関西無敵会(小池たかし/どおくまんプロ著、eBookJapan Plus)は、トラック野郎達の生き様を描いた人情トラッカーコメディ

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関西無敵会(小池たかし/どおくまんプロ著、eBookJapan Plus)は、トラック野郎達の生き様を描いた人情トラッカーコメディ

関西無敵会(小池たかし/どおくまんプロ著、eBookJapan Plus)は、トラック野郎達の生き様を描いた人情トラッカーコメディです。デコトラは令和の現在ではお目にかかれなくなりましたが、昭和時代は映画の影響でずいぶん華やかでした。

『関西無敵会』は、小池たかし著、どおくまんプロ制作で、eBookJapan Plusから上梓されているKindleです。

関西無敵会というのは、運送会社の名前ではなく、そこで仕事を請けているトラッカーたちの組合のようなものです。

プロ野球で選手会というのがありますが、それに近いものです。

「近い」と書いたのは、似ているし、違うところもあるということです。

プロ野球の選手会は、労働組合及び一般社団法人という二つの形態を取っています。

プロ野球選手は、球団の社員ではなく、個人事業主なのですが、球団の意志でトレードされたり、キャンプや球団行事に参加したりなど、雇用契約のような拘束もあるので、選手側から待遇改善などを求めるためにもそうなっているのでしょう。

一方、関西無敵会は労働組合ではありません。

デコトラは、ほとんどが個人事業主といわれています。

そうでないと、トラックを自前で持ち、そこに個人負担と裁量で派手な装飾をするということはありえません。

本作に出てくる田中という見習いについては、自分でトラックを持っているわけでもなく、他のトラッカーのヘルプにつくだけなので、たぶん会社から給料が出るのではないかと思います。

芸能プロダクションでは、新人のうちは給料制で、一人前になったらギャラの◯割という歩合制になりますが、そういう形態ではないでしょうか。

で、会社内の個人事業主同士のつながりとしての会が、関西無敵会ということだと思います。

その関西無敵会のドライバーたちの日々の出来事を漫画にしています。

どおくまんプロというと、『嗚呼!!花の応援団』や、なにわ遊侠伝など、絶対的な主役を中心に描くのではなく、何人かの主要登場人物を描く群像劇ですが、本作もまたその形態を取ります。

ただ、青田赤道や開門快道のような、並外れた破天荒ナンセンスキャラは登場せず、しいてあげると関西無敵会の会長・赤盛桂介ということになるのですが、非現実的なエピソードは全くありません。

それだけ、トラッカーのドラマとしてはリアリティを感じます。

後に述べますが、デコトラ自体、昭和の記憶になってしまいましたが、それだけに本作にはなつかしさを感じます。

本作は全2巻、2023年4月18日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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「あるある」の群像劇

物語は、楽田通商という運送会社のトラッカー安田の友人・田中が、安田の紹介でトラッカー見習いになるところから始まります。

「裸一貫腕一本で勝負する世界や。自前のトラックを持ってその上アートまでできたら、それは男の勲章やで」と、先輩トラッカーの大下に励まされます。

そこに、関西無敵会会長の赤盛桂介(32歳)が、婚約者を同乗させて登場。

仲間から、別の会のトラッカーが派手な電飾をしたと聞かされ、その写真を見て、「こっちもやったるでー」と発奮します。

が、大下からは、「会長、今でも月に100万のローンを払っているのに」とたしなめられます。

つまり、トラッカーは自前のトラックに自腹で電飾を施すのです。

それでも、メンツがあると、「おい、大下っ。社長にもっと仕事をとるように言っとけ」と言い残して、田中たちの前から姿を消します。

その間、働きまくって派手な電飾にしますが、そのために家をずっと開けて、婚約者には逃げられてしまうというオチです。

トラックは、お金を稼ぐための資本ではありますが、トラックそのものの性能ではなく、電飾にびっくりするほどのローンを払うというのはすごいですね。

第2話では、突然鹿児島行きの仕事が入り、仮眠室にいた堀江が請け負うことになり、田中も同乗します。

なぜ、堀江が仮眠を中断してまで長旅の仕事を請け負ったかというと、無線の相手が鹿児島在住だったのです。

今はネットの時代になってしまいましたが、当時のトラッカーは、パーソナル無線必須でした。

私はトラッカーではありませんでしたが、80年代、パーソナル無線やってましたね。

これも懐かしい。

不特定の相手との交信ができたので、楽しかったです。

どうやら今は、完全に無線システムは消滅し、パーソナル無線に割り当てられていた周波数帯は携帯電話に割り当てられたようですね。

漫画の方は、女性と会う約束はしたものの、道路が渋滞で約束の時間に荷を届けるためには、通る道が変わり約束をすっぽかさねばならず、結局会えなかったという話です。

今なら、スマホの連絡で調整がつくと思うんですけどね。

昭和の物語は、想定外のことに対応できないもどかしさが、ストーリーを作っていました。

というふうに、各話ストーリーにナンセンスの要素はありません。

かなり「あるある」の話だと思います。

それだけに、当時を思い出すことができるでしょう。

現在見なくなったデコトラ

ただ、令和の現在は、デコトラに、お目にかかる機会が激減しました。

今後、消滅の方向にあるのではないかとも言われています。

ディーゼルエンジンは、排ガス規制のため15年ほど前からすべてターボ車になっています。

現在は運送業の規制も厳しく、信用のある法人としか荷主は仕事を頼まなくなりました。

中小零細の運送業は社会的に立場が弱く、すぐクレームが入ります。

『トラック野郎』は、デコトラをトレンドにしましたが、一方でデコトラドライバーの印象を悪くしたという指摘もあります。

そして、騒音などの問題もあり、デコトラが入れる現場がありません。

最近はデコトラ入庫禁止のターミナルや業者増えてます。

そもそも車両の規制も厳しく、それを守り、そこそこの規模のある法人しかトラック協会に入れず、高速割引などが受けられない。

業界全体的に運送時間の規制強化とコスト高、ドライバー不足が重なり、厳しい業界、デコにお金をかけられないとなれば、いきおい、消滅の方向に進むわけです。

その意味で、本作は遠くなった昭和の思い出漫画のひとつになるのかもしれませんね。

以上、関西無敵会(小池たかし/どおくまんプロ著、eBookJapan Plus)は、トラック野郎達の生き様を描いた人情トラッカーコメディ、でした。

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