
外国人が増えたことで治安は悪くなったか。「日本人ファースト」という「排外主義」が今回の選挙の争点のひとつともいわれています。2020年6月末時点の在留外国人数は約289万人、日本の総人口は約1億2600万人(統計局ホームページ)今や45人に1人が外国人の国になりました。
外国人が増えたことで、治安が悪くなったかどうかが論争になっています。
まあ、ここでいう「外国人」は、1に中国、2に韓国、3に東南アジアで、アメリカやヨーロッパではないのですが……。
一般に、外国人の犯罪数の方が日本人より多いという統計はない、といわれていますが、
「外国人が増えて日本の治安が悪化してきた」
と言ってる人に見せて欲しい表(国立社会保障・人口問題研究所の是川夕博士作)??
確かに中長期に日本に滞在する外国人は急増してるけど、刑法犯は大幅減少。
拙著(固定ポスト)でも外国人犯罪について異なる整理と方法で分析したけど、大枠での結論は同じ。 pic.twitter.com/TNAsBCDxpN— Dr. Naoko Hashimoto 橋本直子 (@NaokoScalise) July 8, 2025
神社仏閣の落書き、交通法規を無視した事故、自動販売機を引っこ抜く窃盗など、外国人犯罪は逮捕や検挙の「質」が違うとの投稿もSNSでは行われています。
また、
1.外国人犯罪は不起訴が有意に多い
2.警察の統計は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、そしていちばんリスクがあると言われる非正規滞在者等を除いたもの
という批判もあります。
つまり、外国人の犯罪件数は少なめに出ている、ということです。
ただ、「永住者」は、在日韓国・朝鮮籍の人ですから、日本で生まれ育ち、多くは日本の教育を受けているわけで、国籍だけが違う2世3世4世の定住性が高い「日本の人」を、昨日今日日本に来た外国人と同列にカウントするのが適切なのか、ということもいえます。
要するに、何を根拠とするかも判然としない問題ですが、それだけに議論も盛り上がるわけです。
結論から申し上げると、「外国人の犯罪が日本人より悪質である」とする統計的に明確な根拠は現状では存在しません。ただし、いくつかの観点から以下に詳しく解説いたします。
外国人犯罪の全体傾向:件数は減少傾向・比率も低い
警察庁「犯罪統計資料」や法務省「在留外国人に係る犯罪統計」によると:
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外国人による刑法犯検挙件数は、2010年代をピークに減少傾向。
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外国人の刑法犯検挙件数は全体の2~3%程度にすぎず、人口比(全人口における在留外国人の割合:約2.5%)と同等かそれ以下。
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特に凶悪犯(殺人、強盗、強姦など)に限っても、外国人の占める割合は数%台で、大きく突出はしていません。
検挙理由(罪種別)の違い
ただし、罪種(犯罪の種類)によって外国人に特徴が見られる分野はあります。
交通法規違反
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外国人技能実習生や留学生による無免許運転、速度違反、信号無視などは一定数見られる。
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日本の交通ルールに慣れていないこと、母国との制度の違いが背景にあります。
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ただし、外国人による死亡事故やひき逃げなど悪質なものが特に多いというわけではない。
入管法違反(不法滞在・不法就労)
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外国人特有の犯罪。2022年のデータでは、外国人犯罪の中で入管法違反は最多(約4割)。
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不法就労やビザ超過など、制度上の違反であり、必ずしも治安の悪化とは直結しません。
窃盗・万引き・詐欺
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一部で中国人・ベトナム人グループなどによる組織的窃盗が検挙されたことが報道され注目されました。
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ただし、これも日本人による犯罪のほうがはるかに多い。
犯罪の「悪質性」や「凶悪性」は誰が判断するか?
たとえば、「過失致死ではなく強盗殺人だった」というような「犯罪の質」に関する話題は、以下の点に注意が必要です。
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それが外国人かどうかによらず、個別の事件の悪質性は司法(裁判所)が判断する。
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マスコミが「外国人による凶悪犯罪」を大きく報じる傾向があり、印象の形成にバイアスがかかる。
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統計上、日本人でも重大事件は日常的に起きている。一件ごとに「外国人だから」という印象を与えると、誤認や偏見を助長する。
寺院仏閣への落書きなど文化財破壊行為
この分野はやや特殊です:
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近年、外国人観光客による文化財の破損・落書きなどの報道があります。
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しかし、統計として体系的に「外国人による文化財損壊行為の数」は整理されていません。
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また、日本人による落書きも少なからず存在します。
数値に基づく冷静な判断が必要
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治安悪化の原因として「外国人の増加」が根拠づけられるデータは乏しい。
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特定の事件報道やSNSでの偏見によって「外国人=危険」との印象が強まっているが、制度・環境要因の影響が大きい。
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真に問題とすべきは、在留管理制度、労働環境、受け入れ体制の不備であり、個人の属性に原因を帰すのは避けるべきです。
外国人犯罪は不起訴が多い」という主張について
実態はどうか?
確かに、外国人による検挙件数に対する不起訴率が高めであるという指摘はあります。これは以下のような要因によって説明されます:
(1)軽微な法令違反(特に入管法違反)が多い
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不法残留や資格外活動などは、刑罰ではなく行政処分(退去強制)で済まされるケースも多く、不起訴になります。
(2)言語の壁や本人の所在確保が困難
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逃亡リスクや証拠収集の困難さにより、立件を断念するケースが一部で見られます。
(3)外交的配慮や処遇上の課題
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特定の国との外交関係や送還の実現可能性の低さなどが、検察判断に影響を与えることがあります。
ただし:
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不起訴が多い=犯罪が軽い・免除されているという意味ではなく、刑事処分以外の手続き(行政送還など)で処理されるためと理解するのが正確です。
「永住者」「特別永住者」などを除いた統計について
これは政府統計の“カウントの仕方”が恣意的なのではないか?という批判に関わる論点です。
問題の背景
警察庁や法務省が発表する「外国人犯罪統計」は、ときに次のような対象除外を含みます:
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「永住者」「永住者の配偶者」「特別永住者」など、定住性が高く、ほぼ日本社会に溶け込んでいる層を「外国人」としてカウントしない。
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一方で、「技能実習生」「短期滞在者」「不法残留者」などを主な対象とする。
批判点
この集計方法によって:
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外国人の中でも「より不安定な在留資格を持つ層」が過剰に目立つ。
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統計が一部の外国人をスケープゴート化するような構造を持ってしまう。
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結果として、「外国人=犯罪者予備軍」という誤った印象が生まれる温床となり得ます。
実際にどうカウントされているか(例:警察庁)
警察庁が発表する外国人犯罪の統計(例:令和5年)は、しばしば脚注に以下のように記されています:
「本表における『外国人』とは、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者等を除いた者をいう。」
つまり、「在日外国人全体」を示しているわけではないのです。
結論:外国人犯罪統計の読み方には注意が必要
統計を見るときの注意点
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「誰を外国人とするか」という定義の違いに注目する。
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不起訴件数や処分理由が示されているかを確認する。
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統計を使った「治安悪化」論にはバイアスや政治的意図が含まれることがあると認識する。
日本社会としての課題
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外国人の犯罪統計を通じて見るべきは、外国人の排除ではなく共生に向けた制度設計。
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永住者・定住者・技能実習生など、それぞれの立場の違いに応じた適切な社会的支援や教育、法的対応が必要です。
補足資料(参考にしていただける一次資料)
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警察庁『来日外国人の犯罪情勢』(例:令和5年版)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/statistics.html -
法務省『在留外国人に係る刑法犯等の検挙状況』
https://www.moj.go.jp/isa/publications/index.html

外国人包囲網: 「治安悪化」のスケープゴート (GENJINブックレット 44) – 外国人差別ウォッチ ネットワーク


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