カルト宗教の「2世」として生きた著者が、その経験と脱会後の人生を率直かつ軽やかに綴ったエッセイ『私はこれでカルトやめました。~人生搾取されたけどまぁいっか~ てい少年』。本作は、重いテーマを扱いながらも、どこか肩の力が抜けた語り口と、読後に残る前向きな余韻が特徴です。
本書は、著者みやたていが、ある教団(名前は出ていませんが具体的にはエホバの証人)の「宗教2世」として生まれ育ち、そこから脱会し、一般社会で生きていくまでの苦悩と葛藤、そして再生の道のりを描いた48ページのエッセイ漫画です。
親の信仰により、ものごころつく前から教団の世界観にどっぷりと浸かっていた著者。
未成年の時に、抵抗するものの最終的には服従し、一時は教団内で地位を確立します。
しかし、同じ教団の信者である妻の失踪の衝撃から、宗教が幸せの必須条件ではないと気づき、「教団をやめる」選択をします。
以前も、同じ立場の女性の話をご紹介しました。
カルト宗教信じてました。(たもさん、彩図社)エホバ2世が脱会するまで https://t.co/XEX78zrJPu
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) May 11, 2025
この女性も宗教二世で、自分の子が病気になったとき、輸血したことを母親になじられてから脱会した話です。
二世が強制的に信者にさせられてしまう問題
エホバの証人は、1870年頃にアメリカで生まれた新興宗教です。
正式名は「ものみの塔聖書冊子協会」といいます。
聖書の神はエホバという名前だとし、それをあかす人々という意味で「エホバの証人」と呼ばれています。
「証人」というのは、裁判で証人が証言するように、エホバ神こそが正しいということを証しする人という意味だとか。
しかし、キリスト教の大きな宗派である、東方教会も西方教会(カトリック、プロテスタント)も、「ものみの塔」をキリスト教と認めていません。
使っている聖書の内容も、一般のものとは違っています。
この世は、悪魔サタンが支配しているため、近い将来、エホバはハルマゲドンでこの世を滅ぼして、エホバを信じない人は抹殺され、エホバを信じる人だけが生き残って、それまでに死んだ多くの死者も復活し、地上の楽園で年老いることなく、永遠に生き続けられる、ということを信じているそうです。
「死んでも復活」というのはよく聞きますが、私は、かねてから疑問がありました。
たとえば、認知症になってから死んだ人は、認知症の状態で復活するのでしょうか。
事故や事件で、たとえば体がバラバラにされた人は、その状態で復活するのですか。
いや、そうではなく、なんでもない元気なときに復活するというのなら、それはどの時で、誰が決めるのでしょうか。
「オマエは50歳の状態で復活だ」とか、決めるのかな。
誰が?
整形手術した人が、整形前に復活させられたら、ありがた迷惑でしょう。
また整形手術しなければならないじゃないですか。
「年老いることなく」といいますが、それは加齢がないということでしょうか。
さすれば、子供のときに不慮の事故や親の虐待で亡くなった人は、永遠に子供のままなのでしょうか。
それもまたまた大変では?
また、エホバの証人は、「べからず教」と言われ、「楽園」にいくために戒律が厳しい、と描かれています。
国旗、十字架、校歌、推しアイドル、輸血、格闘技、タバコ、非信者との交流……全部だめ。
戒律を守らせるためなら、体罰も行われると一部の信者が明らかにしています(教団は否定しています)。
ただし、この教団は、旧オウムや旧統一協会のような、莫大な献金、寄付、ミサ料というものは集めません。
活動は、奉仕に対する金銭的な見返りを期待したり望んだりしない自発奉仕者によって行なわれており、組織上の支出は自発的な寄付によって賄われています。
ですから、教義の遵守を求めるだけなので、やはり主たる問題は、二世が強制的に信者にさせられてしまう、というところにあるようです。
勧め方については関係性との兼ね合いも
あとがきには、「すべての若者が無理やり選ばされた道ではなく自分で考え、希望した人生を選択できるように心より願っています」と書かれています。
これは子どもにとっては、親の価値観を押し付けられる虐待なんです。
見方を変えれば、宗教の押しつけでなくても、ほかのことで、子どもに自分の価値観を押し付けていたら同じことなんです。
子の進学とか、就職とか、縁談で、干渉することがそれにあたります。
価値観を押し付けは、他人も巻き込む場合もあります。
中学の友人が私に会いにきた理由(人間まお著)。Facebookでつながった、かつての級友がマルチ商法に誘ってきた話です。遠い昔の友人から「会いたい」と言われれば、せっかくの再会の機会を大事にしたいという気持ちを利用されてしまうのです。https://t.co/zOENF4idwI pic.twitter.com/g1yC8pESvW
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) April 19, 2024
私の下の息子の同級生の母親で、ミキプルーンにハマっている人がいました。
本人の体験で、期待する効果があったらしいのですが、ミキプルーンの大きな特徴は、「MLM」というビジネス形態をとっているマルチであること。
私の妻にも、何かというと、説明会に来いと誘いがあったようです。
でも、そんなことをやっていると、結局、ママ友のコミュニティからはずれちゃうんですよね。
ヒトサマに、よいと思ったことを伝えるのは、情報としてあってよいと思います。
ただ、伝え方、勧め方については、その人との関係性の兼ね合いも考えたほうがいいでしょうね。
断りにくい立場に対して、カサにかかって押し付けるようなことは論外です。
押し付けたり、押し付けられたりの失敗談とかありますか。
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