結婚三十年目、妻が離婚を切り出す時(桐野さおり著、ユサブル)は、長年連れ添った夫婦が30年目の離婚をお互い考えていた話

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結婚三十年目、妻が離婚を切り出す時(桐野さおり著、ユサブル)は、長年連れ添った夫婦が30年目の離婚をお互い考えていた話

結婚三十年目、妻が離婚を切り出す時(桐野さおり著、ユサブル)は、長年連れ添った夫婦が30年目の離婚をお互い考えていた話です。熟年離婚というと、妻が夫に愛想を尽かすイメージがありますが、実際には必ずしもそうではないということを考えさせます。

『結婚三十年目、妻が離婚を切り出す時』は、桐野さおりさんがユサブルから上梓しています。

『ご近所騒がせな女たちVol.5』というサブタイトルで、スキャンダラス・レディース・シリーズというシリーズ名がついています。

この記事は、Kindle版をもとにご紹介いたします。

結婚30年目にして、子どもから一泊旅行のプレゼントをもらった夫妻。

しかし、妻はそれを機に夫と離婚をするつもりでした。

別に男ができたからです。

そこで、離婚を切り出すと、実は夫も以前から離婚を考えていて、いつでも出せるようにと服の中に入れて、くしゃくしゃになった離婚届を出しました。

マスコミや女性識者は、熟年離婚というと、夫が愛想を尽かされたと悪し様に罵るのですが、実際には必ずしもそうとは限らないのです。

本書は2023年3月16日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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パート先で知り合った男ができたから……

結婚30年の記念に、子供たち2人から、「ホテルスイート高級ディナーつき一泊宿泊チケット」をもらった夫婦。

夫は痩身で大人しそうな人。

妻は太ったブスです。

2人はお見合いで結婚。

「お似合い」ともいえないカップルで、ちぐはぐな30年。

夫は、父親の印刷工場で働いていて、酒やバクチにも溺れず、結婚生活は、とくに金銭的な不自由はありませんでした。

家業をついだ夫は過労で倒れ、妻は「この人は私がいなくてはダメだ」と奮起します。

ところがある日、客が来たときに夫は、妻のことを「クマ」と表現し、デブスだった妻は傷つきます。

そこで、夫婦の間には溝ができたのかな。

妻はパート先で知り合った、妻に逃げられた男と仲良くなります。

それで、離婚を決意するのです。

妻は、「あたしがいないとだめだったくせに、クマ呼ばわりしたことが許せない」と思ったのかも知れませんが、夫は夫で、「このクマと結婚するやつなんかいないだろうから、自分が結婚しなければ」と思った結婚生活だったようにも感じます。

そして、いよいよ妻は離婚を切り出すのですが、夫は意外と落ち着いていて、「お前みたいなクマをもらってくれる人なんかいるのか」といいながら、自分も年季の入った離婚届を出します。

夫は、妻が本当は大酒飲みなのに我慢していたことなど、妻が無理していた日々を見透かしており、そんな妻を、解放したいと思っていたのかも知れません。

で、最後だけはちょっと納得いかない展開ですが、すべてネタバレではつまらなくなりますので、そこは伏せておきます。

本当に夫のほうが愛想つかされたのか

ま、要するに、長年連れ添った夫婦2人とも離婚を考えていた、という話ですね。

でもまあ、勝ち負けという判定は適当ではないかも知れませんけど、私の読後感では夫の勝ちですね。

どうしてかって?

先に言いだしたのは妻のほうだから、妻のほうが愛想を尽かしたのだと思いますか。

夫は、くしゃくしゃになった離婚届をもっていたということは、いつでも出せるように準備をしていたということでしょう。

そして何より、ここが大事ですが、妻は、男ができたから離婚するわけです。

でも、夫は別に、「女ができたから」ではないですよね。

妻は、もし、そういう男が現れなかったら、離婚には踏み切れなかったかも知れません。

要するに、男なしでは判断ができない、ずるい生き物なのです。

でも、夫には硬い決意があったわけですよね。

タイトルは、まるで妻が三行半をつきつけたようなイメージですが、そうではなくて、三行半はあくまで夫の方で、妻はあくまで男を乗り換えただけなんです。そこ間違えてはいけません。

これ、もしも、夫は自分の離婚届を隠して、妻が「男ができたから離婚したい」というだけのことにしたら、裁判で慰謝料取れるかも知れません。

なぜなら、妻の不倫だから。

でも、夫はそれをしなかった。

夫の、長年連れ添った妻への感謝の気持だったんじゃないでしょうか。

それに、物語では、家業を妻が切り盛りしたと描かれていますが、それも、夫ができないわけではないけれど、あえて妻のやりたいようにさせて、自分は黙っていただけかも知れません。

私は、この物語を読んだ限りでは、どう見ても夫の方が人間的には勝っているように思います。

では、どうして夫の方は女を作らなかったのか。

たぶん、性格的なこととか、妻との長年の結婚生活を経験して、「もう配偶者はいいや」と思ったんじゃないでしょうか。

妻に気を使うよりも、1人で暮らしたほうがいいと。

ですからね、この物語は深いと思います。

というのも、昨今、熟年離婚で、夫が愛想つかされた的な風潮を書くマスコミや女性識者はいますが、本当にそうなのかなと思います。

実は、とっくの昔に夫のほうが愛想つかしていて、かりに妻の方から離婚を言い出したとしても、困ることは困るかもしれないけど、気持ちの中に、ちょうどいいや、ぐらいの思いがあるのかも知れませんよ。

死別の場合、夫は早く死ぬが、妻はそうでもない、という統計をもって、やれ女は強いんだとか書き立てますが、それもどうなのかなと思います。

夫は、妻を見送ったことで、自分の人生の役割を終えた、というような責任感から解放されて、人生に未練がなくなったということはあると思います。

でも、妻はおめでたいから、夫と死別したことで一人でのびのびとしているんでしょう。

それは苦労からの解放とは限らず、そもそも結婚生活をそんなに真剣に考えていなかっただけかも知れません。

夫婦の関係。考えさせられますよ。

以上、結婚三十年目、妻が離婚を切り出す時(桐野さおり著、ユサブル)は、長年連れ添った夫婦が30年目の離婚をお互い考えていた話、でした。

結婚三十年目、妻が離婚を切り出す時/ご近所騒がせな女たちVol.5 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) - 桐野 さおり
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