動物園ではたらく 仕事と生き方(小宮輝之著、イースト新書Q)は、動物園で40年間働き都内3園の園長を務めた「動物園博士」の半生と動物園職員の生活が描かれています。「動物園で働く」という仕事の実態や魅力、動物園の役割について語った一冊です。
著者の小宮輝之さんは、大学卒業後に東京都職員となり、多摩動物公園で飼育係としてキャリアをスタートさせました。
つまり、動物園の職員というのは、地方公務員です。
動物園は、たいてい都立や県立ですから、職員もそうなるわけです。
その後、上野動物園の飼育係長、飼育課長を経て、2004年から2011年まで上野動物園の園長を務めました。
本書は、単なる動物の飼育ではなく、動物の福祉、教育、研究、保全といった動物園の多面的な機能を紹介しながら、動物園職員のリアルな仕事の様子を描いています。
本の構成
フラッシュではないけれど。
最近読んだ本から、何がストレスになるか分からんよなあ、と思った一節。"動物園ではたらく 仕事と生き方 (イースト新書Q)"(小宮輝之 著)
https://t.co/asudKA1Frn pic.twitter.com/ax0BollulN— たいぞぉ (@jullienmintz) May 24, 2018
本書は4つの章で構成されており、小宮さんのキャリアの各段階に焦点を当てています。
1.飼育係の仕事(多摩動物公園時代)
2.飼育係長の仕事(上野動物園・井の頭自然文化園時代)
3.飼育課長の仕事(多摩動物公園・上野動物園時代)
4.園長の仕事(上野動物園時代)
パンダの出産に徹夜で立ち会ったり、脱走した動物を職員総出で捕獲したりといった、普段は知ることのできない動物園の裏側が詳細に描かれています。
動物たちの個性豊かな行動や、飼育員たちの動物への愛情が伝わってきます。
かつては動物を見せるだけの場所だった動物園が、現在では種の保存や教育、研究など、多岐にわたる役割を担っていることが分かります。
動物園がどのように進化してきたのか、その歴史を学ぶことができます。
長年動物園で働いてきた著者だからこそ語れる、貴重なエピソードが満載です。
いくつか簡単に書きます。
1. カナダヤマアラシの革新的な展示方法
上野動物園で、ニューヨークの子ども動物園からヒントを得て、15メートル以上あるケヤキの木をそのまま展示場にし、木の上に登ったヤマアラシを橋から眺められるようにしました。これは海外の展示方法を日本の環境に合わせてアレンジした創造的な取り組みです。
2. ナマケモノの自然な生活環境の再現
従来のゴリラの空き室での展示から、ナマケモノを外に出し、自由に過ごせるようにしました。これにより、ナマケモノは本来の夜行性の習性を取り戻し、時間帯や気温の変化を感じられるようになりました。その結果、初めての出産にも成功しています。
3. ノウサギの飼育挑戦
多摩動物公園でのノウサギの飼育は、試行錯誤の連続でした。当初は野生に近い藪のある屋外展示を試みましたが失敗し、最終的に1坪の小屋での飼育に成功しました。この経験は、動物の本来の習性と飼育環境の関係について深い洞察を提供しています。
4. 動物の足跡コレクション
小宮氏は、様々な動物の足跡を実物大で写し取った「足拓」のコレクションを持っています。これは、長年の経験と動物への深い愛情が形になった貴重な資料といえます。
これらのエピソードは、著者の豊富な経験と、動物園における革新的な取り組みを示しています。
同時に、動物の本来の習性を尊重しつつ、来園者にも魅力的な展示を実現するという、動物園の重要な役割を反映しています。
いずれにしても、動物に対する深い愛情と、動物園の発展に貢献したいという情熱が伝わってきます。
「3」の野ウサギですが、うさぎというと、ぴょんぴょん跳ね回るイメージがわたしたちはありますね。
でも、それは危機を感じて逃げる姿であり、うさぎにとって、決して好ましい状態ではないそうです。
その他、 絶滅危惧種の保護や繁殖プログラム、環境教育の重要性などを説いています。
好きだけでは続かない仕事の厳しさや、動物の命に向き合う責任感についても触れています。
無料の動物園
動物園といえば、昔から家族揃って楽しむ定番スポットですが、たとえば上野動物園、多摩動物公園、葛西臨海水族館、井の頭自然文化園などの都立動物園は、廉価ながらもみな有料。
ところが、政令指定都市のど真ん中にありながら、無料の動物公園も存在するのです。
私は、とくに積極的に動物園に行くわけではないのですが、多摩川を越えてすぐのところにある川崎市立夢見ヶ崎動物公園と、横浜にある野毛山動物園は、入場無料のため入りやすいところです。
お茶漬け論争、ご飯は熱いか冷たいか、ただいま5対5!&川崎市立夢見ヶ崎動物公園 https://t.co/IOQoMnoFDH
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) March 14, 2025
JRの横須賀線や湘南新宿ラインが停まる新川崎駅から徒歩15分。
加瀬山という小さな山の上に公園はあります。
山の上から見下ろすと、川崎市幸区の住宅街なのです。
つまり、住宅街の中の動物園なのです。
野毛山動物園in野毛山公園(横浜市西区) https://t.co/jAEcUbYvXC #動物園 #野毛山動物園
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) March 14, 2025
野毛山動物園は、横浜市立中央図書館の近くにあります。
桜木町駅から10分ぐらい歩いた野毛山の上にありますが、横浜駅からバスも出ています。
動物園は、野毛山公園内にありますが、バス停を隔てて、公園のメイン施設は野毛山公園展望台。
丘の中腹にある2階建ての展望台です。
横浜駅やみなとみらい、関内方面などを見渡す夜景に定評のある施設です。
近くの方は、足を運ばれてはいかがでしょうか。
みなさんのお住いの地域には、特徴ある動物園はありますか。
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