現代人の心を癒す古の智慧、星覚さんの『身心が美しくなる 禅の作法』(主婦の友社)が教える美しい生き方をご紹介します。忙しい現代社会の中で、多くの人がストレスや不安を抱えながら生きています。そんな時代だからこそ、古くから受け継がれてきた禅の教えが注目を集めています。
本書には、日常生活に取り入れられる禅の智慧が詰まっています。
みなさんは、禅宗のお寺の禅道場などで、禅を組まれたことはありますか。
仏教は、成仏するために自分の心を見直す営みですが、現在日本に伝わっている大乗仏教では、
1,読経(天台宗、日蓮宗)
2.念仏(浄土宗、浄土真宗などの浄土教)
3.禅(臨済宗、曹洞宗などの禅宗)
4.三密加持(お経を唱えたり荒業を行ったりする真言宗、天台宗などの密教)
といった宗派があります。
「3」の禅宗とは、坐禅を主要な修行法として、内観・自省によって心の奥底にある仏性を悟ろうとする仏教の一派の総称です。
臨済宗と曹洞宗では、坐禅の方法が少し違うのですが、どちらにしても、禅を組んで悟りを開くというゴールは同じです。
最近は、檀家・信者でなくても、禅宗系のお寺が開いている禅道場に通い、禅を組む人が若い人にも増えてきたといいます。
「信仰がなかったら、禅を組んでも意味ないんじゃね?」
と思いますか?
実はそうではないのです。
最近の脳科学の研究では、禅(瞑想)を実践することで、体内で良い影響をもたらすホルモンや神経伝達物質が分泌されるという研究結果が次々報告されているのです。
セロトニン(幸せホルモン)……精神の安定や感情のコントロールに深く関わる神経伝達物質
β-エンドルフィン……快感や鎮痛作用
ドーパミン……快感や意欲に関わる神経伝達物質
オキシトシン(愛情ホルモン)……リラックス気分にさせる
コルチゾール(ストレスホルモン)の減少……ストレスが軽減されることで脳の海馬を守り認知症を予防する
??幸福って何???
脳科学的には「幸せ=脳内物質が出ている状態」。
ドーパミン・セロトニン・オキシトシン、この3つが分泌されると、私たちは幸せを感じます。
それぞれが「成功・安定・つながり」の幸福を司る“幸福の三原色”。??樺沢紫苑@kabasawa『精神科医が見つけた 3つの幸福』より pic.twitter.com/vRy9BPxSx5
— たになかゆうき@教師のデジタル仕事術 (@ugteacher0220) May 27, 2025
私が本書に興味を持ったのは、一番下の「コルチゾール(ストレスホルモン)の減少」です。
ストレスは脳の海馬を痛めます。短期記憶に支障をきたし、認知症の原因ともいわれます。
コルチゾール退治には有酸素運動が一番といいますが、一方で運動による疲労という問題が生じます。
歳を取ってくると、有酸素運動でエネルギーを著しく消耗することも、生活の質を下げます。
そこで、禅を採り入れてはどうかと思ったわけです。
いずれにしても、信仰がなくても、正しく禅を行えば、心身ともに状態が良くなってしまうのです。
脳って、簡単に騙せるのです。
でも嘘も方便で、決して悪いだましではないですよね。
不安や悩みはスッキリ消えて、ストレスがストレスにならなくなる
本書の著者、星覚さんは慶應義塾大学法学部を卒業後、福井県の大本山永平寺で3年間の厳しい修行を積んだ経歴の持ち主です。
現在はベルリンを拠点として、雲水(禅の修行僧)として活動しながら、俳優としても活躍されている異色の経歴を持つ方です。
永平寺といえば、「日本一厳しい修行をしているお寺」として知られる曹洞宗の大本山。
そこで約100~150人の修行僧たちと共に修行を積んだ経験を持つ星覚さんだからこそ語れる、本物の禅の教えがこの本には込められています。
本書『身心が美しくなる 禅の作法』は、わずか99ページという読みやすい分量でありながら、深い内容が詰まった一冊です。
本書の最大の特徴は、永平寺での修行で培った「禅の作法」を、現代の日常生活に取り入れられる形で紹介していることです。
星覚さんは本書の中で、「ただひたすら美しい作法を日常に取り入れるだけで、不安や悩みはスッキリ消えて、ストレスがストレスにならなくなる」と述べています。
これは決して大げさな表現ではありません。
禅の修行では、一つ一つの動作に心を込めて丁寧に行うことが重視されており、その精神を日常の些細な行動に応用することで、心の状態が大きく変わるのです。
坐禅は目を閉じない!
瞑想を実践しようとした際、真っ先に気になることがいくつかあるかと思います。
そのひとつが「姿勢」です。
例えば、日本の禅などでは、脚の組み方や手の位置に至るまで、全てにおいて細かく定められています。
タイでは、どうなのかでしょうか?
『瞑想の時の姿勢』https://t.co/JraeVHuHU0 pic.twitter.com/AWqaXAQFzi
— タイ佛教修学記@おだやか瞑想 (@mesosara_thai) August 21, 2020
具体的な禅の組み方は本書をご覧いただくとして、私が興味深かった(今まで誤解していた)のは、次の点です。
禅は薄目を開ける(完全に目を閉じない半眼)
実際の方法としては、1メートルほど前方の床を自然に見下ろすように視線を向け、何かを見つめるのではなく、ただ視界に入れておく程度の感覚で行います。
目を閉じてしまうと、自分だけの世界に入り込んでしまうのですが、禅は現実逃避ではなく現実と向き合う修行なので、見えるものはそのままに、周囲の環境と一体になりながら坐禅を行うことが大切だそうです。
頭の中を空っぽにしようとムキにならなくていい
人間の脳は常に何かを考えているもので、無理に思考を止めようとすることは、かえってストレスや緊張を生み出します。
思考が浮かんできたら、「ああ、今こんなことを考えているな」と客観的に観察し、それに執着せずに手放していきます(こだわらずに、だから何?というノリでその思考をスルーする)。 思考に気づいたら、優しく呼吸に意識を戻します。これを繰り返すことで、自然と心が静まっていきます。
足を組めなくても大丈夫
正式な足の組み方には、結跏趺坐、半跏趺坐などがあるのですが、関節の柔軟性や筋力の問題で、それができないか、無理してできても長時間維持するのが困難な人が多い。
本書では、足の組み方は本質ではなく、禅で大事なことは、腰をしっかりと立てることで、背骨の自然なS字カーブを保つこと、お尻と両膝の三点で体重を支えることで安定した姿勢を作ること、無理をしないこと、などであるとしています。
本書はそれ以外にも、人生相談のページも有り、たとえば「やりたい仕事が見つかりません」「恋愛がうまくいきません」「人と比較してしまいます」といった相談にも答えています。
もちろん、回答のそれぞれに仏教の教えを散りばめて。
仏教は他の宗教と違い、神様と向き合うのではなく、自分で自分の心を変える宗教なので、現代的な「心の問題」にも有効なのです。
坐禅に興味はありますか。
コメント