怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン 小さな事件は通常運転です(綿貫渉著)は、元鉄道員でYouTuberの著者が駅員としての体験を綴ったエッセイです。遇する日常のトラブルや、表からは見えにくい駅の裏側に焦点を当てています。
著者は鉄ちゃんです。
高校生でも募集しているアルバイトとして、鉄道会社で働きました。
周囲の高校生は、昭和鉄道高校とか、岩倉高校とか、鉄道の授業が正課で、卒業後は鉄道会社に就職する人ばかりでしたが、著者だけは普通高校。
まだ、このときは、アルバイト先というだけで、鉄道会社に就職したいというところまでは考えていなかったようです。
一浪後、大學に入学し、卒業後はバス会社に勤務しますが、結局鉄道会社(JR)に転職します。
本書は、駅員として働く著者が体験した、酔っ払い、痴漢、電車遅延、クレーム対応などの具体的な事例を通して、駅員の苦労やメンタルの持ち方について語られています。
また、駅員のヒエラルキーや勤務体制、役職・収入の格差についても詳しく紹介されています。
現業は年功序列
私の本、「怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン」ですが、重版が決定しました!
重版される本って全体の15%程のようなので、それを達成させていただきありがとうございます。
初版が貴重なものになるよう頑張ります pic.twitter.com/6tojwN141V— 綿貫渉 (@wataru_w) July 28, 2022
鉄道会社は、総合職以外に、運転士、車掌、営業(駅員)という現業部門があるそうです。
「営業」の定義が一般企業と違いますが、顧客(乗客)対応という意味では、たしかに「営業」としての仕事ですね。
仕事は、朝9時から24時間。
それを3度続けて2日休むのが基本だそうですが、たまにその「3度」の間に休みが1日ずつ入ることがあり、そうすると連休にならないのががっかりだそうです。
終電まで業務して、1時から5時まで仮眠を取ります。
でも、安眠はできません。
というか、安眠して寝過ごしたら大変です。
1度寝過ごすと、昇進が1年遅れるそうです。
土日休めないのは大変そう?
いや、一般の人が働いているときに休んだほうが、ゆっくりできるでしょう。
土日なんてどこ行っても混んでいるし。
お盆休みも、きっちり取りたいのは年配の人だけで、若い人はとくに望まないそうです。
半年もすると、職員たちは、「もう土日休みには戻れないな」というそうです。
現業職員に学歴は関係ないそうです。
終身雇用で年功序列。「年」は勤務年数です。
ということは、入社するなら若いほうがいいかも。
でも経験は、ないよりあったほうがいいと思うので、やはり鉄道系の高校に入って、在学中からアルバイトしておくのがいいかもしれません。
余談ですが、昭和鉄道高校というところが、私が現役の頃の合格者は、正直偏差値40もなかったと記憶していますが、今は49と、ほぼ真ん中ぐらいに上がっていました。
鉄道会社の就職は手堅い、という思いが今の若い人にはあるのかも知れません。
ただし、出世がいいとは限らないらしいです。
土日勤務は手当が出ますが、駅長になると土日が休みになるので手当がなく、逆に給与が減る現象が生じるそうです。
著者によると、いちばんいいのは、責任も軽く手当もつく主任だそうです。
一般企業でも、課長以上は組合から抜けて、残業手当が出なくなる、なんて話はありますが、中間管理職はなかなかシビアですね。
また、配属される駅によって、乗降客数、女性職員の有無、勤務シフトなどがかわるそうで、それはまさに「配属先ガチャ」です。
タイトルの「怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン」ですが、乗客相手の業務はいろいろ大変なことがあるそうです。
著者が最も苦手だったのは、苦情対応だそうです。
たとえば、先輩から「絶対に揉める」といわれていたのは、乗り越し精算です。
本書によると、A駅からB駅まで2000円の切符を購入。それが1駅乗り越してC駅まで乗ってしまうと、BからCまでの区間は本来150円なのに、「乗り越し」では500円になってしまうケースが有るそうです。
これは、「区間変更」ではなく「乗り越し精算」扱いとして、特別な計算方法になるらしいのです。
切符売り場には、そのようなことは表示されていませんが、ルールとしては実際に存在する。
これがトラブルのもとになるそうですが、そういうときは率直に、「私も高いと思います。でも私の判断では安くできないし、割り引いてしまうと私が処分されるのてご容赦ください」と言うと、乗客も納得してくれるそうです。
これを、「規則ですから」と紋切り型にやってしまったら、乗客を怒らせるわけです。
鉄道会社に限らず、顧客の苦情対応に使えるかも知れませんね。
現在はYouTuberとして活躍
【速報】ラーメン二郎朝倉街道駅前店にて小ラーメンを食べ、ラーメン二郎全店舗制覇を再び達成しました
まろやかなスープ、ほどよい柔らかさの麺と野菜、ホロホロの豚と最高の一杯でした
これにて
"四街道→朝倉街道(天拝山)乗車券の旅"
ゴールです pic.twitter.com/cNaI1jACr5— 綿貫渉 (@wataru_w) January 28, 2025
現在、YouTuber(チャンネル登録7万人)になった著者は、各地を旅行し、ラーメン二郎を食べ歩いています。
電車のしごとというのは、子供の頃、憧れますよね。
バリアフリー法が施行されてからは、車椅子の人が事前に連絡すると、ホームとドアの間にスロープを渡してくれるようになりましたね。
私の長男が遷延性意識障害で車椅子生活だった頃と、私がふざけて自宅の階段で次男と追いかけっこをして、次男が階段に足をぶつけて親指のナマヅメを剥がしたときに、大げさに車椅子を借りたことがあり、その時もお世話になりました。
それはともかくとして、本書を読むことで、普段の通勤・通学で利用する駅や鉄道に対する見方が変わるかもしれません。
駅員に何かお世話になったり、感心したりしたことはありますか。
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