東京大学が2027年度から「カレッジ・オブ・デザイン」なる新学部を設置。国内の大学で「秋入学」を導入する動きが広がり見せる

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東京大学が2027年度から「カレッジ・オブ・デザイン」なる新学部を設置。国内の大学で「秋入学」を導入する動きが広がり見せる

近年、国内の大学で「秋入学」を導入する動きが少しずつ広がっています。日本では長らく入学や進級が<桜の咲く春に行われるのが当たり前でしたが、海外との学事歴の違いやグローバル化への対応を背景に、秋入学が現実的な選択肢として注目されつつあります。 しかし、メリットがある一方で、日本社会の構造や文化とぶつかる課題も少なくありません。

東京大学が秋入学制度の学部を新設

東京大学が、2027年度から、「カレッジ・オブ・デザイン」なる新学部を作るそうです。

学生の半分は外国人で、1年生全寮制、5年制の学部と修士の一貫教育といいます。

いや、学部+修士なら4+2で6年だろう、まじめに6年やって修士とった他学部学生の立場は? というツッコミもさることながら、最大の特徴は、秋入学制度を採り入れたことです。


9月に入学し、8月末に修了します。

いうまでもありませんが、日本の学校は、原則4月入学の3月末卒業・修了です。

では、なぜ東京大学までもが秋入学制度を採り入れたのでしょうか。

秋入学のメリット

まず秋入学の最大の利点は、国際社会との接続がしやすくなることです。

欧米やアジア諸国の多くでは、9月や10月を新学期のスタートとしているため、日本の学生が海外に留学したり、逆に留学生を受け入れたりする際にスケジュールを合わせやすくなります。

これまで日本の大学に留学を希望する外国人学生は、半年間の「空白期間」を経てから入学せざるを得ない場合もありました。

秋入学の制度が整えば、こうした機会損失を減らし、多様な国際交流をしやすくなるのです。

また、春の入試に失敗した学生にとっても、秋入学は有益です。

従来は浪人として翌年春まで待機しなければなりませんでしたが、秋入学という選択肢があれば、時間を無駄にせず、早く新しい学びに取り組むことができます。

進路変更を決断した学生や、海外から帰国した生徒にとっても柔軟に対応できる点は大きな利点といえるでしょう。

さらに、教育カリキュラムの多様化を促す効果も期待されます。

日本型の一括就職や一斉スタートの文化は安定感がある一方で、多様性や独自性を尊重しづらい面もあります。

秋入学が広がれば、年間を通じて「学びの出発点」が複数存在することになり、学生の自由度やキャリア形成の柔軟性が増していく可能性があるのです。

秋入学のデメリット

一方で、秋入学には大きな課題もあります。

最も顕著なのは、日本の新卒採用や就職活動の慣習とのずれです。

企業は依然として春入社を基本としています。

そのため、秋に大学を卒業した場合、就職活動と卒業時期のタイミングが合わず、半年から一年程度の待機が生じる可能性が高いのです。

これは学生にとって不安材料であり、企業にとっても受け入れ体制を再構築する負担がかかります。

国や地方自治体の会計年度(4月~3月)と教育制度の年度がずれることで、予算編成や行政手続きが複雑になる可能性もあります。

また、日本特有の季節感や文化的意義も無視できません。

秋入学が一般化すれば、季節ごとの節目が変化することで、慣れ親しんだ「春に入学や進級、桜の時期の別れと出会い」といった文化的体験が薄れる可能性があります。

そうした文化的共有体験が薄れてしまい、日本社会が従来から大切にしてきた価値観が揺らぐ可能性もあるでしょう。

保護者の転勤が、年度末の3月に行われることが多いため、もし義務教育に秋入学が導入されるようなことがあると、生徒・児童は学期途中での転校が増える可能性があります。

また、卒業式や入学式といった伝統的な行事の時期も変更されるため、和装(袴など)の文化が変化するかもしれません。

医療従事者(医師や看護師など)の卒業・就業時期が後ろ倒しになることで、年度初めに人材が不足する事態が起こりうるため、医療機関は採用スケジュールを調整する対応が求められます。

総じて、日本の社会がこれまで通年で動いていたことが、半年単位で動いていくように変化する可能性があります。

バランスをどうとるか


「春はお別れの季節です。みんな旅立って行くんです」という、おニャン子クラブの歌は今も覚えていますが、桜の季節が別れと新しい人生のスタートという経験を過ごしてきた者としては、やはり秋入学には違和感を抱くところはあります。

しかし、これは時代の必然といいますか、「国際化社会」である以上、さけることができないことかな、とも思います。

ですから、秋入学を一律に広げるには多くの壁がありますが、完全に排除すべきものではないと考えます。

むしろ、従来の「春スタート」に間に合わなかった人のための、「もう一つの入り口」として存在すると前向きにとらえてもいいのではないかと思います。

留学生を積極的に受け入れる大学、または国際企業を志向する学生にとっては、秋入学の方が適している場合もあります。

そして、秋入学制度の導入は、直接的には学生や教育現場の話のようでいて、実は年間行事や生活リズム、企業の採用や行政手続きなど、一般人や社会全体の仕組みや価値観にも少なからず波及する、社会的な変化をもたらす大きなテーマです。

みなさんは、いかが思われますか。

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