坊っちゃん(原作/夏目漱石、漫画・制作/Teamバンミカス)は、言わずとしれた国民的文豪・夏目漱石の代表作『坊っちゃん』を漫画化

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坊っちゃん(原作/夏目漱石、漫画・制作/Teamバンミカス)は、言わずとしれた国民的文豪・夏目漱石の代表作『坊っちゃん』を漫画化

坊っちゃん(原作/夏目漱石、漫画・制作/Teamバンミカス)は、言わずとしれた国民的文豪・夏目漱石の代表作『坊っちゃん』を漫画化。数学教師として赴任した四国・松山の中学校で、一筋縄ではいかない連中に立ち向かい自分を貫き通す江戸っ子の痛快活劇です。

まんがで読破シリーズ第57巻(全59巻)です。

まあ、今更改めてご紹介するまでもない、原作はテレビドラマ、映画化されて、おなじみではないかと思います。

無鉄砲で、バカ正直なゆえに家族とも衝突する坊っちゃんが、数学教師として赴任した四国・松山の中学校。

山嵐、赤シャツ、狸、野だいこ、うらなりなどのあだ名を付けた個性豊かなキャラクターとぶつかりあいます。

夏目漱石作品については、これまで、いくつかの作品をご紹介してきました。

『こころ』(夏目漱石/作、高橋ユキ/構成・作画、学研パブリッシング/秋水社)は、エゴと倫理観の葛藤を描いた小説の漫画化
『こころ』(夏目漱石/作、高橋ユキ/構成・作画、学研パブリッシング/秋水社)は、エゴと倫理観の葛藤を描いた小説の漫画化です。恋愛と友情の間に悩みながらも、友人よりも恋人を選択。自分自身をも信用できなくなった自己嫌悪の心理が描かれています。
明暗(原作/夏目漱石、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)は、人間の利己を追った長編小説で未完の絶筆
明暗(原作/夏目漱石、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)は、人間の利己を追った長編小説で未完の絶筆となりました。結婚した会社員で親から独立しているのに、なお仕送りを受け、以前に付き合っていた女性が忘れられない自己愛の強い男の話です。
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吾輩は猫である(原作/夏目漱石、脚色/杉本武、漫画/荒木浩之、剣名プロダクション)Kindle版は、夏目漱石の処女小説の漫画化です。猫の目から見た人間社会の滑稽さや欺瞞の描写は、人生が一切皆苦であるという仏教の精神に貫かれています。

旧制中学の生徒たちも一筋縄ではいかず、結局は赴任ひと月で辞表を出しますが、一筋縄ではいかない大人たちに立ち向かい、悩みながらも自分を貫き通す江戸っ子、坊っちゃんの痛快活劇は、夏目漱石の代表作といえるでしょう。

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松山の中学教師に赴任


子供の頃から無鉄砲な坊っちゃん。

父親とも兄とも関係が悪かったが、お手伝いの清だけは理屈抜きに自分をかばい、買いかぶってくれた。

しかし、清は士族の娘だったが没落して教育がなかった。

父親が亡くなると、ウマが合わない兄にしては「上出来」だったが、進学でも起業でも好きにしろと、応分の遺産をくれた。

もっとも、それ以来、2度と兄とは会っていない。

清は甥の家に厄介になることになった。

坊っちゃんは、物理学校(今の東京理科大?)を出て、松山の旧制中学に赴任した。

いきなり、ふんどし姿の「人夫」を見て嫌になった。

学校では、校長の建前が気に食わないから「やっぱりやめる」と言って引き止められた。

そして、教師陣は、山嵐、赤シャツ、狸、野だいこ、うらなり。

天ぷらそばや団子を食べると黒板に書かれ、寝床にはイナゴを入れられたりなど、生徒たちとは打ち解けなかった。

赤シャツは、うらなりの婚約者のマドンナをとった上に、うらなりを宮崎の中学校に送ったことで、坊っちゃんは頭にきた。

山嵐とは誤解があったが、それを解いてからは共闘した。

赤シャツに解雇された山嵐と一緒に、山嵐と腰巾着の野だいこを制裁を加えたが、警察は来なかった。

そのまま東京に帰り、月給は40円から25円に落ちたが、坊っちゃんを信じて待っていた清を引き取り新しい就職先を見つけた。

やはり、そこにあるのは浄土真宗ですね。

社会の非常さと人間の「凡小=愚かな凡夫」さが描かれています。

建前ばかりの狸に対する反発。

赤シャツのような文化人を気取る策士に対する批判。

野だいこのように力のあるものに媚びる人間に対する侮蔑。

うらなりのように、中途半端な賃上げを要求して遠隔地に飛ばされる無情さ。

そして、坊っちゃんや山嵐のような実直に怒りを見せる人間の、政治的な駆け引きの敗北。

ですから、決して作品は「坊っちゃん」を美化している勧善懲悪ではなく、実は坊っちゃんのような人間も理解している清こそか、人としてもっとも「善」なるものではないかを述べているのではないかと思います。

ただ、その清も「教育がない」人間として描かれています。

つまり、人間とは煩悩と無明(知恵がない)で「愚を生きる」(親鸞聖人御消息集)ものであると。

米山保三郎さんに捧げる清が真の主役の物語だった

近代文学は、実体験をベースにする半実話が多く、夏目漱石も例外ではありませんが、ただし本作のベースになるストーリーは創作と思われます。

夏目漱石の経歴を見ると、帝国大学に入り、さらに留学して師範学校にも入り、愛媛県尋常中学校でも教えていますが、専攻は英文学で、中学では英語を教えていますね。

そして、晩年は朝日新聞で働いています。

ただし、本作に登場する清の墓は、本文中通り、本当に文京区千駄木の養源寺(臨済宗妙心寺派)にあります。

清は玄関げんかん付きの家でなくっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎はいえんに罹かかって死んでしまった。死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋うめて下さい。お墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。だから清の墓は小日向の養源寺にある。

「えっ、では清のモデルはいたのか」

そうです。


そして、本文中最後の「だから」には、深い意味があります。

夏目漱石は、一高時代は理系(建築)に進みたかったのですが、同級生・米山保三郎の勧めで文学に方針変更。

それほど米山保三郎の存在は、夏目漱石にとって大きかったのでしょう。

同級生の正岡子規も、米山保三郎の影響を受けて作家になりました。

その米山保三郎は、『こころ』のモデル(K)にもなったといわれています。

そして、米山保三郎の祖母こそが清なのです。

米山保三郎の墓が養源寺にあるのです。


「清と坊っちゃんとの間の情愛は、漱石と米山との間の情愛と相似だろう。」(https://blog.goo.ne.jp/faure64/e/521ba9972d562f71ccc6e6f44329f412)という指摘もあるように、実は『坊っちゃん』は、米山保三郎に捧げる、清が真の主役の物語だったと私は思っています。

そう考えると、夏目漱石の生き様を知る上で、実に興味深い作品です。

以上、坊っちゃん(原作/夏目漱石、漫画・制作/Teamバンミカス)は、言わずとしれた国民的文豪・夏目漱石の代表作『坊っちゃん』を漫画化、でした。

坊っちゃん (まんがで読破) - 夏目漱石, Teamバンミカス
坊っちゃん (まんがで読破) – 夏目漱石, Teamバンミカス

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