科学するブッダ犀の角たち(佐々木閑著、角川ソフィア文庫)は、科学とお釈迦様の仏教の共通性や関係、そしてそれらの将来を推理

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科学するブッダ犀の角たち(佐々木閑著、角川ソフィア文庫)は、科学とお釈迦様の仏教の共通性や関係、そしてそれらの将来を推理

科学するブッダ犀の角たち(佐々木 閑著、角川ソフィア文庫)は、科学とお釈迦様の仏教の共通性や関係、そしてそれらの将来を推理しています。科学と宗教は相容れないもののように思われますが、そうではないところにお釈迦様の仏教の特殊性があります。

『科学するブッダ犀の角たち』は、最近YouTuberとしてもお馴染みの宗教学者、佐々木閑さんが角川ソフィア文庫から上梓した書籍です。

この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。

宗教学者とご紹介しましたが、実家が真宗高田派の寺院で自らも得度した僧侶。

大学は京都大学工学部工業化学科を卒業後、学士入学で哲学から宗教研究に入ります。

YouTuberとしては、お釈迦様の仏教と大乗仏教の違いと両立を述べています。

つまり、お釈迦様直伝の仏教と、現在の日本に普及している仏教諸派(大乗仏教)は違うものであることを解説。

しかし、それは時代背景によるものであり、それをもって優劣や正誤を判断するものではない、ということも述べています。

自らが宗教学者で「お釈迦様の仏教」を専門としながら、一方では大乗仏教である真宗高田派の僧侶という立場からの解説は説得力があります。

そして、もともとは理系であることから、科学との接点までも論点は広がります。

ただし、安易に似ているものをつなげることも戒めています。

それは、いくらでもこじつけのロジックが可能となり、たとえばあちこちの宗教的特徴をつなぎ合わせたオウム真理教のような集団を作り出すこともあるからだと述べています。

そうした軽率さには警戒しつつも、全く無関係なものとして存在するとはいえない、として、本書では慎重に論を進めています。

本書は2023年1月16日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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脳科学の発展により仏教は科学的生活システムに

本書はまず、科学史がずーっと書かれています。

全体の6割ぐらいでしょうか。

科学というのは、実は物質の法則性を見出している営みではあるけれども、そのねらいは、神の創ったこの世の中はどれほどすばらしいのか、という証明のために行われてきた、ということです。

しかし、科学が発展すればするほど、神秘的なものの範囲が狭まってしまうパラドックスに陥ってしまった、という話が書かれています。

仏教については、佐々木閑さんが専門とするお釈迦様の仏教について説明されています。

そして、お釈迦様の仏教が、世界を因果則によって理解するという態度であり、超越的な存在を頼りにするという考えは全く見られないと強調しています。

1.超越者の存在を認めず、現象世界を法則性によって説明する
2.努力の領域を、肉体ではなく精神に限定する
3.修行のシステムとして、出家者による集団生活体制をとり、一般社会の余り物をもらうことによって生計を立てる

と、お釈迦様の仏教の特徴を枚挙しています。

「1」が興味深いですね。

「現象世界を法則性によって説明する」のは科学の専売特許かと思いきや、科学のほうが「神の一撃」によって発展した社会であることを証明するために存在したというのですから。

そして、科学とお釈迦様の仏教については、驚くべき共通性があるとしています。

生命や宇宙の解明を目指し、発展してきた科学。それは古来、賢人たちが抱いていた天動説のような「神なる視点」との決別の歴史だった。一方の仏教も、神秘的な絶対者の力を否定し、人間の存在だけをよりどころに世界観を組み上げようと生まれた宗教である。

その両者が向かう先を徹底した論理で探求しています。

徹底した論理で、両者の知られざる関係性を明らかにし、さらに向かう未来をも見とおす。驚きと発見に満ちた知的冒険の書、というのが本書の眼目です。

著者は、仏教と科学は同次元の世界観にたつ人間活動であり、両者を同時に受け入れても何ら矛盾することはないとしています。

とくに最近の脳科学の発展は、物質世界と精神世界の壁を次第に破壊しつつあるから、いよいよ科学と仏教のボーダーラインはぼやけてきている。

欲望の起こらない清浄な環境に身を置き、できる限りの時間を瞑想に注ぐその状態で、その上さらに精神の集中度をレベルアップする脳の機構が論理的に解明されていれば、それはもはや宗教ではなく、誰もが納得する普遍的な方法としての精神向上システムであり、科学的生活システムになる、と展望します。

阿含経と般若心経の関係に見るお釈迦様の仏教と大乗仏教の関係

書籍には大乗仏教についても書かれています。

佐々木閑さんは、YouTubeチャンネルで、阿含経と般若心経の違いから、お釈迦作の仏教と大乗仏教の違いを説明しているので、補足としてそちらもご紹介しましょう。

阿含経(あごんきょう、あごんぎょう)というのは、最も古い仏教経典集(スートラ)であり、釈迦の言葉を色濃く反映した真正な仏教の経典ものとされます。

一方、般若心経というのは、『西遊記』でお馴染みの玄奘三蔵、つまり三蔵法師がインドから持ち帰り、大乗仏教の立場から翻訳した般若波羅蜜多経です。

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西遊記(バラエティ・アートワークス著、Teamバンミカス)は、中国で明の時代に完成した四大奇書と呼ばれる伝奇小説を漫画化しました。唐僧・三蔵法師が白馬・玉龍に乗って、孫悟空、猪八戒、沙悟浄と幾多の苦難を乗り越え天竺へ取経を目指します。

玄奘三蔵が、インドの経典を中国語に訳したとき、たとえば『般若心経』ではあえて訳さなかった箇所があったり、儒教や道教といった中国発の思想の影響も受けたりしていると述べています。

池上彰と考える、仏教って何ですか?(池上彰著、飛鳥新社)は、お釈迦様の仏教の誕生から大乗仏教、葬式や新興宗教まで解説
池上彰と考える、仏教って何ですか?(池上彰著、飛鳥新社)は、お釈迦様の仏教の誕生から大乗仏教、葬式や新興宗教まで解説した仏教解説書です。といっても難しいお経の解説本ではなく、あくまでも仏教の歴史や行事等をわかりやすく説明しています。

要するに、このふたつの経は、お釈迦様の仏教と、大乗仏教の違いを象徴的に示しているわけです。

佐々木閑さんは動画で、「阿含経におけるお釈迦様の教えと、般若心経が説く空の教えが同一線上にはない」から、どちらの立場に立つかで生き方も変わってくると述べています。

般若心経は前半部分で、多くのものを無である、それは無いのであると否定しています。

それは何を否定しているかというと、阿含経の中で、お釈迦様の教えとしてお釈迦様に一番近い様々な事柄です。

五蘊、六根、六境、六識、十二縁起、四諦、智慧とその智慧による涅槃の獲得。

つまり、お釈迦様の言う諸行無常というのは、万物は構成物の組み合わせで出来ているから、「私」を含めて絶対ではない、という考えですが、そもそも般若心経の『色即是空空即是色』というのは、その構成物自体をないとしています。

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別冊NHK100分de名著集中講義大乗仏教こうしてブッダの教えは変容した(佐々木閑著、NHK出版)は原始仏教と大乗仏教の違いを解説しています。どうして日本の住職は、結婚もするし金儲けもするしお酒も飲むのだろう、という疑問も解決します。

まあいうなれは、諸行無常に「無在」が加わるのでしょうね。

ですから、違うものであるという認識は必要です。

どちらもお釈迦様が説いた、とするのは間違いです。

ただし、「両者を単純に並べて比較してはいけない。歴史的背景を理解することが大切」とも述べています。

般若心経が、阿含経を否定したからと言って、阿含経よりも上であるとか、正しいとかいうことではない。

何より、般若心経は、阿含経を前提として成立したのです。

般若心経は、阿含経なしにはそもそもなかったのです。

佐々木閑さんは本書で、お釈迦様の仏教と、大乗仏教の区別と両立を説いています。

以上、科学するブッダ犀の角たち(佐々木閑著、角川ソフィア文庫)は、科学とお釈迦様の仏教の共通性や関係、そしてそれらの将来を推理、でした。

科学するブッダ 犀の角たち (角川ソフィア文庫) - 佐々木 閑
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