2025年6月11日、国民民主党は前日に記者会見を開いたばかりの山尾志桜里氏(50)の参院選比例代表公認を取り消すという異例の決定を下しました。この電撃的な方針転換は、同党が「息を吐くように」候補者を募っていた背景と、山尾氏の過去の疑惑が再燃したことによる猛烈な批判が原因でした。
山尾氏の公認は今年5月14日に内定していました。
玉木雄一郎代表が、候補者不足解決のため、「会った人に息を吐くように声をかけている」と語っていた通り、同党は2024年衆院選で候補者不足により3議席を他党に譲った苦い経験から、多数の候補者擁立を至上命題としていました。
そうした中で、白羽の矢が立ったのが、2021年に政界を引退していた山尾氏でした。
決定的となった「失敗会見」
しかし、山尾氏が6月10日に開いた記者会見は、火消しどころか「炎上」を決定的にしました。
約2時間半に及んだ会見で、山尾氏は冒頭で「8年前の自分には大変おごりがあった」と謝罪の言葉を並べたものの、記者からの質問には「この場で新しく言葉を紡ぐことはご容赦いただきたい」「事情を存じ上げません」と答弁を拒否し続けました。
特に問題視されたのは、2017年に報道された倉持麟太郎弁護士との不倫疑惑について、倉持氏の元妻が2020年に自死していたという報道に関する質問に対し、「事情を存じ上げません」と他人事のように答えたことでした。
この発言は、SNS上で「あまりに酷すぎる」「無機質な返答」として激しい批判を浴びました。
批判の論点:説明責任の放棄
山尾氏への批判は、主に以下の点に集中しました。
不倫疑惑への曖昧な対応
会見で山尾氏は「当時の行動は未熟だった」と謝罪しましたが、不倫の事実関係については明確な説明を避け続けました。
記者から、「やっぱり不倫は否定するのか」と問われても、「新しい言葉を紡ぐことは控えたい」と繰り返すのみでした。
ガソリン代・議員パス不正使用への責任転嫁
過去の「ガソリーヌ」疑惑については、「すべて秘書がやったことで全く知らなかった」と責任を転嫁。
議員パスの不正使用についても、「直接謝罪しなかったことが問題」とするにとどめました。
被害者への配慮の欠如
最も深刻だったのは、不倫相手の元妻の自死について「事情を存じ上げません」と答えたことです。
人として、政治家としての資質を疑問視する声が噴出しました。
擁護論の限界
一方で、山尾氏を擁護する声も一部には存在しました。
「過去の過ちを乗り越えて再起を図る権利はある」「石打ち刑のような批判は行き過ぎ」といった意見です。
しかし、こうした擁護論も、会見での山尾氏の対応を見て急速に説得力を失いました。
政治評論家からは、「謝罪を並べながらも核心に近づこうとせず、2017年当時と何も変わっていない」「成長なき再挑戦では支持は得られない」との厳しい分析が相次ぎました。
公認取り消しの妥当性:「遅すぎた」vs「当然」
公認取り消しの妥当性については、様々な見方が存在します。
「遅すぎた」との批判
– 最初から予想できた展開であり、身体検査が不十分だった
– 党の支持率低下を招いてから対応するのは後手に回りすぎ
– 候補者不足を理由に安易に擁立を決めた責任は重い
「当然の判断」との評価
– 全47都道府県連から公認見送りを求める声が上がった
– 党が一丸となって選挙を戦える環境を整えるには必要な決断
– 国民の信頼を失った候補者を擁立し続けることの方が問題
「会見には党関係者が立ち会うべきだった」との指摘
政治関係者からは、「山尾氏一人に会見を任せるのではなく、党の幹部が同席して党としての姿勢を明確にすべきだった」との声も上がっています。
玉木代表は会見前に、「しっかり説明責任を果たすように」と求めていましたが、結果的に山尾氏の独走を止めることはできませんでした。
国民民主党の政治的責任
玉木さん、榛葉さん、遅すぎ
山尾しおり氏公認取り消しへ国民民主、山尾志桜里氏の公認取り消しへ 参院選比例代表 | 毎日新聞 https://t.co/uZgTrvyxkY pic.twitter.com/mHH2674Mka
— ダパン君 (@dapanblog) June 11, 2025
今回の騒動で最も問題視されるべきは、国民民主党の候補者選定プロセスの甘さです。
玉木代表は、「厳しく受け止めている」と語り、選定プロセスの見直しを表明しましたが、そもそも「息を吐くように」候補者を勧誘するという手法自体に無理があったことは明らかです。
榛葉賀津也幹事長は、取り消し理由について「昨日の会見が…」と語りましたが、これは問題の本質を見誤っているという声もあります。
会見の内容が問題なのではなく、そうした会見しかできない候補者を擁立したこと自体が問題だったのです。
政治的影響と今後の展望
この騒動により、国民民主党の支持率は明らかに下落しました。
同党は2024年衆院選以来好調を維持してきましたが、「山尾ショック」と呼ばれる今回の事態で、その勢いに陰りが見えています。
山尾氏については、政治家としての再起は極めて困難になったとの見方が支配的です。
過去の疑惑に真正面から向き合うことなく、説明責任を果たさない姿勢では、今後も有権者の信頼を回復することは不可能でしょう。
政治家の説明責任と党の候補者選定責任
今回の騒動は、政治家個人の説明責任と政党の候補者選定責任の両方を問うものとなりました。
山尾氏の会見は、「何も変わっていない」政治家の限界を露呈し、国民民主党の安易な擁立方針の問題点を浮き彫りにしました。
政治に求められるのは、誠実な説明と正面からの対話です。それができない政治家に国政を担う資格はなく、そうした候補者を擁立する政党にも厳しい責任が問われることを、この騒動は改めて示しています。
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