間では、この時期に「母子家族=欠損家族、片親家族」という位置づけが明確化され、「家族の問題化」という短絡的枠組みに基づく社会的偏見が強まったと分析されています。 つまり、「片親」という言葉自体が、「完全な家族」から何かが「欠けた」状態を示す差別的なニュアンスを内包していたのです。
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要するに、障害者差別と同じで、「普通」を勝手に定義して、そうではない人を差別したり、偏見で評価したりするということです。
親がいるかいないかなんて、その人のせいではないでしょう。
神様でもないのに、人間の価値に勝手に「普通」とかきめんなよ、と思いますけどね。
「片親パン」については、こう書かれています。
「当初はひとり親家庭の当事者による自虐的な投稿から生まれたものが、TikTokやまとめサイトを通じて拡散し、やがて他者を嘲笑する道具として使われるようになったことです。2023年には一部インフルエンサーの使用をきっかけに炎上し、「親ガチャ」に続く格差社会を象徴する差別語として問題視されました。」
「親ガチャ」については、「ほしのもと」によって子の人生が左右されるという意味ですから、それ自体は差別ではありません。
同じAIでもDeepSeekは、「(親ガチャは)必ずしも差別的な意図を含むものではありません。」と、私と同じ意見です。
もちろん、他者の出自を貶める目的で使われるなら、それは許されないことです。
一方、「片親パン」については、言葉そのものに特定の家庭環境に対する否定的な価値判断が組み込まれている点が問題です。
つまり、使い方の問題ではなく、言葉自体が「ヘイト」なのです。
「片親パン」はヘイト
片親パンは片親家庭が食べてると思われてるけど、普通に両親いてもこれ食ってたし、社会人になってからも朝食は1日これ2本の生活だった。どんなに真面目に一生懸命働いても、バブルは弾けるし、会社は倒産するんやで。自己責任でどうこうできるのは節約くらいしかない。 pic.twitter.com/YLJaGilm9I
— お侍さん (@ZanEngineer) October 5, 2025
自分の40年ぐらい前の体験なんですが、マスコミに共同通信というメディアがあって、新卒採用では全国からたくさんの学生が志願します。
私のときは、6次ぐらいまで選考があり、1次試験は、まず2人一組で面接。
どちらか1人を残して、志願者を半分にしていました。
私と一緒だったのは、神奈川県の国立大学の人で、好青年で頭も良さそうでジャーナリスト希望。
一方私は、長髪で肌は焼いていて、見るからに軟派なあんちゃん。
なんとなく受験したので志望理由もきちんと言えず、普通採る方だったら、どう見ても彼のほうだよなと思っていたのですが、落ちたのは彼の方でした。
私が彼に勝っていたのは、健在だった親の数。
といっても、私は片親で、彼は両親とも亡くなっていました。したがって1-0で私の「勝ち」……(涙)
彼とは試験が終わった後、お茶を飲んで話をしたのですが、「自分には親がいないから」と、諦めている感じでしたね。それまでも、いろいろ会社を回って、反応が芳しくなかったそうです。結局、私も3次試験で落ちましたけどね。これは実力か(笑)
就職や縁談では、女性ほどではありませんが、不利になることはありました。
彼の名前は失念しましたが、元気でやってるかなあと、今も時々思い出すことがあります。
……ということで、「片親パン」は、TikTokやまとめサイトを通じて拡散されたネットスラングとのこと。
そして、「片親パン」は、ヘイトだということです。
離婚毒 :片親疎外という児童虐待 – R.A.ウォーシャック, 青木 聡