知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~(上野すばる、ユサブル)は、闘病と介護を抱える妻と知的障害がある夫が描かれる

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知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~(上野すばる、ユサブル)は、闘病と介護を抱える妻と知的障害がある夫が描かれる

知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~(上野すばる、ユサブル)は、闘病と介護を抱える妻と知的障害がある夫の夫婦が描かれています。ご近所騒がせな女たちVol.5 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) というシリーズ名がついています。

『知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~』は、上野すばるさんがユサブルから上梓しました。

実母と夫との3人暮らしの主婦は、実母の脳梗塞と認知症による介護、夫の給与ダウン、そして自らの闘病とご難続き。

しかし、夫は軽度の知的障害があるため、仕事や日常生活においては支障がないものの、実母の施設入所に関する福祉の相談など込み入った話相手にはなれず、進退窮まってしまい、さあどうしましょうか、という話です。

……と書くと悲惨ですが、決して救いようのない結末ではないのでご安心ください。

本書は2022年10月29日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

ご近所騒がせな女たち【完全版】7 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) Kindle版にも収載されていますが、こちらもAmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

もっとも、本作に限って言えば「ご近所騒がせな女」ではありません。

どうしてこのシリーズに収載されたんでしょうね。

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困ったときに相談できない!?

『平成25年度 障害者白書』(内閣府)や『平成27年 国勢調査』(統計局)によると、障害者の結婚率が数値化されています。

身体障害者60%
精神障害者34%、
知的障害者2.3%

健常者が57%なので、身体障害者の結婚率が健常者よりも高いという結果が出ています。

ただし、やはり知的障害者の結婚率はかなり下がります。

健常者から敬遠され、知的障害者どうしの結婚もむずかしいのかもしれません。

というか、そもそも出会い自体が少ないかもしれません。

知的障害とは、IQ以下は支援学級、60以下は支援学校といわれていますが、その60以下にもいろいろなステージがあります。

いずれにしても、知的機能の障害が発達期にあらわれ、日常生活の中でさまざまな不自由が生じることをいいます。

学力が高くなく、コミュニケーションや買い物のお金の計算などが苦手です。

本書に出てくる知的障害のある夫は軽度で、仕事をしているので、そういった困難はないようですが、ただし、人生の選択を相談されるような難しい話はやはり苦手なようです。

主人公は、紺野美也子。

夫と実母と3人暮らし。

夫の両親が建ててくれた家に住んでいます。

夫の清二は軽度の知的障碍。

10年前、長年付き合っていた男性にフラれて飲んだくれていた美也子を、通りがかりの清二が優しく介抱したことがきっかけで結婚しました。

パチンコに明け暮れていた美也子の母親は、経済力のある男じゃないとひとり娘はやれない、と言い張っていましたが、清二の両親が建売を買ってくれたことでコロッと気が変わり、自分の同居を勝手に決めて結婚を許しました。

その母親は脳梗塞になり、下半身麻痺の寝たきりとなって美也子に面倒をかけます。

美也子は、介護のために会社を退職。

それでも、時間を作ってパートに出ていましたが、今度は頑張りすぎて自分が病気になってしまいます。

その頃は、夫の両親も亡くなり、誰も頼れなくなったため、パートもやめざるを得なくなります。

さらに、清二も会社の状態が悪く給料を下げられてしまいます。

介護疲れと闘病と経済的困窮。

さて、どうしたものか。

普通は夫が考えたり、夫と話し合って決めたりするのですが、知的障害者の清二とは話し合って決めることができません。

美也子は、清二にも声を荒げるようになってしまいます。

果たして、結末は……

美談は強制されるものではない

本書を読まれた方の中には、ちょっとがっかりされた方もいらっしゃるかもしれませんね。

ストーリーは、あくまでも主人公の母親と自らの闘病が苦しみのメインであり、知的障害の夫は「頼りにならない」ことだけしか「支障」がない。

でも、知的に障害のある配偶者のいる方にとって、本当の苦悩は、その配偶者自身の問題です

そんな方には、参考までに、NHK ハートネットの動画をシェアしましょう。

この動画は、妻の方に発達障害とうつ病があります。

妻の伊藤議代さんは、幼い頃“ヘン子”と呼ばれ、他人に理解してもらえない自分の行動に苦しみました。

夫の秀和さんとは、出会って2年で結婚。

しかし、誕生した長男と長女は自閉症。

伊藤議代さんはそのこととどう向き合っていいかわからずうつ病が悪化し、子供と実家に帰って夫に離婚を求めます。

しかし、夫の秀和さんは、「居場所が(実家の他に)もうひとつあってもいいんじゃないか」と、自分は食事もできないくらい苦しんでも、一人でじっと帰りを待ちながら、お互いの気持を手紙で辛抱強くやり取りした結果、伊藤議代さんは気を取り直して元の鞘に収まった、という話です。

一応美談扱いですが、私はこれをもって、障害のある人と結婚したら、どんなに苦しくてもパートナーは我慢することが「理解と支援である」というような道徳になってしまうのもどうかなと思っています。

耐えられなければ離婚するしかない。

そういう選択肢もありだ、と書くと、そんなのは差別だと思いますか。

伊藤議代さんも大変だったでしょうが、夫の価値観(優しさと忍耐)によって成立した“美談”であり、夫ならこうあるべきだとまではいえません。

どうして夫には落ち度がないのにそこまで我慢しなければならないのか、自分は夫の立場にはなりたくないな、と思った人がいても、それを誰が責めることができるでしょうか。

どんな人と結婚したいか、またしたくないかは、人間にとって究極の「内心の自由」ではないでしょうか。

障碍者に対する社会的な理解&支援と、結婚における個人の自己実現は別のものであり、まるで人生を捧げきれない理解&支援は差別だ、というような社会の空気になることは、決して障碍者が対等な立場で生きるインクルーシブな社会には資さないと私は思うのです。

みなさんは、いかが思われますか。

以上、知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~(上野すばる、ユサブル)は、闘病と介護を抱える妻と知的障害がある夫が描かれる、でした。

知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~/ご近所騒がせな女たちVol.5 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) - 上野 すばる
知的障害者の妻~介護・難病・貧困地獄の中で~/ご近所騒がせな女たちVol.5 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) – 上野 すばる

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