まるっちょ(原作/かわさき健、作画/人見恵史、双葉社)は、妻子を不慮の事故で亡くした男が、孤児となった娘を育てる話です

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まるっちょ(原作/かわさき健、作画/人見恵史、双葉社)は、妻子を不慮の事故で亡くした男が、孤児となった娘を育てる話です

まるっちょ(原作/かわさき健、作画/人見恵史、双葉社)は、妻子を不慮の事故で亡くした男が、孤児となった娘を育てる話です。なかなか「お父さん」と呼ばない「娘」が、いつかそう呼んで貰える日を信じて、まるっちょはがんばる、という話です。

『まるっちょ』は、原作がかわさき健さん、作画が人見恵史さんで、双葉社から上梓されている全9巻のコミックです。

葬儀屋社員・丸団児(まるだんじ)は、自分が担当した葬儀で、親に死なれて親類の引き取り手もいない娘・ゆうきを、見るに見かねて自分の家で預かることに。

10年前に交通事故で妻と子を亡くしている団児は、ゆうきに亡き息子の面影を重ねたのでした。

もっとも、ゆうきは息子ではなく、娘でしたが。

『神様がオレにもう一度授けてくれた宝物』

丸団児はそう考え、ずっとゆうきの面倒をみようと考えます。

しかし、ゆうきは、「親子」の生活が軌道に乗っても、呼び方は「おじさん」のまま。

団児が再婚した女性のことですら、すぐに「おっかあ」と呼んだのに、どうしても「お父さん」とは呼べません。

結局、最終回まで「お父さん」とは呼べないのですが、「お父さん!」いつかそう呼んで貰える日を信じて、まるっちょはがんばる、という話です。

『まるっちょ』は2023年2月6日現在、マンガ図書館Zで読み放題リストに含まれています。


ご存知のように、マンガ図書館Zは、閲覧にともない広告が表示され、権利者(作者)にはその報酬が支払われているそうです。

報酬が少ないと、権利者はがっかりして作品を引き上げてしまうかもしれません。

興味のある方は、ぜひ閲覧してみてください。

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「親子」と温かく見守る人たちのヒューマンな話

「あの家、母子家庭だったでしょう」

「ゆうきちゃんはどうなるのかねえ」

ゆうきの母親が亡くなり、その葬儀のシーンから始まります。

え、母ひとり子一人で、母が亡くなったら、誰が葬儀会社に連絡したの。誰が喪主なの。

そういうツッコミはとりあえず保留で。

担当した葬儀会社の社員は丸団児。

葬儀に出席した親類が、ゆうきを押し付けあっています。

うーん、葬儀に出てくるだけでも、極悪人ではないでしょ。親戚たち。

あ、欠席裁判で、ゆうきを自分に押し付けられたくないから、葬儀に出てきたのかな。

でも、たしかに子供一人育てるのは、慎重になるでしょうしね。

まあ、私だったら引き取ると思いますが。

それもまたご縁ですから。

丸団児は、その親類の話し合いに不快感をあらわにします。

棺桶を運ぶとき、親類には触らせず、ゆうきと2人だけで持とうとします。

えー、たんなる葬儀業者が、腹がたったからと言って、差し出がましいですよ。

それに、とにかくちゃんと葬儀には出席してくれた親戚なんだし。

丸団児は、「ぼうず。こんな連中に、お前の母ちゃんを持たせるつもりか。男なら、歯を食いしばって持ち上げるんだ」

いや、棺桶って重いですから、大人でも2人では無理だと思います。

でも、そこはマンガなので、結局運べました。

骨を持ったゆうきは、丸団児の自宅アパートに連れてこられます。

そして、風呂に入るからといって、服を脱がせ、ゆうきが女の子であることに気づきます。

ゆうきに背中を流させる丸団児。

「お父さんてどんなものか知らないけど、わたしのお父さんも、こんなに大きくて分厚い背中だったのかな」

ゆうきも、初対面のオヤジと、よく一緒に風呂に入って背中まで流せますね。

今だったら、ちとまずいでしょう。

女の子と気づいた時点で、混浴はやめないと(笑)

「おじさん、子供いるの?」

丸団児は、妻と長男が、不慮の自動車事故で急逝したことを思い出します。

「本当に、お前さえ良ければ、ずーっとここにいてくれていいんだぞ。その…おじさんのことを、なんだ…その……ほ、ほ、ほ…本当の…なんだな、ほら…お、お、お、お父さんなんて、思ってよ。お父さん……なんて呼んでみるか?」

「お、お…」

「う…うん!」

「……おじさん。今日はありがと」

「ハ…ハハ。そ、そうだよな。そんなこと、たとえ遊びでも、恥ずかしくて言えないよな!」

以来、ゆうきは「ずーっとここにい」ることになりますが、結局、最終回まで「お父さん」とは呼ばないまま物語は終わっています。

まあ、基本のストーリーが、こういうヒューマンなものですから、周りの人たちも優しい人ばかり。

彼ら「親子」を温かく見守る、という話です。

個人的には、第9巻の第81話「大志を抱く者へ」の巻が、印象に残ったかな。

葬儀会社の部長が、息子がカメラマンになりたいと言っていると心配しています。

仕事として安定していないからだとか。

ま、人は必ず死ぬから、葬儀会社ほど確実な商売はないですけどね。

丸団児は、知り合いのカメラマンを紹介して話をさせます。

要するに、カメラマンは大変だ、という話を聞けば、息子も諦めると思ったわけです。

ところが、丸団児の知り合いのカメラマンは、息子にとって憧れのカメラマンでした。

カメラマンいわく、「テクニックなんてもんは、数撮ってりゃ勝手に身につく。ましてや感性なんてもんは、他人から教わるもんじゃねえ。プロとなるためにまず必要なのは…、自分は何が何でもこの世界でゃってくんだ!そういった強エ気持ちなんじゃないか。それがスタートラインだよ」

そう言われて、息子は何が何でもカメラマンになるって決心。

部長の思いとは正反対の方向に進んでしまった、という話です。

まあ、特別なことを言っているわけではないのですが、これは自分の体験から至言だなと思いました。

実は、私は還暦過ぎてから、大学院の修士課程に進むことにしたのですが、学業からもずっと離れているし、もともと学部はその専攻ではなかったし、何より還暦で覚えも悪くなってるしで、試験に合格するのも苦戦は免れなかったわけです。大学側だって、どちらかといえば若い将来性のある学生に指導の時間は使いたいじゃないですか。

が、もう何が何でも受かるんだ、人生の悲願なんだと顔色が悪くなるほど自分自身に言い聞かせ、がんばったら受かりました。

合格自体も嬉しかったですが、それによって、今までの人生で自分の志望通りに物事が成就しなかったのは、その「何が何でも」という思いが十分でなかったからではないか、という気づきもありました。

まあ、いつもいつも「何が何でも」と血圧上げて気張ってたら、寿命が縮まっちゃいますけどね。

ここ一番、というときには、全身全霊で「何が何でも」と頑張ることも必要ではないかと思いましたよ。

ゆうきは、なぜ「お父さん」と呼ばなかったのか

ストーリーとしては、やはりテレビドラマの『パパと呼ばないで』(1972年10月4日~1973年9月19日、ユニオン映画/日本テレビ)を思い出しますね。

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安武右京(石立鉄男)は、両親はすでになく、たった1人の姉(長内美那子)も亡くなります。

その姉の葬儀の席で、姉の1人娘の千春(杉田かおる)を、親類同士が押し付けあって誰も引き取ろうとしないので、独身ながら叔父さんの右京が引き取ります。

本来なら、独身男性に小さい女の子の子育ては難しいと思いますが、下宿したお米やさんや、近所の人達が親切なため、右京と千春は楽しく温かく日々を暮らすことができたという話です。

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石立鉄男ホームコメディドラマシリーズは、1971年~1978年にかけて、ユニオン映画が制作、日本テレビ系で放送されたドラマです。すべて独身男性を演じた石立鉄男の相手役としての女優が各作品に登場しますが、とくに印象深いのが松尾嘉代と大原麗子です。

違うところは、千春は第2回で「パパ」と呼ぶのですが、『まるっちょ』で、ゆうきは、最後まで「お父さん」とは言いません。

その理由をいろいろ考えてみたのですが、たぶん、「お父さん」と呼ぶことで、何かが変わってしまうことが怖かったのかもしれませんね。

ゆうきは、孤児になったところを引き取ってもらい、楽しい生活を送っている。

団児は、事実上お父さんとして不満もない。

なぜゆうきは、孤児になったのか。

本当のお父さんは死んでしまったから。

つまり、もし、「お父さん」と呼んでしまったら、また団児との生活も終わってしまうのではないか。

「お父さん」⇒死んでいなくなってしまう人

という観念があるのではないか、と思いました。

「いや、マンガだから、あんまり意味ないよ。パパと呼ばないでに似てるから、そこだけ違うようにしたんだろう」

と思われますか。

いや、たしかにそうかもしれません。

作者が、ストーリーを進めていくうちに、ゆうきに「お父さん」と言わせるタイミングを失ったのかもしれません。

ただ、小さい子供って、そういう「推理」ってするもんなんですよ。

私がそうでした。

父親と死別して母子家庭だった私は、「これをした年に父親が死んだ。ならこれをするのはやめておこう」などと、因果関係のないものまで、「父親の亡くなった年にしたことはやめよう」と思ったものです。

だから、ゆうきがそのように考える可能性は十二分にあると睨んでいます。

みなさんは、いかが思われますか。

以上、まるっちょ(原作/かわさき健、作画/人見恵史、双葉社)は、妻子を不慮の事故でなくした男が、孤児となった娘を育てる話です、でした。

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