
かつては”事情のある生徒が行くところ”というイメージがあった通信制高校。しかし、今や生徒数30万人を突破し、高校生の10人に1人が在籍する時代になりました。もはや決して例外的少数ではありません。何がこの急増を引き起こしているのか。数字と背景をまとめます。
文部科学省が、2025年度に公表した学校基本調査(速報値)によると、通信制高校の生徒数は前年度比5%増の30万5221人となり、過去最多を更新したことがネットでも話題になっています。
10年前の2015年度は18万393人だったから、この10年で約1.6倍(60.8%増)になった計算です。
同じ期間に高校生全体の数は、むしろ12%以上減っています。少子化で全体のパイが縮む中、通信制だけが逆行して伸び続けているのです。
学校数も2025年度には332校となり、20年前からほぼ倍増しました。
全日制の生徒数が4万2433人減ったのと対照的な動きです。
中学校の1クラスに換算すると、約3人が通信制高校へ進む時代。もはや「特別な選択肢」とは言えない水準に達しています。
増加の主役は「不登校」
【日経新聞】
通信制高校の生徒は25年度に初めて30万人を超えた。全国の高校生の10人に1人が通う計算だ。不登校を経験した学生の増加により受け皿としての役割が高まったほか、自分のペースで学べるためスポーツや芸能活動に注力したい生徒や海外大志望者なども増えた。https://t.co/0dmx4k5r4y
— Toshi??_苦悩するHR管理職 (@toshhh__) June 8, 2026
最大の要因は、不登校の増加です。
文部科学省によると、小中学校で年間30日以上欠席した不登校の児童生徒は2023年度に34万人に上り、11年連続で増えています。
新型コロナウイルス禍による生活の乱れや、無理に通学させる必要はないとする保護者の価値観の変化、教員の指導力低下やいじめの増加などが要因として挙げられています。
高校生の不登校も3年連続で増え、約6万9000人に上ります。
スクーリング(登校日)を最小限に抑え、自分のペースで単位を取れる仕組みが、全日制に通えなくなった、あるいは最初から通わない生徒の受け皿として機能してきたのです。
「消極的選択」から「積極的選択」へ
もちろん、近年は事情があるからではなく、積極的に通信制を選ぶ生徒も目立つようになってきました。
通信制というと、ガバっと教材だけ送られて、あとは放ったらかし、なんていうイメージを持たれる方もおられるかもしれませんが、そんなもの今どき、民間資格の通信教育講座だってやってません。
通信制高校とは、正式には「広域単位制高校」の一形態です。
3都道府県以上の広範囲から生徒を募集する「広域制」と、学年による区切りがなく必要な単位を修得すれば卒業できる「単位制」を組み合わせた高校のことです。
学校自体は、クラス(メート)も、担任も、制服も、教室授業も、学校行事もあります。
違うのは、ビルの中に学校があり、すなわち校庭がないことぐらいかな。
法律的には、普通の高校と全く同じで、卒業すれば普通に「高卒」です。
生徒は、通学せず、ネット・短期スクーリング・テキスト添削などによる履修「も」認められている、ということです。
つまり、学園生活がいいか自宅学習がいいか、科目ごとにどっちでも選択できるのです。
したがって、同級生は「北海道から沖縄まで」集まるクラスが成立するので「広域」になるのです。
そして、学年制ではなく単位制なので、年次によって、都合の良い科目を選べます。
障害者、不登校者、スポーツや芸能などに時間をとられている人など、さらに、若い頃学校に行けなかった人たちの学業復帰にはありがたく合理的な制度です。
私も親子スクーリングに出たことありますが、授業内容も個性的です。
都市部では、eスポーツやプログラミング、アニメーション制作などに特化した専門コースを持つ学校が増えており、ニーズに応じた個別最適化された教育の提供が加速しています。
進学面でも、大学入試における総合型選抜(旧AO入試)の拡大により、学力一本やりでない評価が広がり、通信制出身でも大学進学の道が開きやすくなりました。
大学も、通信制大学を増やしているので、義務教育が終わったら通信課程のみで大学院まで進む人もいます。
男女比でも変化が起きており、2022年度から女子比率が50%を超え、2024年度では53.1%と半数以上が女子となっています。
かつては、家庭の事情、学力の事情(落ちこぼされ)などの受け皿だった通信制は、すっかり様変わりしたのです。
影の部分は質の問題
しかし、急拡大には影の部分も残念ながらあります。
2016年には三重県伊賀市の高校で、生徒がテーマパークで買い物をし、お釣りの計算をしただけで数学を履修したと認めていたことが発覚しました。
文部科学省の調査では、配置すべき教員数を満たしていない、体育の実技などを行う施設を備えていないといった事例が複数校で見つかっています。
学校数と生徒数が急増する中、監督が追いついていない実態があります。
さらに深刻なのがメンタルヘルスの問題です。人口10万人当たりの自殺死亡率で比較すると、全日制の生徒よりも定時制・通信制の生徒が高く、過去3年は特に定時制・通信制女子の自殺が増えているそうです。
先生と生徒との関係が、通学制に比べて希薄になってしまうのかもしれません。
30万人時代に問われていること
通信制高校の急増は、日本の教育が多様化した証でもあり、良いことです。
以前書いた通り、我が家は通信課程大好きで、長男が通信制高校を出ていますし、妻は定時制高校から通信課程に移り、大学も通信課程です。私も大学院の修士課程が通信でした。
一律に朝から学校へ通うことを求めない仕組みが、救われた生徒を生み出してきたことは事実なのです。
ですが、受け皿が広がれば、そこに流れ込む問題も大きくなります。
名ばかりの履修、手薄なサポート、孤立した生徒。こうした問題が放置されれば、「多様な学び」の看板が、単なる管理の放棄になりかねません。
みなさんは、通信制高校に、どんなイメージを持たれていますか。

通信制高校があるじゃん!2026-2027年版 (日本の通信制高校のすべてがわかります!) – 学びリンク編集部


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