松川事件(1949年)などに言及するのは、戦慄の未解決ミステリー88 殺ったのは誰だ?(鉄人ノンフィクション編集部編著、鉄人社)

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松川事件(1949年)などに言及するのは、戦慄の未解決ミステリー88 殺ったのは誰だ?(鉄人ノンフィクション編集部編著、鉄人社)

松川事件(1949年)などに言及するのは、戦慄の未解決ミステリー88 殺ったのは誰だ?(鉄人ノンフィクション編集部編著、鉄人社)です。国内だけでなく海外の未解決殺人・行方不明事件を中心に、見開き単位で合計88事件を紹介し論考しています。

松川事件(1949年)は、1949年に福島県にある国鉄東北本線松川駅ー金谷川駅間で起こった、鉄道のレール外しによる 蒸気機関車脱線転覆事件です。

国鉄労組と東芝労組が首切り反対で共闘している頃であり、事件の翌日には増田甲子七内閣官房長官が、下山事件、三鷹事件と「思想底流において同じものである」と談話を発表。

要するに、日本共産党など左翼的人物の仕業である、という前提で警察・検察も動きました。

別件逮捕や自白の強要等何でもありで、20名が逮捕・起訴。

高裁でも死刑その他有罪判決が出たものの、捜査機関のアリバイ隠しがバレて差し戻しなど裁判は14年にわたりました。

そして、結局全員が無罪になり、事件は時効に。

こういう、政治的反対者を孤立・弾圧するでっちあげをフレームアップといいます。

そうした未解決事件、謎の事件を88事件もまとめたのが、戦慄の未解決ミステリー88 殺ったのは誰だ?(鉄人ノンフィクション編集部編著、鉄人社)です。

本記事ではKindle版をご紹介しています。

本書は2022年9月28日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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国内外の謎、陰謀事件など88事件

本書『戦慄の未解決ミステリー88 殺ったのは誰だ?』の最大の特徴は、国内だけでなく国外の未解決事件も取り上げていることです。

目次からご紹介します。

戦慄の未解決ミステリー88
目次

第1章 殺ったのは誰だ?
8 殺人家族 「ベンダー家」事件
12 オースティンの斧男事件
16 青ゲット殺人事件
18 キングズベリー・ランの屠殺者事件
22 キュッリッキ・サーリ殺人事件
24 ジャン・タウンゼント殺害事件
26 キャロリン・ヴァシレフスキー殺害事件
28 グライムス姉妹殺人事件
30 ボーレス一家殺人事件
32 ドゥドラー事件
36 オクラホマキャンプ少女三人惨殺事件
40 ゲオルギー・マルコフ毒殺事件
42 レッドヘッド・マーダーズ事件
46 オーチャードパーク連続殺人事件
48 大分みどり荘事件
50 デボラ・リンズレー殺害事件
52 長崎屋尼崎店放火殺人事件
54 ヨーグルトショップ殺人事件
56 阪和銀行副頭取射殺事件
58 千葉市都立高校教諭強盗殺人
60 川崎信金猟銃強盗殺人事件
62 デイトナビーチ連続殺人事件
64 弁護士ロバート・ウォン殺害事件
66 京都精華大学生通り魔殺人事件
68 レインボー・マニアック連続殺人事件
70 代々木一丁目書店事務所内強盗殺人事件
74 金沢市久安独身男性殺人事件
76 板橋資産家夫婦放火殺人事件
78 ロングアイランド売春婦連続殺人事件
82 荒川区路上男性会社員刺殺事件
84 サン一家殺害事件
86 中国陝西省OL殺害事件
88 大分県宇佐市母子殺害事

第2章 MISSING/消失
92 ノーフォーク連隊集団失踪事件
94 ニューヨーク州最高裁判事失踪事件
96 イタリア人天才物理学者失踪事件
98 マージョリー・ウェスト失踪事件
102 アメリカ人元有名少女作家失踪事件
104 ロックフェラー家御曹司失踪事件
108 フライング・タイガー・ライン739便失踪事故
110 リン・シュルツ失踪
112 ジミー・ホッファ失踪事件
116 フレデリック・ヴァレンティッヒ失踪事件
118 ナイリーン・マーシャル失踪事件
122 「水戸の梅むすめ」 失踪事件
124 マリーナ・チルドレス失踪事件
128 野村香ちゃん失踪事件
130 佐久間奈々さん誘拐失踪事件
132 リッチー・エドワーズ失踪事件
134 赤城神社主婦失踪事件
135 マシュー・ペンダーグラスト失踪事件
138 ブリアンナ・メートランド失踪事件
142 ジョー・ピッチラー失踪事件
144 マデリン・マクカーン失踪事件
148 ひるがの高原キャンプ場女児不明事件
152 大分県日出町主婦失踪事件
154 北海道旭川中1男児行方不明事件
156 メキシコ・イグアラ市学生集団失踪事件
160 大分女性会社員失踪事件
162 山梨キャンプ場小1女児失踪事件

第3章 残された謎
168 宝の隠し場所を示した「ビール暗号」
172 メアリー・セレスト号
174 オーストリア皇太子情死事件
178 誰がセイヨウハルニレにベラを入れ
182 メアリー・ジェーン・バーカー事件
184 介良小型UFO捕獲事件
186 女優ナタリー・ウッド不審死事件
190 マックス・ヘッドルーム事件
192 福島女性教員宅便槽?怪死事件
194 リッキー・マコーミックの暗号メモ
196 シャーロック・ホームズ研究家変死事件
200 バンクーバー「市営バス9」事件
202 売れっ子金融ライター飛び降り自殺事件
208 ピーター・バーグマン事件
212 驚異の双子村「ヴェリカヤ・コパンヤ」
214 ノラ・クォイリン失踪・遺体発見事件

第4章 陰謀の影
218 国鉄三大ミステリー① 下山事件
222 国鉄三大ミステリー② 三鷹事件
226 アカ国鉄三大ミステリー③ 松川事件
230 呪われたパン事件
232 ハマーショルド国連事務総長搭乗機墜落事故
236 ジェラルド・ブル暗殺事件
238 クリントン元大統領夫妻の関係者44人が不可解な死を遂げている
242 ダイアナ元妃事故死陰謀説
246 アメリカ同時多発テロ事件自作自演説
252 女性記者ブリ・ペイトン急死事件

国外の方は、正直なところ事件名を聞いただけではよくわからないのですが、だからこそ、このようなミステリアスな事件が起こったのだ、ということを初めて知ることができます。

「アメリカがやって共産党のせいにした」 国鉄三大ミステリーのひとつ

松川事件について、本書の要約からご紹介します。

松川事件は、「国鉄三大ミステリー事件」として、下山事件、三鷹事件、松川事件のひとつとして知られています。

本書では、「アメリカがやって共産党のせいにした」 国鉄三大ミステリーと題しています。

1949年8月7日午前3時9分頃、青森発上野行きの国鉄東北本線上り旅客列車が福島県信夫郡 (現在の福島市北五老内町) の金谷川駅ー松川駅間のカーブに差しかかったとき、 先頭機関車が脱線転覆。

続く荷物車や郵便車など5両も脱線し、乗務員3人が死亡しました。

前述のように、松川事件です。

現場検証では、事故現場付近のレールの継ぎ目部に使われていたボルトやナットが緩められ、継ぎ目板が外されていたことが判明。

そして、レールを枕木の上に固定する犬釘が抜かれ、長さ5メートル、 重さ925キロもあるレールが1本、線路から3メートルも離れたところに何の破損もなく真っ直ぐな形のまま、あたかも誰かがそこに運んできたかのように置かれていたといいます。

人為的な事故であることは想像がつきます。

証拠には、犬釘を外すために使われたと思しきバールとスパナが1本ずつ、付近の稲田 の中から発見されました。

警察は最初から、この事件を大量人員整理に反対した国鉄労働 組合(国労)と、東芝松川工場(現・北芝電機)労働組合との共同謀議による犯行と決めつけて捜査しました。

まず、事件当夜に事故現場付近にいた元国鉄線路工の少年(当時8歳)を別件逮捕し、脅迫や拷問まがいの取り調べで自供させます。

そこから共犯者として、国労員と東芝労組員の幹部など合わせて20人が逮捕・起訴された。

しかし、裁判が進むうちに当局のでっち上げが明らかに。

いったん自白をした人たちも、公判では否認に転じ、時には被告が自ら反対尋問に立って自分を責め立てた捜査官に反問するなどしました。

その後、宇野浩二、吉川英治、川端康成、志賀直哉、武者小路実篤、松本清張、佐多稲子、壺井栄ら作家・知識人による支援運動が発足するなど世間の注目が集まるなか、1959年8月、最高裁はついに二審判決を破棄。

1961年の差し戻し審では、被告全員に無罪判決が下され、1963年には最高裁が再上告を棄却、被告全員の無罪が確定。

1970年には国に賠償責任を認める判断を下しました。

つまり、警察・検察が100%捏造した起訴だったわけです。

しかし、そうするとまた事件は原点に返ります。

犯人は誰だったのか。

山本薩夫監督が2作品映画化

松川事件については、日本共産党員であることを隠さなかった山本薩夫監督が、映画を2本撮っています。

ひとつは、ドキュメンタリータッチで描き、もうひとつは娯楽映画風な作りの中で、推理したことをストーリーに組み込んでいます。

どちらもご紹介します。

『松川事件』(1961年、松川事件劇映画製作委員会)

ひとつは、タイトルもズバリ『松川事件』(1961年、松川事件劇映画製作委員会)。

1961年、松川事件劇映画製作委員会

事件の進行にそってドキュメンタリータッチで、高裁判決までを描きました。

制作費をカンパでまかない、多くの劇団が協力。

主演の宇野重吉は、出演料全額を松川事件対策協議会にカンパしたといわれています。

脚本は新藤兼人ほか。

出演は、宇野重吉、宇津井健、千田是也、下元勉、北林谷栄、永井智雄、加藤嘉など、“そういう映画”にあり得るキャストが並ぶのですが、被告人の弁護人役に抜擢されている宇津井建はいささか意外でした。

宇津井健

ずいぶん昔、日本共産党の機関紙『赤旗』のインタビューで、「汚職のない清潔な日本共産党に政権をとってもらいたい」と、同党にエールを送っていたことがありました。

ですから、イデオロギーというより、「高潔」「真面目」という、俳優・宇津井健らしい価値観から、同党の支持者だったのかもしれません。

本作を観ると、警察が、いかにでたらめな取り調べと調書の作成をしていたかがよくわかります。

刑事を演じている、西村晃や永井智雄や殿山泰司や稲葉義男などが、巧いんですね。

高慢ちきだったりうさんくさかったりして。誰がどれにあたるかは書きませんが(笑)

『にっぽん泥棒物語』(1965年、東映)

『にっぽん泥棒物語』(1965年、東映)は、当時目撃された「9人の大男」を真犯人と推理したストーリーですが、創作娯楽映画として作られています。

『にっぽん泥棒物語』(1965年、東映)

主演は三國連太郎。

林田義助(三國連太郎)は、表の職業(?)は、歯科医だった父親の見よう見まねの無免許歯科医。

裏の顔は、土蔵に穴を開けて品物をリレーで運び出し、現金に代える“破蔵師”です。

所帯を持った芸者桃子(市原悦子)のお里帰りに、持たせた手土産が盗品だったことから足がついて4度目の拘置所へ。

いったん仮釈放となった義助は、“仕事”に失敗して線路伝いに逃げたとき、9人の大男とすれちがいました。

夜が明け、駅付近で列車転覆事件(松川事件)が起ったことを知ります。

犯人はその9人の大男らしい。

懲役4年の判決を受けた義助(三國連太郎)は、福島刑務所で、列車転覆事件で収監された木村(鈴木瑞穂)ら3人と知り合います。

義助(三國連太郎)は、彼らが自分の見た大男たちとは違うので、列車転覆事件(松川事件)が冤罪であると気づきます。

義助(三國連太郎)は出所後、命を助けた縁で、高橋はな(佐久間良子)と結婚して落ち着いていましたが、彼とは旧知の安東警部補(伊藤雄之助)に、居所を突き止められてしまいます。

安東警部補(伊藤雄之助)は、義助(三國連太郎)が目撃したことを言われると都合が悪いと考えます。

為政者・警察・検察は、犯人は3人としていたからです。

そこで警部補は、もし義助が「9人の大男」のことを口外したら、時効になった昔の事件をわざわざ女房のはなに話して過去をバラすと恫喝します。

一方、木村(鈴木瑞穂)らの弁護士(加藤嘉、千葉真一)や、彼らを応援する新聞記者(室田日出男)は、義助(三國連太郎)に、裁判で証言してほしいと何度も頼みます。

安東警部補に脅されて、それを断ってきた義助ですが、木村と再会。

木村の息子を見ているうちに、やはり証言しようという気になります。

そして、クライマックスは法廷シーンです。

東北高等裁判所で義助(三國連太郎)は、洗いざらいぶちまけます。

検事(加藤武)は、証言の信憑性をイメージ的に損ねようと、彼が破蔵師であることを根掘り葉掘り質問するのですが、義助(三國連太郎)の説明がユーモラスで法廷は笑いの渦に。

法廷は笑いの渦に

それでいて、家族の話になると、シンミリさせて、もう法廷はすっかり義助(三國連太郎)の一人舞台。

裁判官(永井智雄)は、義助の証言を全面的に採用し、全員無罪となります。

どちらもすばらしい作品なので、ぜひご覧いただきたいですね。

当時の日本はアメリカ占領下にあった

『にっぽん泥棒物語』にも「大男」と描かれたように、真犯人はアメリカ(人)というのは、どうやら定説になっているようです。

しかし、当時の日本はアメリカ占領下にあり、調査も満足にできませんでした。

たとえば、帝銀事件もそうした背景をもっています。

帝銀事件といえば、戦後犯罪史上に残る今も謎の大事件。それをを漫画化したのが佐藤まさあきさんの『実録昭和猟奇事件5』です。
帝銀事件といえば、戦後犯罪史上に残る今も謎の大事件。それをを漫画化したのが佐藤まさあきさんの『実録昭和猟奇事件5』です。実録漫画はたいてい原作者が別にいますが、本作は佐藤まさあきさん自身が取材を重ねて事件を追体験して描いた作品です。

太平洋戦争後の混乱期、GHQの占領下で起きた事件であり、謎は今も解明されていません。

つまり、平沢元死刑囚の犯行ではなく、またたんなる容疑者を間違えた冤罪でもなく、実はGHQがなにか真相を知っていたのではないか、という疑問を今も多くの人が抱いているということです。

いまだに、全国にアメリカの軍事基地がある日本。

実はこうした事件は、必ずしも「戦後のドサクサ」でなくてもあり得る可能性を残しています。

以上、松川事件(1949年)などに言及するのは、戦慄の未解決ミステリー88 殺ったのは誰だ?(鉄人ノンフィクション編集部編著、鉄人社)、でした。

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