『福田和子松山ホステス殺害事件』(北上祐帆、ぶんか社)は時効成立21日前逮捕、公訴時効成立11時間前起訴で話題になった事件の漫画化

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『福田和子松山ホステス殺害事件』(北上祐帆)は、時効成立21日前の逮捕、公訴時効成立11時間前の起訴で話題になった事件の漫画化

『福田和子松山ホステス殺害事件』(北上祐帆、ぶんか社)は、時効成立21日前の逮捕、公訴時効成立11時間前の起訴で話題になった事件の漫画化です。逮捕されるまでの14年11ヶ月に及ぶ逃走劇は、書籍のほか、テレビドラマ、映画などで広く知られています。

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2度目の夫を死体遺棄に手伝わせて……

『福田和子松山ホステス殺害事件』は、北上祐帆さんが描いた漫画で、ぶんか社から発行されています。

松山のホステスに対する、強盗殺人と死体遺棄の罪を犯した福田和子容疑者の、犯行から7つの(整形)顔と、20の偽名を使った14年11ヶ月の逃走、逮捕から獄死までを、上下巻に分けた漫画で克明に描いています。

福田和子元受刑者は、事件当時スナックを経営していましたが、パトロンはしっかりいました。

もちろん、戸籍上は2番目の夫がいても、です。

子供は、最初の夫との間に2人、死体遺棄を手伝わせた2番目の夫との間にも2人、合計4人いました。

事件があったのは1982年8月19日。

福田和子元受刑者が34歳のときです。

元同僚のホステスを絞殺し、家財道具を奪い去ります。

そして、その時の夫を協力させて、遺体を松山市内の山中に遺棄。

その4日後から逃亡生活が始まります。

整形と偽名で「結婚」も

夫の口座から約60万円を引き出し、それを元手にまずは金沢へ。

スナックのホステスに採用されますが、すぐに目と鼻の整形手術を受けるため上京。


店には戻りますが、店の客2人と二股交際をして、そのうち一人は堕胎した末に別れ、もうひとりの市内で3代続く老舗和菓子店店主とは、店主の離婚を待って事実婚ですが嫁ぎます。

そして、長男まで呼んで働かせています。

整形は自由診療だから偽名で通ったのかもしれませんが、老舗の和菓子店は結婚前に身元を調べなかったのでしょうか。

おそらく、それまで半同棲生活があったために、なしくずしに潜り込めたのかもしれません。

客商売はお手の物でしょうから、和菓子店の接客で人気者になるのは造作も無いことだったのでしょう。

それでも、いつまでも騙せるものではなく、なかなか籍を入れないことが伏線となって和菓子店の家族が疑い、通報されると今度は名古屋へ逃亡。

その後は福井から大阪へ流れ、売春宿でも働きます。

警察は、懸賞金100万円という前例のない捜査手法を採用し、美容外科も整形した責任を感じて400万円の懸賞金を出して懸命に福田和子元受刑者を追います。

そして、時効前に行きつけのおでん屋で常連客に知られ、逮捕されてしまいます。

整形を重ねても福田和子元受刑者とわかってしまったのは、いくら顔を変えても声までは変わらなかったからです。

テレビで、福田和子の音声が公開されたのです。

最後まで抵抗した福田和子元受刑者


しかし、逮捕ですべて終わりではありません。

裁判で有罪にするには、起訴に持ち込まなければなりません。

公訴時効も迫っていましたが、福田和子元受刑者は当然それはわかっています。

共犯者がいて、自分はヤッていないと言い出したそうです。

警察も必死です。

その共犯者なる人物が事件当日、愛媛にはいなかった証拠をギリギリで見つけ出し、公訴時効成立11時間前に起訴しました。

事件は書籍でノンフィクションとしてまとめられたほか、テレビドラマや映画化もされました。

テレビドラマでは、大竹しのぶ、藤澤オリエ、鈴木ひろみ、河合美智子、寺島しのぶ、中島ひろ子、佐藤仁美、宮地真緒など。

映画では藤山直美が演じています。

やっぱり壮絶な「ほしのもと」

福田和子容疑者の、生き様の背景に影響を与えたはずの「ほしのもと」ですが、例によって片親育ちです。

しかも、本当の父親の顔を知らず、幼くして両親は離婚。

母親は自宅で売春宿を経営していましたが、漁師と再婚。

しかし、その漁師とも離婚。

高校生の時に交際していた男性は事故死。

その後、知り合った男性と同棲するも、生活力のない18歳で、高松市の国税局長の家に強盗に入り2人揃って逮捕。

松山刑務所に服役すると、今度は看守を買収した暴力団郷田会の関係者に強姦される「松山刑務所事件」の被害者になってしまう。

さらに、事件は母親が見つけた弁護士によって、示談でごまかされてしまいます。

出所後に結婚しますが、子供ができても結局離婚。

もう、ここまでで十分壮絶な人生です。

松山刑務所事件は国会でも取り上げられたほどです。

そりゃそうでしょう。

余談ですが、郷田会がどうして服役していたかと言うと、そのときたまたま第一次松山抗争があったのです。

経緯は割愛しますが、山口組系の矢嶋組と、地元の郷田会が、ビルの3階と道路に止めた車中とで銃撃戦の抗争を繰り広げたことがありました。

見物人は4000人、取り囲んだ警官隊は250人。

テレビ中継もあったと言いますから、怖いけれどどこかのどかな昭和の事件です。

運も悪いですよね。

まあ決めつけるわけではありませんが、そのような人生を送った人が、サラリーマンと結婚して静かに人生添い遂げるということは、なかなか難しいかもしれません。

そもそも逃亡犯ですから長続きは難しいわけですが、老舗の和菓子屋でも、嫁としては一所懸命はたらいていたようです。

それにしても、14年11ヶ月は長かった。

強盗殺人罪は、無期懲役の判決が半数以上といわれています。

ただ、刑期が10年経過すれば仮釈放が可能(刑法28条)ともいわれているので、14年11ヶ月、整形や売春を繰り返した末に逮捕では、時間的に「高くついた」ものになってしまったのではないでしょうか。

起訴の8年後(収監2年後)に和歌山刑務所で獄死しています(享年57歳)が、逃亡のストレスも寿命を縮める一因になったかもしれません。

現在は、時効が撤廃され無期限になっています。

それでも逃亡を選んだでしょうか。

本書は上下巻とも、AmazonUnlimitedで読み放題リストに入っています。

※付記

この記事については、「加害者を美化しすぎ」という感想が入ってますが、どこを美化していますか?

美化ではなくてその逆でしょ。この福田和子という人に限らず、悪いことをする人の「ほしのもと」は、いつ見ても壮絶だ、という話です。それは、事件関連のレビューでは毎回書いています。

つまりですね、

あんたも毒親カマしていると、あんたの子どもも、こういう犯罪を犯した人たちのように、悪いことするようになっちゃうかもよ、という意図で書いているんですよ。

わかりませんか。

以上、『福田和子松山ホステス殺害事件』(北上祐帆)は、時効成立21日前の逮捕、公訴時効成立11時間前の起訴で話題になった事件の漫画化、でした。

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