穴守稲荷神社(大田区羽田)は文化元年(西暦1804年)にできた大田区在住者なら誰でも知る区内でも有数のスポット

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穴守稲荷神社
穴守稲荷神社(大田区羽田)は、大田区在住者なら知らない人はいないほどの区内でも有数のスポットです。その場所は京急羽田空港線の穴守稲荷駅から、駅前商店街「穴守ふれあい通り」を1分ほど歩くとすぐに参道です。

穴守稲荷神社の場所と沿革

穴守稲荷神社の最寄り駅である京急羽田空港線は1963年まで「穴守線」といい、現在も穴守稲荷駅の敷地出入口には赤い鳥居が立っています。

つまり、穴守稲荷によって成り立っている穴守稲荷のための町といっても過言ではないほどです。

穴守稲荷駅

穴守稲荷駅の敷地出入口には赤い鳥居

 駅の改札を出ると早速鳥居が

穴守稲荷神社

参道は桜の季節なら綺麗に咲きます

参道を通って向かって左側には社務所があり、その右隣に拝殿、さらにその右隣には寄進された鳥居が連なる奥の宮があります。

豊受姫命が御祭神

豊受姫命(とようけひめのみこと)が御祭神です。

拝殿はさすがに立派です。

穴守稲荷拝殿

羽田・糀谷界隈には赤い鳥居の神社が何社かありますが、やはりもっとも大きいのが穴守稲荷神社です。

しかも、この拝殿は後に述べるように戦後新たに作られたものです。

奥の宮は合格祈願などの参拝者が訪れる。その右側には出世祈願と書かれています。

奥の宮の鳥居は36基あります。寄進した信者の名前が書かれています。

穴守稲荷の奥の宮の鳥居

参道から向かって右側には神楽殿がある。例大祭などで神楽を奉納します。

穴守稲荷例大祭などで神楽

穴守稲荷神社を道路で隔てたとなりには、以前は日本航空の訓練センターがありました。現在は新整備場地区に建てた新しい訓練センターが建てられたため、あたらに住居用高層マンションがたちました。

マンションの1階中央には、「名残り」を留めるようにボーイング747のフライトシュミレーターが置かれています。

フライトシュミレーター

穴守稲荷神社の由来とエピソード

映画『クレージーの怪盗ジバコ』にも映し出された大鳥居

穴守稲荷神社ができたのは文化元年の頃(西暦1804年頃)となっています。

穴守稲荷の「穴守」とは、何の穴を守るのか。そんな素朴な疑問に対して、穴守稲荷神社が刊行した『穴守稲荷社史』にはこう書かれています。

江戸時代(文化・文政年間)に、暴風、波浪によってたびたび決壊する堤防の穴を守るために、稲荷大神を堤上に勧請したのが始まりです。(東京都神社庁長・平岩昌利氏)

東京湾や多摩川に隣接している羽田らしく、水害による堤防の穴から人々を守るという意味だったのです。

ところで、穴守稲荷神社は、もともとは現在の場所ではなく、空港島と言われる、海老取川の向こう側の旧羽田空港の場所にありました。

今は旧空港、旧整備場となっていますが、羽田飛行場や穴守稲荷、海苔の産地、競馬場、海水浴に賑わい、農業や漁業を行う地域住民も生活していました。

当時の穴守線(現京急羽田空港線)は、その空港島まで伸びていました。駅名は穴守でした。

ところが、戦後アメリカに接収され、48時間以内の立退きを穴守稲荷神社や地域住民に要求。

穴守線の、穴守ー稲荷橋(現在の穴守稲荷駅)間も休止されるだけでなく、稲荷橋より先も穴守線は半分撤収され、蒲田まで続く物資輸送の蒲蒲連絡線に使われてしまいました。

きちんとした立ち退き手続き(立退き料等)もないまま追われた穴守稲荷は、現在の場所に苦労しながら再建されたのです。

ただ、穴守稲荷神社の大鳥居だけはどうしても撤去できなかったそうです。撤去しようとすると、作業員が負傷するなどの不運・不幸が続いたというのです。

その結果、鳥居(一の大鳥居)はそのままで、その場所には羽田空港が作られました。

当時の映画を見ると、羽田空港の駐車場のあたりに鳥居が立っていたことがわかります。

クレージーの怪盗ジバコ
『クレージーの怪盗ジバコ』(1967年、東宝)より

現在は羽田沖に移設されしていますが、当時(1994年)は「移設成功」がニュースになったほどです。

それらの経緯は、『穴守稲荷社史』(穴守稲荷神社)に詳しく書かれています。

現在の穴守稲荷神社

羽田の神社というと、天照大御神を祀った羽田神社と、稲荷信仰の穴守稲荷神社が二大神社といわれています。近隣の萩中や糀谷ぐらいまで、両神社の系列といえる神社が数多く存在します。

もっとも、萩中神社(羽田神社の兼務社)のように、神社内に赤い鳥居、すなわち稲荷信仰の東官守稲荷神社があるなど、信仰は違うはずなのに共存していることもあります。

萩中神社
萩中神社の拝殿から向かって左側に東官守稲荷神社の赤い鳥居が見える

地元の人なら、穴守稲荷神社はもちろん有名だが、そうでない地域の人がとくに信仰もないのに知っているとすれば、それはテレビの影響もあるのではないでしょうか。

ズバリ、『スチュワーデス物語』(1983年、大映テレビ、TBS)です。

堀ちえみ演じる、ドジてノロマな亀のような客室乗務員訓練生が、厳しい訓練や試練を乗り越えて客室乗務員として訓練センターを卒業していく話です。

羽田の旧訓練センターが穴守稲荷神社の隣にあるために、しばしば穴守稲荷神社がロケ地に使われました。

とくに第2回などは、訓練生たちが拝殿の前でいっせいにウインドブレーカーを脱ぎ捨て、教官も一緒に踊りだすというとてつもないシーンもあります。

スチュワーデス物語
『スチュワーデス物語』第2回より

しかし、それは穴守稲荷神社のパブリシティになっただけでなく、祟りや呪いといった悪い迷信を払拭する意味で、イメージアップにもなったという見方もできます。

いずれにしても、テレビドラマのロケに対しても最大限の協力をした太っ腹な神社ということが言えます。

今は、旧訓練センターも建て替えられ、ドラマ当時とは異なる光景になりましたが、DVDでドラマを鑑賞すると、当時の光景にまたお目にかかれます。

穴守稲荷神社
〒144-0043 東京都大田区羽田5-2-7
TEL03-3741-0809 FAX03-3741-0713

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