ゆうひが丘の総理大臣 やさしく咲く花…どんな花?の巻(望月あきら著、オフィス漫)は、大合本版(2)に収録された屈指の秀作

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ゆうひが丘の総理大臣 やさしく咲く花…どんな花?の巻(望月あきら著、オフィス漫)は、大合本版(2)に収録された屈指の秀作

ゆうひが丘の総理大臣 やさしく咲く花…どんな花?の巻(望月あきら著、オフィス漫)は、大合本版(2)に収録された屈指の秀作です。タイトルは中村雅俊主演でドラマ化されていますが、本作はドラマ化されていない原作のみで見ることができます。

『ゆうひが丘の総理大臣』は、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で1977年12号~1980年16号まで連載されたマンガです。

単行本は全17巻です。

『ゆうひが丘の総理大臣』(望月あきら、オフィス漫)は陰翳に富む人柄を描くドラマ化もされたヒューマンタッチの学園漫画
『ゆうひが丘の総理大臣』(望月あきら、オフィス漫)をマンガ図書館Zで読みました。かつての学園ドラマの原作全17巻をすべて読めるのは大変ありがたい。1978年には中村雅俊を主演に、モデルに室生犀星を連想する同名のドラマも制作されました。

その17巻を、2冊に大合本したものが、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

ゆうひが丘の総理大臣【大合本版】(望月あきら、オフィス漫)は、あけっぴろげな型破りな教師によるお騒がせスクール・コメディ
ゆうひが丘の総理大臣【大合本版】(望月あきら、オフィス漫)は、あけっぴろげな型破りな教師によるお騒がせスクール・コメディです。1978年にはテレビドラマ化されましたが、「養護施設育ち」という共通のキーワードを元にそれぞれ独自の世界を繰り広げました。

中村雅俊さん主演でテレビドラマ化もされ、1978年10月11日~1979年10月10日まで、全40話が日本テレビ系列ほかで水曜日20:00から20:54まで放映されました。

『青春ド真中!』(1978年5月7日~9月24日)というドラマと、出演者もかぶるので比較されやすいのですが、両番組は放送日が違います。

『青春ド真中!』は、『青春とはなんだ』から始まる、日本テレビの青春学園ドラマシリーズのの流れを汲んだ作品であり、『ゆうひが丘の総理大臣』は、どちらかというと学園も含めた、大岩雄二郎の人間ドラマという感があります。

『ゆうひが丘の総理大臣』はその前に放送された『青春ド真中!』と似ているという声もあるが実は似て非なるドラマという件
『ゆうひが丘の総理大臣』といえば漫画を原作としながらもほぼオリジナル化した中村雅俊の代表作。『青春ド真中!』が終了したクールから放送開始されました。両作品は設定や出演者が似ているので混同される方もおられますが似て非なるドラマと言えます。

それはともかくとして、今日は原作の漫画の中の一作をご紹介します。

大合本版(2)に収録されている『やさしく咲く花…どんな花?の巻』です。

本作は、ドラマ化されていない、原作だけでお目にかかれるストーリーです。

それだけに、ドラマとは一味違った、原作特有のテイストを堪能できる仕上がりになっています。

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日陰でこそ咲く花を日向に出してはいけない

朝のロードワークに勤しんでいる、ソーリこと大岩雄二郎。

走っているとき、横からザブっと水をかけられてしまいます。

「わーっ、ごめんなさい。こんな朝早く、人など通らないと思ったもので……って、ソーリ!」

水をかけたのは、教え子の原田名保子でした。

「うちのクラスの生徒じゃんかあ。制服着ていないと、感じが変わるもんだなあ。こんなに早く、掃除か?」

「は、はい……」

「えらいっ。見上げたもんだ。オレのクラスに生徒に、こんな真面目なやつがいるなんて。ホントに立派なやつというのは、カゲで人の10倍以上の努力はしているってことか」

「あ、いえ、そんな……。それはソーリご自身でしょ。だって、学校じゃボケーっとしちゃって、ぐうたらで何もしない人って感じだけど、ホントはちゃんと早朝マラソンで体を鍛えてる」

「いやいや、オレなんてダメ、まあお互いに頑張ろう。たはは、生徒に褒められちゃった」

また走り出すソーリ。

途中から、大宮、針山、山田の3悪ガキが合流します。

「おはよ、ソーリ。ファイト」

「おはよう。今朝も頑張ろう。……先行ってろ」

「何?」

「ションベン」

「おれもやろっ」

「おれもだど」

4人は、朝日に向かって放水開始。

「わーっ、気分いいなあ」

と言っている4人のいる道路の下には、駅前派出所のおまわりさん。

気が付いた4人は、一目散に逃げます。

学校では、花瓶にいけてある花が話題に。

「へーっ、今朝も新しい花じゃんか。それに、机の上も毎朝、きれいにふいてあるし、結構結構」と、ソーリ。

「問題ばかり引き起こす、わが3のDで、他のクラスにほこれるのはこれだけだもんな。この偉い人は誰だ?」

ざわざわしたものの、結局誰かわからず。

「まっ、いいや。悪いことをコソコソやられたんじゃ困るけど、いいことなら、いいじゃん。はーい、学活、終わり」

と、その場は引き取るソーリ。

生徒が教室を出ていくときに、原田に声をかけます。

「今朝は驚いたぞ。しかし、お前は相変わらず静かだな。気をつけてないとわかんないもんな。でも、授業だけでも、もっと積極的にやらなくちゃな」

「ごめんなさい」

ガクッとするソーリ。

「だからさあ、別に怒ってるわけじゃないんだって」

「はい」

教員室でも、ソーリは彼女のことを話題にします。

「……てなわけで、いい子なんだけど、どーもファイトがないんだよな」

「そうですねえ、原田さんは成績も中どころで、代わり映えしないですけどね」と櫻子先生。

「ぼくの社会科も同じです」と木念。

ドラマでは数学の先生でしたが、原作では多野木念は社会科の先生なのです。

ちなみに、妻帯者で娘もいます。

「ふーん。キャンプとか臨海学校にも参加してないなあ。あれ……?あいつの家は6丁目だから、スーパーの近くじゃなかったんだ。だったら、どうしてあんなところで掃除を……」

「バイトじゃないんですか。高校生だと偽ってやっている生徒もいるらしいですよ」と木念。

「いや、父親は役付きの公務員だし……。」

「変ですねえ」と櫻子先生。

ソーリは、原田名保子の家を家庭訪問することにしました。

「参加していない?まあ、そんなはずはありませんわ。とっても楽しかったって帰ってきましたし。どういうことでしょう」と訝る母親。

そんなとき、弟が帰ってきます。

「いいグローブとバットじゃんかあ」とソーリが褒めると、孝もまんざらでもなさそう。

「孝、どうしたの……そのグローブとバット」と母親。

「まあ、いいじゃんかー」と言葉を濁す孝。

母親も知らないものだったようです。

「ちょっと孝……。まあ父親にでも買ってもらったんでしょう。……あら、名保子のことでしたね。どこへ言ったんでしょう。帰ってきたら問いただして……」

何かを感じたのか、ソーリはここで引きます。

「いや、彼女なりの考えがあってのことでしょうから、しばらく様子を見ましょう」

すると、ここで母親は重大なことを打ち明けます。

「……先生、実は、あの子は私どもの実子ではないのです。だからでしょうか、時々困ることも。夫の兄の子でして、両親が交通事故で亡くなり、私どもで引き取ったわけです」

「そうすか……」

次の日の朝、ソーリは、花瓶の花や、教室の掃除が誰によるものかを確認するために早出します。

まあ、だいたい見当はついているんですけどね。

案の定、それを行っていたのは、原田名保子でした。

ソーリは、朝の学活で、さっそくそれを公表しようとします。

「縁の下の力持ちって、知ってるな。人目のつかないとこで、みんなのために力いっぱい頑張って、いつか花が咲くということだ。……原田、立て」

「……あ、あの、私」

いいからいいからと、ソーリは促します。

「そこにある花……」

「……ソーリ!」

「毎朝、みんなの机がきれいなのも……」

「やめて、ソーリ」

原田名保子は、精一杯、押し出すように声を出しますが、すでに泣き声になっています。

「みんな原田が……」

「やめてくださーい」

「いいからいいから。それだけじゃない。原田は……」

やめて、お願い!

見ると、原田名保子は、大粒の涙を流しています。

「お……おい」

「わあ~、泣~かした。ソーリが女の子を泣かした」と大宮。

いっけねえ。ヘマやっちゃったらしいぞ。

ソーリらしくないミステイクです。

別の日の朝。

例のスーパーで、原田名保子は掃除をしています。

「こんなに早くやってくれる人がいないんで、本当に助かるよ。はい、今月の給料」

「ありがとうございます」

その様子を目撃したソーリ。

「ソーリ。あの、わたし……」

「あっ、おれは、お前なんか知らないし、見たこともない。きっと高校生だろうな。だって、中学生はバイトしちゃいけないもんな。……あっ、そうだ。どこかの男の子が、バットとグローブ、すっごく喜んでいたっけな」

「ソーリ。ソーリ。ゴホッゴホッ」

何かを言おうとして咳をした原田名保子は、その日、学校を休みました。

「大岩先生。今、原田さんのお母さんから電話があって、熱があるから休みますって」と櫻子先生。

原田名保子は無理していたのか、次の日も、その次の日も欠席です。

すると、花瓶の花は枯れ、教室もだんだん汚れてきました。

「あの、原田さん、今日もお休みです」と、青田のり子。

ドラマでは、ロングヘアの小川ユキさんでしたが、原作では眼鏡でポニーテールです。

ソーリは、『若草物語』の話を始めます。

「『若草物語』の中で、作者のオルコットはこんなふうに言っている。
世の中には、いつも部屋の隅っこにいて、必要があるまで動かない。そんな女の子がいるもんだって。
普段は、彼女の存在などまるで気づかないんでが、ふといなくなったとき、彼女の存在の大きさに、はじめてみんな気づく。
原田って…若草物語に出てくる、三女の(エリザ)ベスのような女の子なんだ」

しばし沈黙の後、大宮次男が言います。

「俺たち、縁の下の力持ちの意味がわかったよ」

「原田さんが、そんなに私たちのことを思ってくれていたなんて」と青田のり子。

「みんなで、お見舞いにいきましょう」と麻丘陽子。

面長の彼女は、ドラマの小川菜摘さんとは少しイメージが違うかな。

「おーい、みんな。見舞金のカンパをたのむぜ」と大宮次男。

生徒たちは口々に、何をしよう、アレを持っていこうと提案し合います。

が、1回失敗しているソーリは、「おい、ちょっとまて。そういうことはやめよう」と戒めます。

「そいつは、原田にとって、一方的な押し付けにならないか。日陰でひっそり咲いていた花を、無理やり日向に出してみろ。たちまち枯れちゃうよ。人間には、生まれつきの性格がある。彼女に、どれが一番いい方法か、よーく考え、それから行動してこそ、本当の友情だろう」

ソーリも、学習したのです。

結局、生徒たちは普段どおりの生活をすることにしました。

次の日、原田名保子は、風邪が治って投降しましたが、3Dはいつもと変化なく、相変わらず騒がしい日々でした。

身の丈にあった生きがいが本人にとって何より

『若草物語』が引かれていますが、同作は、作者のオルコットの自伝といわれています。

三女の(エリザ)ベスは、薄幸なまま亡くなっています。

その彼女を例に出し、日陰で咲く花を日向に出してはいけない、というモチーフでまとめたところに、著者の厳しい人生観が感じられます。

薄幸な人が、脚光を浴びなかったとしても、それもまた人生なんだ、と言っているようですね。

カゲで努力していれば、いつか脚光を浴びる、なんて安易なまとめ方はせず、それどころか、逆にそれは本人にとってもいいことではない、という展開は、ハッピーエンドではないけれど、なるほどなあと思いました。

そこで、「それはアタシがやりました」なんて名乗るのはもちろん、誰かにバラされたとしても、それが原田名保子によるものだと公然としたら、彼女はそれを行う人ということなってしまい、本人は見返りも求めず自分の意志でやっているのに、「人気取りだ」「偽善だ」といった陰口も出てくるでしょう。

杉良太郎さんが、被災地の炊き出しをすると、必ずそういわれるじゃないですか。

大衆ってそんなもんなんですよ。

一人の生徒にそんなことさせていいのか、高校生でもないのにアルバイトしていいのか、なんて、PTAが騒いで邪魔をするかもしれません。

本人が、身の丈にあった生きがいをそこに見つけたのなら、黙って見守ることが周囲の思いやりではないか、という話ですね。

ドラマは、室生犀星をモチーフとしていましたが、

ゆうひが丘の総理大臣は望月あきらの漫画作品でしたが中村雅俊版のテレビドラマは室生犀星がモデルに見える作り方です
ゆうひが丘の総理大臣(1978年10月11日~1979年10月10日、ユニオン映画/NTV)という中村雅俊主演の人気ドラマが有りました。原作は望月あきらによる漫画作品でしたが、中村雅俊のキャラクターに合わせてテレビドラマ独自のアレンジが行われています。

本作では『若草物語』を使ったというのは、なかなか興味深いと思い、ご紹介しました。

以上、ゆうひが丘の総理大臣 やさしく咲く花…どんな花?の巻(望月あきら著、オフィス漫)は、大合本版(2)に収録された屈指の秀作、でした。

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