『栃木実父殺害事件』は1968年に起こった実話をもとに漫画化。尊属殺重罰規定違憲判決といわれたが改めて毒親について考えた

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『栃木実父殺害事件』は1968年に起こった実話をもとに漫画化。尊属殺重罰規定違憲判決といわれたが改めて毒親について考えた

『栃木実父殺害事件』という1968年に起こった実話をもとにした漫画を読みました。当時、尊属殺重罰規定違憲判決といわれました。『殺人犯の正体』(鍋島雅治 (著), 岩田和久 (著)、大洋図書)という殺人事件9件をマンガにまとめた本に収録されています。

尊属殺重罰規定違憲判決とはなにか

『栃木実父殺害事件』は、昨日の『ロボトミー殺人事件』同様、『殺人犯の正体』(鍋島雅治 (著), 岩田和久 (著)、大洋図書)という殺人事件9件をマンガにまとめた本に収録されています。

『ロボトミー殺人事件』はロボトミー手術で前頭葉を切除された犠牲者が担当医師の家族を殺害した事件をもとにした漫画
『ロボトミー殺人事件』を読みました。実話をもとにした漫画です。ロボトミー手術の犠牲者が、担当医師の家族を殺害事件です。『殺人犯の正体』(鍋島雅治 (著), 岩田和久 (著)、大洋図書)という殺人事件9件をマンガにまとめた本の中に収録されています。

この事件は、娘による実父殺害事件で、尊属殺重罰規定違憲判決としても有名な事件です。

それまでは、子が親を殺害した場合、普通の殺人よりも罪が重いとされていた刑法200条が、憲法第14条にある「すべて国民は、法の下に平等」に反する、と否定されて無罪判決がくだされたのです。

しかし、これはたんに、あまりにも加害者の娘が不憫だ、ということでそうなっただけで、親子間の性犯罪をなくすための判例には残念ながらならなかったようです。

昨年4月、当時19歳の娘に性的虐待を行った父親が、無罪になった判決が批判を受けました。

なぜ無罪になったかというと、刑法の性犯罪規定では、「暴行・脅迫が証明できなければ罪に問えない」とされていることが根拠になったのです。

しかし、それは教条主義というもので、親子の絶対的な関係という現実を無視したものと批判されるのは当然のことだと思います。


その判決のおかしさから、約60年前のこの事件が、「真逆の名判決」として改めて見直されました。

娘が親を殺してしまった不幸な結末である以上、なんとかならなかったのか、という残念な思いはありますが、少なくとも性的虐待を無罪という形でけじめをつけたといえるのではないかと思いました。

1968年、栃木県矢板市で当時29歳の女性が、近親姦を強いた当時53歳の実父を殺害しました。

戦後、憲法や民法は新しくなりましたが、親子関係は家制度時代のままです。

民法では、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」(民法第818条第1項)とあります。

「服する」なんて、奴隷的表現です。

これは、現在もそのままです。こんな国はほかにありません。

また、刑法200条(尊属殺重罰規定)では、親殺しは普通の殺人よりも重罪に処す決まりがあり、従来の判決では死刑か無期懲役は免れなかったのです。

しかし、判決では、刑法200条が憲法違反であると指摘し、娘は実刑にならず、それが契機となって1995年には刑法200条そのものが削除されたのです。

ということで、前置きが長くなりましたが、具体的にどんな事件だったのか見ていきます。

事件の経過

初めてコトがあったのは娘が14歳の時。

その夜から、週に2~3度関係がありましたが、娘は父の恐怖から逆らえませんでした。

それでも1年後には、勇気を奮って母に報告。

母は夫をなじります。当然です。

が、自分は他の子供を連れて7人姉弟のうち、娘とその妹を父親のもとに残して家を出ていってしまいました。

逆に誰も邪魔するものがいなくなったことで、父親は存分に御伽をさせました。

娘は学校へも行けず5人を出産(うち2人は死産)、5回の中絶を経験し、6回目の手術のときに、これ以上は体がぼろぼろになると医師にいわれ、不妊手術をしました。

子どもが3人いれば生活費もかかりますから、娘は印刷会社で働くようになります。

そこで、29歳のときに7歳年下の男性社員に“初恋”をしました。

父親に「嫁に行きたい」と告白するも、父親は刃物を持って「そいつをぶっ殺してやる」と暴れ、以来仕事にも行かずに娘を監視しつつ、日に2度も3度も娘を求めました。

それだけでなく、嫉妬から3人の子供の「始末」までほのめかされたため、ついに娘は父親を絞殺。

父親は、「お前に殺されるなら本望だ」と無抵抗でコト切れました。

『殺人犯の正体』によると、事件の概要を知った弁護士は、無報酬で娘の弁護を引き受けたとありますが、新聞社のネット記事を見ると、娘はお金がなかったのでジャガイモを報酬として受任したとされています。

それと本書には出てきませんが、父親は植木職人で腕は良いらしく、月のうち10日働いて20日飲んだくれても暮らしてはいけたようです。

人間、暇だとろくなことをしません。

毒親を指摘できる世の中に


本書は、AmazonKindle読み放題などで読むことができます。

個人的な感想は、犯罪の影に、もとい、人生の不幸の背景に「毒親」あり、といったところでしょうか。

この父親のような極端な例はわかりやすすぎますが、逆にそのことで、世の中には毒親と普通の親がいる、と都合よく勘違いしてしまう人もいるかも知れませんね。

第三者的にわかりやすい虐待や暴力などがない、一見普通の親でも、過干渉が子を不幸にしていることもあります。

でも、親子関係は絶対ですから、なかなかそれを打破して自分の自由な人生観を構築することはむずかしいんですね。

今回のような性的虐待でなくても、親の価値観から子供の結婚に反対するというのは、結局同じことなんです。

何しろ、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」(民法第818条第1項)ですから。

人間、無謬ではありませんから、どんな親でも毒親になり得るのです。

ですから、こうした事件で、「ああ、馬鹿な親だ。それに比べたら自分は普通だ」ではなくて、他山の石という発想があってもいいのではないでしょうか。

とはいえ、これを読まれている方も境遇は様々で、毒親のもとに育ったことがないと、毒親とはなにか、ということを理解しにくいかもしれません。

また、一口に毒親と言っても、内容も、子の受け止め方も様々だと思います。

ただ、本件で刑法200条が否定されたように、私たちはこうした事件から、少なくとも、情は情として、親を絶対とする呪縛からは解放される教訓にしてもいいのではないかと改めて思いました。

そして、家庭内のことであっても、公序良俗に反することについては、なんとか公的機関による「善意の介入」で解決はできないものか。

近頃話題の乳幼児虐待事件などにもいえる願いです。

以上、『栃木実父殺害事件』は1968年に起こった実話をもとに漫画化。尊属殺重罰規定違憲判決といわれたが改めて毒親について考えた、でした。

殺人犯の正体 - 鍋島雅治, 岩田和久
殺人犯の正体 – 鍋島雅治, 岩田和久

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