霧の神話(森村誠一著、祥伝社文庫)は、1974年に祥伝社ノン・ノベルで初出、現在もKindle化されている長編本格推理小説です。

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霧の神話(森村誠一著、祥伝社文庫)は、1974年に祥伝社ノン・ノベルで初出、現在もKindle化されている長編本格推理小説です。

霧の神話(森村誠一著、祥伝社文庫)Kindle版

霧の神話(森村誠一著、祥伝社文庫)は、1974年に祥伝社ノン・ノベルで初出、現在もKindle化されている長編本格推理小説です。結婚相手の隠された過去や連続する事件による心理的な緊迫感が特徴です。1975年の春には連続ドラマ化もされました。

祥伝社ノン・ノベルとは、祥伝社が発行している新書(ノベルズ)判の小説レーベルです。

『霧の神話』は、森村誠一のミステリー小説です。

物語は、妻子ある上司と、不倫関係にある女性が、ドライブをしているプロローグから始まります。

ちょっと油断したところ、ヤクザの2人組に車を乗っ取られてしまいますが、運転していた上司は、彼女をおいて車から逃げ出してしまいます。

その後、何が行われたかは書かれていませんが、想像がつきます。

もちろん、このプロローグは、ストーリーに重要な意味を持ちます。

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男がいるかも知れない妻を詮索する心理小説

化粧品会社の有望社員・魚住晋一(うおずみしんいち)が白馬山中を訪れたところ、雪焼けで雪盲(紫外線角膜炎)になります。

下山できなくなって困っているところ、自殺しようとしていた女性・自称草野夕子(そうのゆうこ)と知り合い、彼女の助けを借りて下山します。

そしてなんと、その晩2人は結ばれます。

魚住はもう、夢中になってしまうのですが、翌朝、彼女は別れも告げず、2人分の勘定も払ってホテルをチェックアウトしていました。

魚住は夕子が忘れられず、といっても雪盲ですから、顔もわからず彼女の体の感触が忘れられなかったのですが、上司から進められた見合い相手・草薙夕紀子(くさなぎゆきこ)が、「もしかしたら夕子ではないか」と思い込み、結婚までこぎつけます。

しかし、新婚旅行の行く先々でヤクザの男が現れます。

その存在に夕紀子は慌てるのですが、魚住には「全然知らない人です」と不自然な回答をするため、魚住は彼女の過去に何か秘密があるのではないかと疑念を抱くようになります。

しかも、その不審な人物が惨サツされる事件が発生。

自宅には、間違い電話を装った見知らぬ男からの電話もあります。

魚住は、夕紀子の不自然な態度を怪しみ、女性一人でヤクザを始末できるはずがないから、隠れて付き合っている男と2人で犯行に至ったのではないかと疑い、興信所まで使って真相を探ろうとします。

その結果、思い人・夕子の正体について判明し、さらに夕紀子のの怪しさの真相は意外な方向に進みます 。

ストーリーはサスペンス要素が強く、結婚相手の隠された過去や、連続する事件による心理的な緊迫感が特徴です。

妻に男がいることを疑い、その男に嫉妬するまではわかるのですが、もしそうだったとしても、「そんなフケツな女、ノシつけてくれてやる」ではなく、「かけがえのない妻を取り返す」ことを考えて、いろいろ推理して行動している主人公・魚住が、なんともいじらしいです。

ちなみに、現在ネットのAIサービスのうち複数のサービスに、夕紀子と夕子の関係や、ストーリーの結末などについて聞いてみたところ、きちんと答えられたサービスはひとつもありませんでした。

サスペンス小説なので、ネット上ではネタバレはされていないからです。

現在のAIはまだ、既存のデータをまとめることはできても、未知の推理はできないということです。

テレビドラマは女性が主人公に

本作を原作と称したドラマが、以前放送されていたことが、本作を読むことになったきっかけです。

『愛のサスペンス劇場』という、1975年3月31日から1977年3月4日まで日本テレビ系列の平日13時30分 – 13時55分(JST)に放送された昼ドラの放送枠です。

花王石鹸(現:花王)の一社提供です。

その第一弾として、放送されました。

当時、中学生の私は、春休みだったので視聴しておりましたが、話が佳境に入ったところで学校が本格的に始まり視聴できなくなりました。

当時はまだ、ビデオは一般家庭にはありませんでしたからね。

そこで、結末がどうしても気になって、今回「原作」を読んだわけですが、「原作」ではなく「原案」といった方が正しいと思います。

小説では、魚住が、妻の過去に疑惑を抱くわけですが、ドラマでは、妻・夕子(島かおり)が夫・魚住(久富惟晴)に疑惑を抱く展開に書き換えられています。

島かおりが、タチのわるい男たちから「性加害(←今風の言い方)」を受け、自サツのために白馬山中を訪れたところ、一人の男(久富惟晴)に救われ、2人は夫婦になるが、実は夫はその性加害野郎の一人だったのではないか、という疑惑です。

霧の神話(日本テレビ後 1・30)結婚して幸福な家庭におさまった女が、過去のいまわしい出来事に夫が関係していたのではないかという疑惑にさいなまれていく姿をサスペンス・タッチで描く。出演は、島かおり、久富惟晴、河原崎長一郎、西田健ほか。(「毎日」1975年3月31日)

タチのわるい男として、西田健という適役がキャスティングされているのも興味深い。

それでもまあ、小説を読みながら、ドラマや当時の自分を思い出し、懐かしい気持ちにはなりました。

現在、AmazonUnlimitedで追加料金無料で読めますから、推理小説ファンにはぜひおすすめします。

サスペンス小説はいかがですか。

霧の神話 (祥伝社文庫) - 森村誠一
霧の神話 (祥伝社文庫) – 森村誠一

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