娘のために…~2014年千葉県シングルマザー愛娘殺害事件~(阪口ナオミ著、ぶんか社)は貧困により実の娘を殺めてしまった事件

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娘のために…~2014年千葉県シングルマザー愛娘殺害事件~(阪口ナオミ著、ぶんか社)は貧困により実の娘を殺めてしまった事件

娘のために…~2014年千葉県シングルマザー愛娘殺害事件~(阪口ナオミ著、ぶんか社)は貧困により実の娘を殺めてしまった事件です。県営住宅の家賃滞納による強制退去が事件のきっかけになりましたが、生活保護のあり方が改めて問われます。

『娘のために…~2014年千葉県シングルマザー愛娘殺害事件~』は、阪口ナオミさんが、ぶんか社から上梓した漫画です。

千葉県銚子市で実際にあった、母親が貧困が原因で実の娘を殺めてしまった事件を描いています。

姉妹のように見られていた仲良し母娘だったので、周囲の人もショッキングな事件でした。

娘さんは、明るくいい子だったとの近所評です。

住んでいた県営住宅の家賃1万2800円を、2年以上にわたって滞納していたため強制退去の対象となっており、強制執行される当日に事件は起こったそうです。

生活保護の相談に福祉事務所を訪れたこともあったそうですが、利用には至っていなかったとか。

本書は2022年9月15日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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極度の困窮状態で無理心中


政府は2022年9月6日、住民税が非課税の低所得世帯を対象に1世帯あたり5万円を給付する方向で調整に入ったといいます。

何度目だよ、という声がありますが、コロナは収束せず、それに加えてロシアのウクライナ侵略による物資不足や石油高騰などによるコストプッシュインフレが起こっているわけですから、給付継続は当然です。

むしろ、5万円では一時的で、また継続的な給付が求められることになるでしょう。

何しろ、コロナ禍で、マスクや消毒剤の費用が新たな「固定費」になってしまいましたからね。

一昨年の一律給付のときもそうですが、金を配るだけでは本質ではないとか、金持ち優遇を是正しないで公金を配って事を済ましたら格差が広がるとか、いろいろケチをつける人もいるのですが、世の中には一時的な給付金であっても、それで一息ついて一家の無理心中を留まるレベルの人だって大勢いるんですよ。

「バラマキ」はこれだけの格差社会では必要なんです。

たぶん、今回とりあげる母娘もそうだったのではないでしょうか。

2014年9月、千葉県銚子市で、43歳のシングルマザーが、13歳の中学生の娘とともに無理心中を試みました。

母親は娘を運動会で使っていたはちまきで絞め殺し、自身も自殺する心づもりでしたが、室内に入った執行官や業者らに発見され、自殺を実行する前に逮捕されています。

冷蔵庫の上には、家賃の督促状が積まれていたそうです。

極度の困窮状態に追い込まれていたわけです。

母親は2002年に夫と離婚。

各地を転々としながら娘を育てており、2007年から銚子市の県営住宅に住み隣町の給食センターでパート職員として働いていたものの、時給は850円、月収は多いときでも8万円程度。

児童扶養手当や夫からの養育費とあわせても、およそ12万円~14万円に過ぎなかったそうです。

そして、お定まりですが、養育費はなしくずしに支払われなくなったとか。

収入によって決まる県営住宅の家賃は12890円でしたが、それでも生活はきつかったでしょう。

多重債務・国民健康保険料滞納などの困窮状態にあり、相談できる人もおらず生活保護も受けるには至っていなかったといいます。

2015年6月12日、検察は懲役14年を求刑していましたが、千葉地裁は母親に対して懲役7年の裁判員裁判判決を言い渡しました。

求刑が半分にまで軽減されたのは、それだけ裁判員にとって身につまされたのではないでしょうか。

借金を前提とした生活はいずれ破綻する

漫画の舞台は実際の通り、平成19年C県C市(千葉県銚子市)の県営住宅。

ここに、小山厚子(36)と娘のくるみ(4)が越してきます。

上記のように、民間に比べれば格安の家賃と言いながらも、パート収入で暮らしていかなければならず、それに加えて別れた夫の作った借金200万円の返済にも迫られていたと描かれています。

さらに、実家の両親とも不義理をして絶縁状態。

孤立無援で生活する日々でした。

まあね、実家だの姉弟だのは、血がつながっているだけで別の家庭ですから、あまり当てにするものではないと思いますけど、母子家庭って、多かれ少なかれこんな感じですよね。

娘さんは孤立していたと描かれています。

というのは、団地の人は生活保護を受けて、つまり働かないでお金をもらってずるい人だと親が子に教え込んでいるためです。

おいおい、生活保護の何が悪いんだよ。

そもそも、この母娘は生活保護は受けていなかったんですが、受けていればもう少し生活は楽になったでしょうね。

母子家庭の場合は、生活保護を受けていたとしても、働きたくても働けない現実があるからです。

私も介護離職で、生活保護を受けたかったのですが、ダメでした。

私なんて、高齢者障害者を4人も抱えているんですよ。

それでも受けられないほど、生活保護の基準て厳しいのです。

大衆に言いたいのは、生活保護だからと色眼鏡で見るのではなく、逆にその間口を広げる声を上げてほしい。

情けは人のためならずで、あなたが病気になったりリストラされたりしたときに、生活保護が受けやすくなった良かった、と思える時が来るかもしれないからです。

ま、人間というのは愚かな生き物だから、そうならないとわからないもんですけどね。

それはともかくとして、母親は、娘のためにがんばっていたようです。

サラ金でカネを借りて洋服を買ってやり、町内会の掃除やイベントに顔をだすのも娘のためだったといいます。

といっても、ブランド品ではなく、しまむらなど量販店を利用したそうですが。

一方、自分は着古したものを身に付けていました。

しかし、いずれにしても借金をすれば、利息とともに返済を迫られます。

わずかな県営住宅の家賃を支払うお金も困るようになました。

支払いが滞ったことで、サラ金やローン会社からは、もう借りられなくなっていました。

そして、闇金へ。

もちろん、取り立ては厳しい。

そこで生活保護の相談に生きましたが、パート収入があることを理由にハネられたそうです。

行政はここがおかしいんですよね。

むしろ、働いても追いつかないから生活保護を申請しているんじゃないですか。

だったら、パチンコして寝てたほうがいいのですか。

厚子は、くるみのために、洋服を買ってやったり、友達との付き合いに不自由しないお小遣いを上げたりしたこれまでを後悔すらし始めます。

このへんで、精神的に疲れてしまったのかな。

そして強制退去の通知が。

追い詰められた厚子は、それを二人の生活が終わってしまうものと解し、ついに無理心中を……。

事件のポイントは生活保護

物語の中には、娘に洋服を買ってやったり、英会話のセットを買ってやったりするシーンが有り、それをもって贅沢だ、もっと堅実にできなかったのか、と居丈高に叱り飛ばす意見はあります。

実際に、母子家庭なのに贅沢して破綻する話は、これまでにもご紹介したことがあります。

ただ、この母娘の場合、もともとの収入が少なかったので、何かをがまんしたとしても、それはあまり本質ではなかったように思います。

これは、母子家庭になった者しかわからないようですが、母親一人だけだと金銭感覚がちょっと間違うことがあります。

夫婦揃っていれば、「おい、それは贅沢だろう」とか、2人の価値観の落とし所がありますが、片親だとそれがないんです。

ここ、エラソーに非難している人にはわかんなないんだろうな。

それでも、それなりの収入があれば、この母親のようにならないだけで、低収入である以上、遅かれ早かれそれが原因で破綻します。

いや、誰でも、どこの家庭でも、多少は無駄遣いってあるでしょ。

母子家庭だけが、「ムダ」を許されない完璧な家計管理を求められるっておかしいですよ。

繰り返しますが、やはり生活保護を受けられなかった点については、見逃してはならないポイントだと思います。

娘はまもなく義務教育を終えますし、母親だってまだ40代。

数年たてば事情はかわるはずで、十分生活保護の対象とみなせたはずです。

大衆も、生活保護はズルしてお金をもらえる制度、という認識を改めて、自分たちだって世話になり得る社会のセーフティーネットなのだ、という真面目な意識を持ってほしいと思います。

以上、娘のために…~2014年千葉県シングルマザー愛娘殺害事件~(阪口ナオミ著、ぶんか社)は貧困により実の娘を殺めてしまった事件、でした。

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