MMT〈現代貨幣理論〉とは何か日本を救う反緊縮理論 (角川新書) は、誤解や憶測が飛び交うMMTの全貌を入門者にもわかるよう網羅

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MMT〈現代貨幣理論〉とは何か日本を救う反緊縮理論 (角川新書) は、誤解や憶測が飛び交うMMTの全貌を入門者にもわかるよう網羅

MMT〈現代貨幣理論〉とは何か日本を救う反緊縮理論 (角川新書) は、誤解や憶測が飛び交うMMTの全貌を入門者にもわかるよう網羅した書籍です。MMTの貨幣論、政策論、日本経済における具体的な政策ビジョンまで、全3部9章で構成されています。

『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か』は、島倉原さんがKADOKAWAから上梓しました。

『日本を救う反緊縮理論』というサブタイトルがついています。

本書はKindle版をご紹介します。

MMT(現代貨幣理論)は、ケインズ理論などをルーツとする、比較的新しいマクロ経済理論です。

MMTについての書籍は、これまでにも何度かご紹介しましたが、本書はその集大成と言えるほど多くの論考を網羅しています。

表紙の帯には、藤井聡さんがメッセージを寄せています。

「財務省が今、最も恐れるMMT。本書こそまさしくその本格入門書だ!」

Amazonの販売ページにも、こう宣伝されています。

誤解や憶測が飛び交う中で、果たしてその実態はいかなるものなのか?
根底の貨幣論から具体的な政策ビジョンまで、この本一冊でMMTの全貌が明らかに!

本書は2022年10月03日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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日本では、アメリカ以上にMMTについて注目されつつある

本書『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か』の「はじめに」から見ていきます。

貨幣や財政に関するその独特の主張から、経済学界では「異端の中の異端」といった扱いを受けているのがMMT(現代貨幣理論)。

しかし、2007年に勃発した世界金融危機(リーマンショック)をきっかけに、経済政策のあり方を大きく見直す機運が世界的に生じ、MMTに対する注目度が高まっていると、本書『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か』はいいます。

こうした流れは決して一過性ではなく、新型コロナ禍や米中対立をはじめとした国際情勢の緊迫化にも後押しされ、長期的、不可逆的なものになると思われる、とも。

日本では、アメリカ以上にMMTについて注目されつつあるといいます。

しかし、「大物主流派経済学者や政策関係者たちから批判の集中砲火を浴びてい」るのは国内外の共通した実情です。

新しいもの、しかもそれまでとは180度違うものに対して、抵抗感があるんでしょうね。

しかし、本書はいいます。

なぜ、有力者から軒並み批判されるMMTが、アメリカ以上に日本で注目を浴びているのでしょうか。

それは、MMTが主流派経済学に基づいた多くの常識をひっくり返すと同時に、長期停滞する日本経済の実態を解明し、かつ解決の処方箋を提示し得るだけのパワーを秘めた経済理論だからです。

MMTは、経済学のテキストにありがちな複雑な数式もほとんど使われておらず、その論理は極めてシンプルですが、経済活動に欠かせない「貨幣」について根本的に探求することで、 主流派経済学とは全く違った前提に立った理論となっているといいます。

けだし、私は経済学を勉強したいと思っても、どこから入ったらいいのかわからないこととともに、まさに「複雑な数式」にも怖気づいていたところがあったかもしれません。

また、MMT派の学者によって、日本はMMTの正しさを示す「非常に良い事例」と名指しされたこともあるでしょう。

本書はさらに、主流派経済学の発想にはない広い視野も持つことに よって、一見すると常識破りな、しかし言われてみれば納得せざるを 得ないような数々の結論を導き出しているとしています。

MMTは主流派経済学よりも現実に妥当したものである

本書の構成は、本文の説明から見ていきます。

本書は、全3部9章で構成されています。

第一部の『MMTの貨幣論』(第1章~第3章)では、現代の経済において重要な役割を果たしている「貨幣」についてのMMTの見方を解説。

それが、主流派経済学よりも現実に妥当したものであることを明らかにしています。

さらに、MMTの貨幣観を前提とした場合に、経済全体の中で政府がどのような機能を果たすかを解説し、「財政赤字は問題ではない」「税金は政府の財源ではない」といったMMTの有名な主張が、どのようにして導かれるかを明らかにします。

第一部 MMTの貨幣論
第一章 貨幣の本質
貨幣の定義/貨幣に関する三つの機能と「計算貨幣」/主流派経済学は「商品貨幣論」/商品貨幣論の問題点(一)/論理構造の欠陥/商品貨幣の問題点(ニ)ー物々交換経済の不在/商品貨幣論(三)ー「貴金属硬貨=効率的な交換媒体」論の非現実性/MMTは「信用貨幣論」/「割り符=貴金属硬貨の代用品」はありえない/貴金属硬貨も債務証書の一種だった/『貨幣国定学説』と表券主義/租税が貨幣を動かす/国定貨幣=国家を債務者とする特殊な信用貨幣

「主流派経済学の貨幣観は、まさしく地動説と天動説ほど異なるものなのです」といいます。

主流派って何?

本書に、直接の説明はありません。

新古典派経済学を基礎とする経済学なんですが、まあ、現在常識となっている経済学、ということでよいでしょう。

とにかく、現代の資本主義経済を動かす重要な要素である「貨幣」に対する両者の見解の著しい違いがあります。

税金が財源ではない
スペンディングファースト
信用創造
貨幣は貸し借りの情報(兌換貨幣ではなく商品貨幣)

こういったことが説明されています。

第二章 預金のメカニズム
預金も信用貨幣の一種/通貨供給が貸出と預金を生み出すーー主流派経済学は「外生的貨幣供給論」/中央銀行はマネーストックを制御できるーーー主流派経済学の「貨幣乗数理論」/銀行貸出が預金と通貨を生み出すーーMMTは「内生的貨幣供給論」/実務関係者が支持するのは内生的貨幣供給論/負債のピラミッド構造/ビットコインは貨幣か?/ ビットコインは貨幣ではないーーMMTの結論

第三章 主権通貨国における政府の機能
主権通貨とは何か/自国通貨建てであれば政府の支出能力には制限がない/支出能力に制限はないが、インフレが政府支出の制約となる/税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない/主権通貨国の財政オペレーション(一)ー統合政府のケース/主権通貨国の財政オペレーション(二)ー中央銀行が国債を引き受けるケース/主権通貨国の財政オペレーション (三)ー民間銀行が国債を引き受けるケース/現実に行われている「間接的な財政ファイナンス」/中央銀行の独立性は「手段の独立性」/政府の赤字支出は金 利を引き下げる/財政赤字が非政府部門の貯蓄を創造する/海外部門の国債保有は問題ではない/政府財政は赤字が正常

第二部 MMTの政策論
第四章 MMTの租税政策論
「MMT=無税国家論」ではない/租税の目的とは何か/悪い税(一)ー社会保障税/ 悪い税(二)ーー消費税/悪い税(三)ー法人税

第五章 機能的財政論
「完全雇用と物価安定」という公共目的/機能的財政と二つのルール/機能的財政と表券主義/機能的財政と為替相場制度
第六章 就業保証プログラム
裁量的財政政策に否定的なMMT/就業保証プログラムとは何か/就業保証プログラムの三つの意義/就業保証プログラムの問題点/就業保証プログラムの実例?ーー理論と現実とのギャップ/ベーシック・インカムや最低賃金制度との違い

第二部は、政府の経済政策はどうあるべきかについて、MMTの考え方を解説しています。

財源でない税金とはどうあるべきか。

財政破綻が問題ないのであれば財政はどのように運営されるべきなのか、といった内容です。

第三部 MMTから見た日本経済
第七章 日本は財政危機なのか
クルーグマンの機能的財政論批判/日本は非常に良い事例ーケルトンの反論/財政赤字は金利やインフレ率の上昇とは無関係/日本は財政危機ではないーーMMTと財務省のコ ンセンサス?/自国通貨建て債務でも国家は破綻する?ーサマーズの批判/デフォルトや通貨危機の真の原因は固定相場制ーMMTの結論

第八章 日本経済には何が必要なのか
企業の過少投資が主導する日本の長期デフレ/生産能力と人々の生活を破壊するデフレ・ スパイラル/金融政策よりも財政政策ーーケルトンの提言/金融政策こそ主要な政策手段ーークルーグマンの異論/金融政策の効果は乏しいーケルトンの反論/緊縮財政こそが長期デフレ不況の原因/量的緩和政策は何が問題なのか/デフレ不況を深刻化させる消費 税増税/「マクロ経済スライド」は緊縮財政の産物/機能的財政が「老後二○○○万円問題」を解決する

第九章 民主主義はインフレを制御できるのか
財政の民主的統制は難しい?/ケインズ型政策がスタグフレーションをもたらした?/マクロな視点が欠落した『赤字の民主主義』/民主的統制能力を示す現代の日本/スタグフレーションには複合的な対策をーーMMTのスタンス/民主主義はインフレを制御できるーーMMTのハイパーインフレ論/民主主義の不在が招いた日本の悲劇

第三部では、「MMTに対する主流派経済学からの批判を手がかりとして、長期にわたって成長が停滞し、かつ財政危機も喧伝されている日本経済の分析」を行っています。

結論を書くと、

日本は全く財政危機の状況にはないこと、
日本経済の長期停滞の原因が緊縮財政であること

などを明らかにしています。

おわりに――MMTをどのように生かすべきか
主流派経済学はなぜ間違えるのか/現実とも整合的なMMT/MMTの課題と展望/MMTの「実践」が求められる日本/「公益民主主義」の形成に向けて

「おわりに」では、MMTの展望ですね。

「経済理論としてのMMTの意義、そして課題についても述べた上で、日本においてMMTをどのように生かすべきなのか、筆者なりの見解」を述べています。

ビットコインはMMTから見て「適正価格はゼロである

具体的な内容ですが、ビットコインに触れられているので、要約しましょう。

ビットコインは、最近「お金」的な役割を果たすことで注目されています。

本書によれば、ブロックチェーンと呼ばれる、公開された分散型コンピュータネットワーク上にある、暗号化された記録です。

コンピューター上の記録なら、現金よりも預金と似た性質を持ちますが、銀行のような単一の管理者が存在しません。

それはすなわち、貨幣としての価値を何らかの形で保証する「債権者」が存在しませんし、納税にも使えません。

ですから、本書では、ビットコインに対する評価は厳しい。

「ビットコインは貨幣ではなく、その適正価格はゼロである」としています。

なぜなら、「信用貨幣」という貨幣の要件をそもそも満たしていないからだといいます。

そこには価値の裏付けとなる誰かの債務が存在せず、したがってその適正価格は必然的にゼロとなります。(中略)
結局、MMTに言わせれば、ビットコインが高値で取引されているのは、人々が「間抜けな他人をだまして渡すことができる(つまり、他人がもっとも高い価格で買ってくれる)」と思って一種のババ抜きゲームをしているからに過ぎません。当然ながら、そうした状況は決して長続きしないと見られています。

日本は仮想通貨の保有率が一番高いそうですが、この解説を読むと、なんか日本人てバカみたいですね(苦笑)

ということで、藤井聡さんは、「入門書」と書かれていますが、MMTの諸課題を網羅しているので、中級者以上のリファレンスマニュアルとしても十分有用な素晴らしい一冊だと思います。

みなさんも、いかがですか。

以上、MMT〈現代貨幣理論〉とは何か日本を救う反緊縮理論 (角川新書) は、誤解や憶測が飛び交うMMTの全貌を入門者にもわかるよう網羅、でした。

MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) - 島倉 原
MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) – 島倉 原

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