化学物質過敏症の症状や苦悩を漫画化したのは、『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』(なかのゆみ)です。

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化学物質過敏症の症状や苦悩を漫画化したのは、『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』(なかのゆみ)です。

化学物質過敏症の症状や苦悩を漫画化したのは、『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』(なかのゆみ)です。併せて、アナフィラキシー症候群、脳脊髄液減少症、食物アレルギーについても漫画化した全17巻の読み物です。

『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』では、タイトル通り、身近な毒物によって起こる、地味ですがこんにち深刻になっている現代病を、なかのゆみさんが笠倉出版社から漫画化しています。

家庭サスペンスというシリーズ名がついた全17巻のうちのひとつです。

この記事では、kindle版をもとにご紹介しています。

本書の内容は、次のようになっています。

  • 隔絶【化学物質過敏症】
  • 呼吸停止【アナフィラキシー症候群】
  • 穴のあいた体【脳脊髄液減少症】
  • 錆びない心【食物アレルギー】

その中で、化学物質過敏症について描いている『隔絶』を、今回はご紹介します。

本書は2023年1月11日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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部屋中アルミ箔にして……

「化学物質過敏症」というサブタイトルが付いています。

主人公の花岡真美は13歳。

学校の部活で油絵を描いています。

ところが、ムカムカして気分が悪くなりました。

頭痛がして息苦しくなり、めまいがして倒れてしまいました。

保健室で寝ていても、消毒の匂いに吐き気がする。

熱もある。

翌日病院へ。

最初の病院での診断は「風邪」でした。

家に帰って寝ていると、また息苦しくなる。

両親が、やっと手に入れてくれた新築のマイホーム。

でも、前のマンションのほうが良かったわ。

空気不足のような気がして苦しい。

頭も痛くて吐きそう。

食欲もない。

風邪なら、一晩、二晩寝れば回復すると思いますが、真美は10日たってもよくならない。

熱も下がらない。

食欲も戻らない。

父親が言います。

「明日、違う病院に行ってみるか」

「だるくて何もしたくないわ」

「お母さん、日曜出勤でいないから、アイスでも買ってきてあげるよ」

留守中に、ピンポーン。

真美が、やっとのことで出ると、同級生の寺島でした。

「部活で倒れて以来、ずーっと学校に来ていないからどうしたのかと思ってさ」

またしても真美は目眩がし、一瞬寺島に抱きついてしまいます。

そして、吐き気をもよおして、寺島をどんと突き飛ばします。

「痛いよ。突き飛ばすことないだろう」

「シャンプーした髪にムースをつけてるでしょ。私、においに激しく反応するんだわ。刺激が凄まじい。近寄らないで」

えー、寺島くんは、女の子の家に行くのに、精一杯おしゃれしてきたんじやないの?

それを、そんな事言われるなんてねえ。

「おいおい、それはないだろう。美術室に置きっぱなしの油絵の具を持ってきてやったのに」

すると、真美は、そんなモノいらない、あげる、とまで言います。

これは尋常ではありません。

真美は別の病院に行きます。

「目眩や吐き気、汗をかいて眠れないとか、だるくて食欲がなく、筋肉痛や頭痛があり、とてもイライラするんです」

それに対して医師の診断は、「自律神経失調症」でした。

しかし、まだ真美はなんとなくスッキリしません。

何しろ、帰り道に、母親の化粧の匂いで鼻血が出るほどです。

今度は、アレルギー専門の病院に行きます。

そして、やっと「化学物質過敏症」の診断がくだされます。

つまり、漫画は何を描いているかというと、病院に行けば解決、というものではなく、診断そのものがむずかしい、なかなかわかってもらえない、ということです。

漫画では、重症の場合、着られる服もなく、使える生活用品もないといいます。

化学物質過敏症は、それ自体で命を脅かすわけではありません。

しかし、日常生活の服や化粧や生活用品や部屋の匂いで呼吸困難にまでなる生活というのは、日々をストレスなく快適に送ることができません。

何をしても、心と体が休まらないということです。

しかも、朝から晩まで。

地味ですが、恐ろしい症状です。

真美の場合、新居への引っ越しが原因でした。

新しい建材が良くないと医師は言います。

一番いいのは、化学物質ができるだけ少ない環境へ転地療養すること。

しかし、実際にはなかなかむずかしいですね。

医師は、アルミ箔で部屋中を澱粉糊を使って覆うことを提案します。

いやー、それはまたすごいことです。

いつもアルミ箔に囲まれた生活。

それはそれで、今度は精神がイカれそうです。

そして、汗を流すことを勧められます。

真美の食べ物は、無農薬に徹します。

庭に、真美の部屋を作り直します。

母親は、娘のことで仕事を休みがちなので、パートを解雇されてしまいました。

父親はタバコを辞めました。

両親の協力も、もちろん必要なのです。

級友の激励の手紙のFaxも、インクの匂いが駄目なので咳き込みます。

新しい真美の部屋に置くパソコンやテレビは、いったん外で陰干しして匂いを取りました。

大きな窓をつけて、友人とは窓越しに話をできるようにしました。

隣との関係も悪くなります。

庭の手入れやDIYにも、化学的「匂い」はあるからです。

そして、自分が原因の迷惑と感じた真美は、カミソリで手首を……

喫煙者のあなたにも責任がある!

化学物質過敏症というと、精神的に病んでいる人の「神経質なだけの病気」と思いこんでいる大衆がいます。

しかし、決してそうではないのです。

れっきとした、環境問題の反映とも言える「環境病」であることを本書は訴えています。

自殺を試みたものの、一命をとりとめた真美に、母親は言います。

「私なんか、生きていても意味がないのに」

「馬鹿なこと言わないで、真美には生きている意味があるのよ。なんでもかんでも便利な世の中にしてしまい、化学物質で地球が溢れてしまっていることを、真美は警告してくれているの。環境へ細心の気配りをするように、真美は今の社会に訴えるために生まれてきたのよ」

まあ、重い使命感は本人にはプレッシャーですが、そういうことですよね。

実は、私も受動喫煙が原因で、タバコなんか吸っているはずがないスーパーなどでも、息苦しくなることがあります。

そういう意味では環境病ではあるけれど、決して建材だけの問題ではないんですね。

喫煙権なんてものを振り回して、「喫煙の自由」を声高に叫ぶ人は、そのへんも考えてくださいね。

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集
『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。人間はいつ誰がそうなるかわからないし、そうなってもおかしくない。そんな厳しい人生の偶然を考えさせてくれます。

全17冊にわたり、認定されている難病、まだ認定されていない難病、そして障害などと向き合う家族の話を描いています。

一話完結で、1冊あたり3~5話が収録されています。

本書が話題にしたものだけでも、これだけあるのです。

世の中には、この何倍も難病や障害があります。

知らないばかりにその人を誤解していた、ということもあるので、こうした物語は理解を助けてくれます。

全17巻で完結と言わず、続編に期待したいと思います。

以上、化学物質過敏症の症状や苦悩を漫画化したのは、『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』(なかのゆみ)です。でした。

難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~ 2巻 (家庭サスペンス) - なかのゆみ
難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~ 2巻 (家庭サスペンス) – なかのゆみ

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