天ざるは「ただ漠然と食べる」のは実にもったいない! ほんの少しの気遣いと手順を知るだけで、その味わいは格段に深みを増すのです

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天ざるは「ただ漠然と食べる」のは実にもったいない! ほんの少しの気遣いと手順を知るだけで、その味わいは格段に深みを増すのです

こんにちは。すっかり過ごしやすい季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。さて、新緑の美しいこの時期から、蒸し暑い夏にかけて、特に食べたくなる料理の一つが「ざるそば」や「天ざる」ではないでしょうか。

清涼感のある細かい刻み海苔、コシのある冷たい麺、そして芳醇な香りを立てるつゆ…。考えただけで、つい唾が込み上げてきてしまいます。特に、サクサクの天ぷらが添えられた「天ざる」は、そば屋さんで楽しむ至高の一杯です。

しかし、この天ざる、「ただ漠然と食べる」のは実にもったいない! 実は、ほんの少しの気遣いと手順を知るだけで、その味わいは格段に深みを増すのです。今日は、そば通も納得の「天ざるの正しい食べ方」について、詳しくご紹介していきたいと思います。

食べる前の心得~準備で決まる第一印象~

まずは、天ざるがお手元に運ばれてきた瞬間からのお話です。

1. 器の配置を確認する
天ざるのセットには、通常、以下のものが並びます。

  • 麺の載ったざる(またはせいろ)

  • つゆが入ったつゆつき

  • 薬味(刻み海苔、わさび、刻みネギなど)

  • 天ぷら

この配置には理由があります。基本的には、ざるが手前、つゆつきが奥という配置が传统的です。これは、つゆつきを手に取る際に袖がざるに触れないようにする、という粋な配慮から来ていると言われています。まずは、この美しい並びを目で楽しみ、食事への期待を高めましょう。

2. 最初に一口、つゆを味わう
いきなりわさびを溶き始めるのは、少し待ってください。せっかくの出汁の風味を、最初に純粋な状態で味わってみることをお勧めします。つゆつきを手に取り、一口すくって口に含んでみましょう。鰹節と昆布の深い旨み、ほのかな甘みと醤油の香りが広がるはずです。この「つゆそのものの味」を知ることが、全ての行程のベースとなります。

3. 薬味は「少しずつ」が原則
次に、薬味を投入します。わさび、刻みネギ、刻み海苔などが代表的ですね。ここで重要なのは、全ての薬味を一度にドバッと入れてしまわないことです。

特にわさびは、つゆに溶かしすぎると、つゆ自体の風味をマスクしてしまい、また鼻に抜ける辛さも弱まってしまいます。お勧めは、一口分のつゆにつけるわさびを、麺に直接ちょんとのせ、つゆをつけて食べる方法です。こうすることで、わさびの新鮮な辛さと香りを、その都度楽しむことができます。

刻み海苔は、ざるの上にたっぷりとかけていただいて構いません。海苔の香ばしさが麺とよく合います。

麺を食べる~一口一口に集中する技術~

さあ、いよいよ麺をいただきます。

1. 最初の一口は、つゆだけでも
薬味を入れる前の、澄んだつゆに、最初の一口の麺だけはつけて食べてみてください。そば本来の風味と、つゆの調和を感じ取ることができます。

2. 麺は「一口量」をきちんとつける
ざるから箸で取る麺の量は、一口で食べきれる分量にしましょう。多く取りすぎると、口の中が麺でいっぱいになり、味わいが分散してしまいます。また、つゆつきに麺をドボンと浸すのは厳禁です。麺の先から3分の1ほど、きれいにつゆにつけるのがエレガントです。

3. 音を立ててすするのはOK?
これはよく議論になるところですが、そばに関しては「音を立ててすする」ことは、礼儀に反するどころか、むしろ推奨される行為です。勢いよくすすることで、そばの風味とつゆの香りを同時に楽しむことができ、より味わいが深まります。ただし、あまりに派手な音や、口の中に麺を詰め込みすぎるのは考えもの。あくまでも「美味しそうに、そして美味しく食べる」ための技術として捉えましょう。

4. 「そば湯」の存在を忘れずに
麺を食べ終わった後、お店によっては「そば湯」を出してくれます。これは、そばを茹でた湯で、ビタミンB群などの栄養分がたっぷり溶け込んでいます。このそば湯は、最後の最後で大活躍する名脇役なのです。

天ぷらとの共演~二つの楽しみ方~

天ざるの醍醐味は、麺と天ぷらのハーモニーにあります。

1. 天ぷらは「最初に一口」と「途中で」
天ぷらは、麺を食べ始める前に一口、そのサクサク食感を塩などで味わうのがお勧めです。そして、麺を食べ進めながら、途中でいただきます。最初に全て食べてしまわず、麺と交互に楽しむことで、食感と味の変化を愉しめます。

2. 天ぷらの「二通りの食べ方」
天ぷらには、主に二通りの食べ方があります。

  • つゆにつけて食べる
    えびなどの天ぷらを、そばつゆにつけていただく方法です。天ぷらの衣がつゆを吸い、また出汁の風味が天ぷらに加わることで、まったく新しい味わいが生まれます。

  • 塩などで食べる
    天ぷら本来の素材の味と衣の香ばしさを楽しみたい場合は、添えられた塩をつけていただきます。特にかき揚げなど、素材そのものの甘みを感じられる天ぷらには、こちらがよく合います。

お好みで、二通りの食べ方を試してみてください。同じ天ぷらでも、印象ががらりと変わることが実感できるはずです。

締めくくり~最後の一滴まで美味しく~

麺も天ぷらもほぼ食べ終わり、つゆつきにはまだつゆが残っている…。ここが、最も美味しい瞬間の一つかもしれません。

1. そば湯で「シメ」の一杯
先ほどご紹介した「そば湯」を、残ったつゆに注ぎます。注ぐ量はお好みで調整してください。これで、出汁とそばの風味が凝縮された、究極の一杯が完成します。

つゆが濃いめの場合は、そば湯で薄めてお好みの濃度にしましょう。そばの栄養も余すところなくいただけて、体もほっと温まります。これこそが、そば料理の完璧な締めくくりなのです。

2. 感謝の気持ちを込めて
すべて食べ終えた器は、できるだけ元の位置に整えて置きましょう。そして、美味しい一杯を提供してくれたお店や、食材への感謝の気持ちを忘れずに。これも、食事をより豊かにするための大切なマナーの一つです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ほんの少しの手順と心構えで、天ざるの味わいが何倍にも深まることをお分かりいただけたかと思います。

しかし、最も大切なのは「ご自身が一番美味しいと感じる食べ方」です。ここでご紹介した方法は、あくまでも一つの「提案」であり、正解ではありません。いろいろと試していただき、ご自身なりの「最高の天ざるの食べ方」を見つけ出すのも、また大きな楽しみです。

次にそば屋さんで天ざるをいただく際は、ぜひ今回ご紹介したポイントを思い出していただき、麺とタレ、そして天ぷらを存分に楽しんでみてください。それでは、素敵なそばタイムをお過ごしください!

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