新版科学がつきとめた「運のいい人」(中野信子著、サンマーク出版)は、脳科学者が論考する「運のいい人」についてまとめた書籍です。2013年に出版された同趣旨の書籍の改訂版です。自分が運がいいと思えるために、どういう心理状態であるべきか、どんな発想や実践を行ったら良いか、著者の考えを書いています。
性懲りもなく、またしても運の本です。
以前も書きましたが、私は自分を、あまり運のいい人間ではないと思っています。
といっても、「だから絶望する」というのではなく、「だからいい方向に持って行きたい」という前向きな気持を持っています。
そこで、「運」に関する書籍は積極的に読んでいます。
しかし、運というのは、しょせん偶然の部分なので、今までもいろいろな書籍を読みましたが、これといった決め手はありませんでした。
調子の良いタイトルは、みんなオカルトっぽいし、そうでないものは当たり前かつ抽象的な話だし。
そこで、最近は、自己実現した実在する偉人伝を読み、その成功体験から秘訣を探すことにしています。
ただそれと並行して、運の本も諦めずに読み続けております。
本書の著者の中野信子さんは、何度かご紹介させていただいています。
「脳科学者、医学博士。東日本国際大学客員教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。」という華々しい経歴です。
過去にも、有意義な書籍を何度がご紹介しました。
ですから、この方だったら、なにかいい話を、と期待してしまうわけです。
「運」は心がけか?
脳科学者の中野信子さんと、若い頃の金沢碧さんは似てると思いました。 pic.twitter.com/LJTyky4CzB
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) April 28, 2024
「運(がいい・悪い)」というのは、一口にまとめると、小難しくなりますが
結果に対する、本人の意図や予想との乖離に対する主観
だと思います。(私が考えた定義)
つまり、運というのは、その人の「偶然」「価値観」という、科学が直接解明できないことを2つも抱えているのです。
なのに、「運」という概念全体を、科学で解明というのは、考えてみたら難しいことかも知れません。
本書の内容は、目次でだいたい想像がつくと思います。
運のいい人はいまの自分を生かす
運のいい人はいい加減に生きる
運のいい人は積極的に運のいい人とかかわる
運のいい人はあえてリスクのある道を選ぶ
運のいい人はひとり勝ちしようとしない
運のいい人はライバルの成長も祈る
運のいい人は他人のよさを素直にほめる
運のいい人は具体的な目的をもつ
運のいい人はゲームをおりない
運のいい人は自分の脳を「運のいい脳」に変える
これは要するに、日頃の「心がけ」ですね。
人と協調して、ポジティブシンキングになって、欲をかかず、さりとて希望も捨てない、ということです。
そうすれば、いいことがあるし、精神的にも落ち込まないですよ、ということですね。
この内容自体は、あり方として間違ってはいないのでしょう。
採り入れられるものは採り入れたほうが、ハッピーになれることもあると思います。
ただ、それを実践したところで、本当に運が良くなるのでしょうか。
たとえば、交通事故に合わないのか。
震災があっても助かるのか。
本当は落選や不合格だったのに、事情があって欠員が出て繰り上がれるのか。
そういう保証はないですよね。
やはり、自己啓発書の枠内の話なんですね。
この書籍に書かれている内容だけでは、タイトルに有るような「運のいい(悪い)人」を「つきとめた」とは到底言いがたいです。
運は本人の努力だけではない
お正月のお供はこちら???♀?
『科学がつきとめた 運のいい人』
中野信子snsの切り抜きで、トークが好きだなぁと思っていた脳科学者さんの著書。
スピリチュアル(の本では無い!)で言われているコレやりなさい、が科学的に合致していて面白かった。
自己重要感、大事? pic.twitter.com/O2uIsxa9iV— 佐藤朱 (@info_akechi) January 4, 2025
Amazonのレビューにこう書かれているのも、もっともです。
「著者に御聞きしたいのですが、東京大空襲や広島・長崎の原爆で亡くなった方々は単に運が悪かったのでしようか。著者の考えは似非科学の類としか思えません。」
つまり、「不運」と一口に言っても、本書に書かれている「心がけ」だけではどうにもならないことがあります。
「運」以外の社会的責任という「必然」についても考えなければならないことなどもあります。
戦争なんて、まさにそうですよね。
にもかかわらず、そういった区別も本書は全く行っていないのです。
本書の主張では、「心がけが悪いから原爆に被爆した」「戦死した」という解釈もできてしまいます。
本書の発行出版社は、あのオカルト著述家と言われた、船井幸雄氏の本を出した「サンマーク出版」。
出版社だけで書籍の評価を決めつけてはいけませんが、しょせん、「そういう出版社」でした。
中野信子さんといえば、冒頭に描いたように、なんちゃって科学者ではなく、本物の脳科学者であるだけに、残念でした。
「運」を解明する書籍。
また性懲りもなく探して読んでみます。
みなさんは、こうした本は読まれますか。
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