教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」(内田良著、光文社)は、様々な「教育リスク」について社会学者がまとめる

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教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」(内田良著、光文社)は、様々な「教育リスク」について社会学者がまとめる

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」(内田良著、光文社)は、様々な「教育リスク」について社会学者がまとめています。昨今教育現場で問題になっている組体操、2分の1成人式、体罰、部活動顧問など、問題の根底にあるのは、感動を求めることと体罰の美化のように思います。

『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』は、内田良さんが光文社から上梓しています。

『教育という病』は結局、一部の教員&大衆の「感動したがる病」であるという書籍です。

昨今教育現場で問題になっている組体操、2分の1成人式、体罰、部活動顧問など、様々な「教育リスク」について社会学者がまとめています。問題の根底にあるのは、感動を求めることと体罰の美化のように思います。

たとえば、組体操には以下のような問題点があります。

リスクと安全性の問題: 組体操は高度な身体的な協調とパフォーマンスを必要とするため、怪我や事故のリスクが存在します。特に高い難易度の動きや要素を含む場合、ケガの可能性が増えます。

負担とストレス: 組体操は団体でのパフォーマンスを求めるため、個々の選手には高い負荷がかかります。トレーニングや練習の時間や労力も多く必要であり、選手にとってはストレスの源となることもあります。

柔軟性の制約: 組体操ではチーム全体が一体となって動く必要があるため、個々の選手の柔軟性や身体の特徴に制約が生じます。ある選手の柔軟性や体格に合わせてプログラムを作成する必要があり、個々の選手の特性を最大限に活かすことが難しい場合があります。

個別の技術力の見えにくさ: 組体操はチーム全体の演技を評価するため、個々の選手の技術力や貢献度が見えにくい場合があります。特定の選手が他の選手よりも優れた技術を持っている場合でも、それが評価されず埋もれてしまう可能性があります。

集団の一体感の欠如: 組体操は個々の選手が一体となって演技を行うことが求められますが、実際には個々の選手の個性やモチベーションの違い、指導者とのコミュニケーションの問題などから、一体感や協調性の欠如が生じることがあります。

これらの問題点に対しては、選手の安全性を確保するための適切な訓練やケア、選手の負担を軽減するサポート体制の整備、個々の選手の特性を最大限に生かすための柔軟な演技プログラムの作成などが必要です。

まあ、こうしたことを踏まえた上で、以下をお読みいただけると幸甚です。

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子どもの大ケガよりも感動のほうが大切?

組体操が問題になっています。

人がピラミッド形に積み重なるアレです。

本書では、第1章でその問題に言及しています。

ネットで注目されたのは、例の八尾市中学校の事故があってからです。

ハイリスクの巨大組み体操――警告のなかで起きた八尾市中学校の事故(動画もあり)

ハイリスクの巨大組み体操――警告のなかで起きた八尾市中学校の事故(松谷創一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
近年、社会学者・内田良さんによる組み体操事故の警告が注目を集めてきた。しかし今年も大阪府八尾市の公立中学の体育祭で、10段の人間ピラミッドで生徒が腕を骨折する事故が起きた。なぜ繰り返されるのか?

本書では、この組体操は、

1.学習指導要領に記載がない
2.(重大な)事故が起きやすいことがすでにわかっている
3.高さも重量も、制御の範疇を超えている
4.労働安全や建築関連の法に照らし合わせると、あってはならない事態に子どもを置いている
5.民事裁判の判例では、原告勝訴ばかりである

と、そのリスクや「違法性」を明確に指摘しています。

推進者は、その反論反証ができていません。

また、上記ヤフーニュースの記事では、この八尾市中学校の組体操について、こうまとめています。

10段の人間ピラミッドは学校の「伝統」(学校談)
参加者は3年生97人、1・2年の60人、計157人
周囲を教師11人が囲んでいた
練習では一度も成功していなかった(学校・生徒がともに証言)
八尾市教育委員会は、30日付けで安全対策の徹底を通知

要するに事前に危険だと言われ、しかも成功していなかったことを強行したわけです。

記事にも書かれていますが、動画では、腕がおかしな曲がり方をした1年生生徒が先生に抱えられるように退場しています。

結局合計5人が怪我をしたそうですね。

だからいわんこっちゃない、というムードですが、動画を観ていてびっくりしたのは、その退場姿にギャラリーが拍手をしていることです。

おいおい、正気か

と思いました。

生徒の急迫不正の大怪我に対する戦慄よりも、お約束通りの「感動」ですか?

戦争で、特攻隊を万歳で送る人たちってこんな感じかな、と思いました。

すでに、他の学校では、「負傷」ではなく「障害」者が出ていることも本書では報告しています。

自分の子が、こんなことで後の人生を棒に振るかもしれない中途障害になっても感動するというのは、親として、人としてどうかしていると思いますよ、私は。

毒親にも責任はありますね。

中途障害のリスクを甘くみるな、目を覚ましてください、といいたい。

家族の多様な現実が考慮されていない「2分の1成人式」

最近の教育現場では、「2分の1成人式」なるものが問題になっているらしいですね。

これを聞いただけでは、なにが問題なのかわかりにくいかもしれません。

20歳で成人式をする。

だからその半分の10歳で、「2分の1成人式」をするのではないか。

理屈としてはそうでしょうが、2つの「成人式」には大きな違いがあります。

20歳の成人式は、文字通り成人に達する人々を招き、激励・祝福する行事です。

が、「2分の1成人式」は成人にはなっていないのですから、そうではありません。

別に、人生の区切りではないから、本人が祝う理由がありません。

つまり、「2分の1成人式」は、祝う主体が未成年者本人ではなく、10年育てたことを振り返る親権者にあることが問題なのです。

「2分の1成人式」は、家庭生活を振り返り、親権者に感謝しなければならない式なのです。

きわめて、「家」「親子」を前提に道徳的な強制力を伴う「式」といえます。

しかし、家庭的に不遇な子弟はどうしたらいいのでしょうか。

父親の暴力、非嫡出子、両親や兄弟との不仲、片親による精神的・経済的貧困……。

個々の家庭には、子にとって不本意な環境である場合も少なくありません。

家庭は良くも悪くも多様であり、そこで生活する子の考え方もいろいろです。

にもかかわらず、家庭の不都合を隠蔽し、美談化し、恵まれている家庭のリア充披露合戦にさらされる。

そして、感謝を強制され、画一的な感動を求められる全員参加の学校行事なのです。

これはもう、不遇な「ほしのもと」の子にとっては、いわれのない拷問ですね。

そして、紋切り型の感謝・感動を押し付けるのは、多様な家族の形や子の心理形成を否定し、「親を絶対」とする家制度への従属を目論む為政者のイデオローグを私は見て取ることができます。

私のように、家制度に否定的な“自由な考え方”をする者にとっては、迷惑な行事です。

著者は、こう述べています。

10歳の節目は、家庭背景をわざわざ根掘り葉掘り引き出さなくても、祝うことができる。学校は、子どもの家庭背景をあれこれ活用する場であってはならない。

感動「すべき」行事を無理やりこしらえている

『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』は、以下の目次構成になっています。

【はじめに】
【序 章】 リスクと向き合うために ―― エビデンス・ベースド・アプローチ
【第1章】 巨大化する組体操 ―― 感動や一体感が見えなくさせるもの
【第2章】 「2分の1成人式」と家族幻想 ―― 家庭に踏む込む学校教育
【第3章】 運動部活動における「体罰」と「事故」 ―― スポーツ指導のあり方を問う
【第4章】 部活動顧問の過重負担 ―― 教員のQOLを考える
【第5章】 柔道界が動いた ―― 死亡事故ゼロへの道のり
【終 章】 市民社会における教育リスク
【おわりに】

それぞれ考えるべき点がありますが、この記事では、第1章の「組体操」と、第2章の「2分の1成人式」についてご紹介しました。

私は、日ごろこのブログで書いているように、ありふれた映画やドラマで、十分感動できるし、生きるための教訓を見いだせます。

日常生活の中にも、感動できるシーンはいくつもあるはずです。

そのような感動ができない感受性に乏しい人々は、「組体操」や「2分の1成人式」など、感動「すべき」行事を無理やりこしらえないと感動する場がないのだと私は思っています。

もちろん、教育問題というのは、そういう「感受性に乏しい人」や、「暴力教師」や、いわゆる「モンスター親」など、特定の悪者を吊るしあげることで、万事解決というわけではないのでしょうが、いずれにしても、感動というのは、「ねばならない」と強制するものではないでしょう。

以上、教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」(内田良著、光文社)は、様々な「教育リスク」について社会学者がまとめる。でした。

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書) - 内田 良
教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書) – 内田 良

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