野村克也に挑んだ13人のサムライたち(橋上秀樹著、双葉社)は、ヤクルト、阪神、楽天で行動をともにした橋上秀樹の野村克也評です。野村克也の書籍は、似たような内容がたくさん出ていますが、側近から見て野村野球とは何だったのかを知ることができます。(文中敬称略)。
野村克也(のむら かつや、1935年〈昭和10年〉6月29日 ‐ 2020年〈令和2年〉2月11日)の祥月命日です。
実績はいまさら取り上げるまでもありませんが、プロ野球史における屈指の強打者・名捕手として知られ、戦後初の三冠王、選手と監督の両方で3000試合(いずれも歴代2位)を達成した唯一の人物、当時歴代最多のシーズン52本塁打、戦後初の三冠王をはじめとする数々の記録を打ち立て、実働26年でベストナインを19回獲得(歴代最多)、オールスターゲームに21回出場(歴代最多)。監督としても24年間(うち選手兼任8年)で歴代2位の試合数を重ね、数多の人材と名言を遺しました。
本人は、どちらかというとあまり押しの強い方ではなく、ぶつぶつとしか言えないため、球団に戦力補強をさせることができず、他球団を整理されたり、重用されていなかったりした人材を上手に使う監督で、「野村再生工場」といわれました。
しかも、セルフプロデュースの上手い人で、マスコミを上手に使って自分の発言を新聞記事の見出しにしました。
そんな野村克也のもとで、楽天監督時代のヘッドコーチをつとめた橋上秀樹が、2011年の野球評論家時代に著した『野村克也に挑んだ13人のサムライたち』(双葉社)を読みました。
この本は、野村克也キャリアとその影響を深く掘り下げています。特に、彼の指導を受けた選手たちの経験や、彼との対立や友情について詳しく描かれています。野村克也の厳しい指導スタイルと、それに挑んだ選手たちの奮闘を通じて、野球の魅力がより一層引き立ちます。
当時、スポーツ紙で、ともすれば野村克也監督と不仲を伝えられた選手やコーチとの関係について、選手・コーチとして行動をともにした、橋上秀樹の視点からの「真相」が書かれています。
野村克也本人名義の書籍はたくさんありますが、側近が野村をどう見たか、という書籍はめずらしいので、新刊ではありませんがご紹介します。
本当の不仲は岡田彰布と今岡誠だけ……
大きな実績を残している組織は、礼儀についてもしっかり教育しているし、礼儀をきちんとわきまえた人間は、仕事においても立派な結果を出すものhttps://t.co/J0evNrAgql
— 野村克也 名言集 (@NomuraBOT) October 24, 2024
苫篠賢治、西村龍次、長嶋一成、岡田彰布、今岡誠、池山隆寛、飯田哲也、古田敦也、岩隈久志、山口重幸、一場靖弘、柳田浩一、そして橋上秀樹自身と13人が対象です。
が、本当に分かり合えなかった冷えた関係は、岡田彰布と今岡誠だけだと読めました。
ただ、岡田彰布の場合は、今岡の紀要を巡って、当時2軍監督として今岡側を励ましていただけなので、直接の対立ではなかったと思うので、本当の不仲は今岡誠だけだったのではないかと思います。
阪神という人気球団で、かつ幹部候補生として最初から扱われてきたので、野村将棋の駒のような役回りができなかったのかもしれません。
しかし、自分をどう使うのか、馬には乗ってみよ人には添うてみよという前向きな気持ちを、とくに今岡誠は持っても良かったのではないか、と思いました。
Copilotは、本書の見どころを、こうまとめています。
1.野村克也のキャリア……彼のプロ野球選手としての経歴、監督としての功績について詳しく紹介されています。
2.挑戦者たちのストーリー……野村さんに挑んだ13人の選手たちの個々のエピソードが、感動的に描かれています。
3.野球の哲学……野村さんの野球観や指導理念が、具体的な事例を通じて深く掘り下げられています。
4.対立と和解……野村さんと選手たちの間で起こった対立や和解のエピソードが、ドラマチックに描かれています。
この本は、野村克也さんの人生と野球に対する情熱をより深く理解するための貴重な一冊です。野球ファンにとっても、非常に興味深い内容となっています。
野村克也に挑んだ橋上秀樹と挑まなかった(?)松本匡史
ノムさんこと野村克也さんはライオンズOB pic.twitter.com/c0UwtDZcLh
— リック俺(プラモ垢)※バセドウ病三年生 (@rms0318rickore) October 16, 2024
本書をなぜ読む気になったかというと、先日、巨人三軍と独立リーグのチームの試合をFacebookがライブ配信していて、解説が松本匡史だったのです。
松本匡史は、せっかく巨人の幹部候補生だったですが、退団して野村楽天のヘッドコーチに就任。
にもかかわらず、1年で退団したことを思い出しました。
どうしてなのかその理由が知りたかったのですが、本書によると、野村監督の欲しがっている情報に対して、松本匡史が臨機応変に応えることができなかったから、と書かれています。
せっかく三顧の礼で迎えたのにプロは厳しいですね。
楽天の三木谷浩史には、一度別のポストにつかせるなどして勉強させ、松本匡史にもっとチャンスを与えてもよかったのではないかと思いました。
一方、その松本匡史に代わってヘッドコーチに就任したのが、橋上秀樹でした。
現役時代の成績も、知名度も、松本匡史の方がずっと上でしたが、そのチャンスをものにして参謀役をつとめ上げた橋上秀樹は、その後、巨人や楽天、西武などからいずれも重要ポストで声がかかっています。
人間ですから相性もあるでしょう。
が、その上司と自分の立場で何をすべきか、「臨機応変に応え」られるかどうかが人生の明暗を分けるというのは、プロ野球の世界に限らず、私たちにも教訓になることではないかと思います。
その意味で、野村ファン、橋上ファン、松本ファンであるかどうかにかかわらず、一読をおすすめします。
みなさんの野村克也監督評は、いかがですか。
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