「推し活」という言葉が日常会話に定着して久しくなりました。いずれの推し活でも共通するのは「応援に価値を感じている」ことです。

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「推し活」という言葉が日常会話に定着して久しくなりました。いずれの推し活でも共通するのは「応援に価値を感じている」ことです。

「推し活」という言葉が、日常会話に定着して久しくなりました。好きなアイドルのライブに通う、アニメキャラクターのグッズを集める、配信者に投げ銭をする。その形はさまざまですが、いずれも共通しているのは「応援すること自体に価値を感じている」という点です。

かつては、車を買ったり、毛皮のコートや装飾品をまとったりすることが「生きがい」のような時代もありましたが、今や推し活の市場規模は3兆円を超え、日本経済の一角を担う存在になっています。

これは単なるブームではなく、消費そのものの意味が変わってきたサインかもしれない、というのが今日の話です。

数字で見る「推し活」の規模


推し活総研が2025年1月に実施した大規模アンケート(2万3069人対象)によると、推し活人口は約1,400万人で、前年から250万人増加しています。

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日本の総人口のおよそ10人に1人が、何らかの「推し活をしている」という計算になります。

1人あたりの年間推し活消費額の平均は約25万円で、推し活市場全体の規模は年間約3兆5,000億円に上ります。

ライブ・エンタメ市場も過去最大規模に達しました。

コンサートプロモーターズ協会の調査によると、2024年のライブ総動員数は約5,940万人、総売上額は約6,122億円と、いずれも過去最多を記録しました。

コロナ禍前の2019年と比べると、総売上額は67%増加しています。

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これだけの規模になると、もはや「一部の熱狂的なファンの話」では済まされません。

「モノ消費」から「応援消費」へ

推し活の出費で多いのは、公式グッズやチケットだけではありません。

調査で聴取した「遠征」から「ネイル」まで9つのカテゴリー全てで推し活出費が発生しており、上位は「公式グッズ」「チケット」「遠征費」の順でした。

ここで注目したいのが「遠征費」の存在です。

推しに会うために新幹線や飛行機に乗り、ホテルを取り、現地でグッズを買う??これは単なる「モノを買う消費」ではなく、「体験そのもの」と「応援の気持ちを伝えること」にお金を払っているのです。

さらに近年は、投げ銭や月額課金型のサポートといった新しい消費行動も広がっています。

こうした消費行動は、寄付と同様に「利他性」に基づく満足感に寄与しており、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に「満たされた良い状態」を意味する概念)に影響を与え得るという指摘もあります。

つまり、推し活にお金を使うことは「自分のため」でありながら、同時に「推しのため」でもある。

この二重の満足感が、推し活消費の強さの源泉といえます。

物価高や円安がどの程度推し活の予算に影響するかを聞いた調査でも、推し活費を「減らす」と答えた割合は比較的低く、他の支出を削っても推し活費は維持しようとする傾向が確認されています。

不景気でも「推し活費だけは聖域」という声はよく耳にしますが、それを裏付けるデータといえるでしょう。

「若者の文化」ではなくなってきた

推し活というと若い女性のイメージが強いかもしれません。

確かに、15~19歳女性の推し活率は56%と突出していますが、30代前半女性でも30.4%が推し活をしていると回答しています。

しかし、実態はより幅広い層に広がっています。

推し活人口1,400万人のうち、34歳以下と35歳以上がほぼ半々を占めており、35歳以上への推し活の普及が進んでいます。

「推し活」って、私は韓国ドラマを連想します。

さらに興味深いのが支出額のデータです。

年間の推し活支出額が最も多かったのは35?39歳男性で約44万5,000円、次いで40?44歳男性が約37万2,000円でした。

若い世代が推し活人口の中心である一方、可処分所得の高い中高年男性が実は最もお金を使っているという構図があります。

推し活はもはや「若者のサブカルチャー」を超え、幅広い世代の「ライフスタイルの一部」として定着しつつあります。

経済・地域への波及効果

推し活の影響は個人消費にとどまりません。

日銀の「さくらレポート」では、小売業でキャラクターとのコラボ商品が完売する事例が報告されており、推し活が企業収益や地域経済を動かす力を持つことが示されています。

アニメの「聖地巡礼」は観光業を活性化させ、アイドルの地方公演は宿泊・飲食・交通に広く波及します。

海外アーティスト公演に絞ると、K-POPアーティストの公演だけで年間844億円の売上があり、チケットの平均単価は他の公演より約5,000円高い水準にあります。

推し活は、コンテンツ産業・観光業・小売業をつなぐ「横断的な経済エンジン」として機能し始めています。

消費の「意味」が変わった


推し活については、批判的な意見があります。

ホストやカルト宗教に入れあげる人と同じマインドだと、極論を述べるひろゆきさんのような人もいます。

だからといって、昭和世代のように、車や装飾品など、モノに金をかけることのほうが「マシ」なのか。

いや、そういうことでもないでしょう。

しょせん、ブームをこしらえて「仕掛ける側」に、カネを落とす点では同じことです。

資本主義社会は、持たざる者が搾取されるだけでなく、消費させられる社会でもあるのです

いずれにしても、「何を買うか」から「誰を応援するか」へ、現代は消費の動機そのものが変化しています。

3兆円超の市場を支えているのは、特別な人たちではありません。仕事帰りにライブへ向かう会社員、スマートフォンで配信を見ながら投げ銭をする主婦、週末にグッズを並べる中学生。

そのひとりひとりの「応援したい」という気持ちが積み重なった結果です。

消費が「モノを手に入れること」ではなく「誰かと繋がること」を意味するようになった今、企業も地域も、その変化に向き合う必要があるのかもしれません。

みなさんは、どんな「推し活」をされていますか。

推し活の心理臨床:サブカルチャーと聖地の視点から [こころの科学増刊] - 岩宮 恵子
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