自立する国家へ!(田母神俊雄、天木直人著、ベストセラーズ)は、政治的立場の異なる二人の著者が「自主独立の日本」というテーマで共著した意欲作です。田母神氏といえば「右」、天木氏といえば「左」の論客として知られていますが、この異色の組み合わせが生み出した化学反応は、日本の未来を考える上で貴重な視点を提供しています。
本書の核心的な主張
本書の結論から書きます。
1.日本は、アメリカの属国状態から脱却し、独立した平和国家として国際貢献すべき
2.ネット上で繰り広げられる「右」「左」のポジショントーク的論争は、現実を見据えない無責任な「お花畑論争」に過ぎない
本書は、従来の右派・左派の対立図式を超えて、日本の真の自立とは何かを問い直す内容となっています。
「右」の幻想と「左」の盲点
右派の「核武装幻想」が抱える現実的課題
保守派がしばしば主張する「核武装」は、以下の現実的制約から実現可能性が極めて低いと言わざるを得ません。
1.財政法第4条の壁:アメリカによる占領政策の一環として制定されたこの法律は、国債発行による軍事費拡大を禁止しており、核開発の財政的基盤を根本から制約しています。
2.日米安保体制の現実:アメリカが日本の軍事力強化、特に核武装を容認する可能性は考えにくい。
3.国際社会における「敵国条項」問題:国連憲章に残るこの規定は、日本が軍事的に自立する道に大きな障害となっています。
ところが、自称「右」の人たちは、なぜか日本のアメリカ追従体制にはだんまりです。
左派の「護憲絶対主義」が無視する現実
一方、護憲派にも重大な問題点があります。
憲法9条を守る、実質的な意味では非武装を誓うだけで平和が保たれるという幻想です。
現実の安全保障脅威(竹島問題、中国の浸透戦術など)への対応不足
著者の天木氏は、元外交官として「憲法9条堅持」を主張していますが、決して非武装論ではないために、従来の左派論壇からも批判を受けている独自の立場です。
憲法に自衛力を否定する文言はありませが、自称「左」の護憲派は、憲法9条を守る=非武装、と決めつけています。
つまり、「右」も「左」も、平和ボケで自分の都合の良いポジショントークをしているわけです。
そのなことをしているうちに、日本は米の支配と中国の征服で、主権を失い、今や凋落の一途なのです。
地盤沈下している日本の国際的立ち位置
国力の指標となる経済力ですが、日本経済は「量」ではかろうじて巨大ながら、「質」や「未来への投資」で相対的な低下傾向にあることが、各種のランキングで顕著になっています。
・日本の名目GDPは、高度経済成長時代は第2位だったのに、2023年時点では4位です。2024年には、ドイツを抜かれ4位に転落しました。2025年には、インドに抜かれ5位になると予想されています。ジリ貧なんです。
・1990年代には世界GDPに占める日本の割合が約17%だったものが、2023年には約4%に急低下しています。
・世界経済フォーラム(WEF)の「グローバル競争力報告」では、2019年時点では12位でしたが、2023年には20位に後退(64カ国中)。生産性やイノベーションの停滞が原因です。
・IMD「世界競争力年鑑」は2023年は34カ国中28位(2000年代前半には10位台)。労働市場の硬直性やデジタル化の遅れが課題。
・2023年は57カ国中5位(アジア1位)ですが、韓国(6位)や中国(12位)との差が縮まり、研究開発投資の伸び悩みが指摘されます。
・国連工業開発機関(UNIDO)「国別産業競争力指数」は2010年代から下降。ドイツ、中国に次ぐ3位に後退(2023年)。自動車・電子分野の生産拠点がアジア諸国へ移転し、輸出シェアが減少しています。
これらの原因は、アメリカに経済的にも主導権を握られていることと、中国の台頭を許していることにあります。
「下翼」の台頭と国民の覚醒
NHK党立花孝志の卑劣な犬笛を言及してくれたたつみコータロー議員の国会質問。
共産党議員の質問に頷き、同じ方向を向いた答弁を返す自民党大臣。
やはり、これは右でも左でもない、下翼との戦いだ!#立花孝志を逮捕しろ#斎藤元彦を逮捕しろhttps://t.co/c1tYQCyuOe— 矛盾だらけのからあげクン(で?いつ辞めるん!) (@kamatanma) April 24, 2025
最近では「下翼」という新たなカテゴリーが注目されています。
これは、十分な知識もないまま他者を「お花畑」と罵倒するような、右でも左でもない低次元の議論を指します。
しかし、上のOGPのようにその存在に気づき、「右」であれ「左」であれ、「下」にはならないようにする、つまり国民の知力向上を呼びかける潮流もあります。
「NHK党立花孝志の卑劣な犬笛を言及してくれたたつみコータロー議員の国会質問。共産党議員の質問に頷き、同じ方向を向いた答弁を返す自民党大臣。やはり、これは右でも左でもない、下翼との戦いだ!」(出典ツイート)
本書の結論は明確です。「アメリカの属国」状態から脱却し、真の自主独立国家としての道を歩むべきだという主張です。
そのためには、従来の右左対立を超えた、そして下翼的レベルを否定した国民的な議論が必要不可欠です。
私たちは今、国家としての根本的な選択を迫られています。
あなたは日本の未来をどのように考えますか?
真の自立とは何か、この機会に国家観を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
この書評が、日本の未来を真剣に考えるきっかけとなれば幸いです。
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