子どもがつり革から手をすべらせて危うく傘の骨に目を刺しそうな動画。子どもが悪いのか、親が悪いのか、周囲の乗客が悪いのか

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子どもがつり革から手をすべらせて危うく傘の骨に目を刺しそうな動画。子どもが悪いのか、親が悪いのか、周囲の乗客が悪いのか

子どもが、電車内のつり革にぶら下がって遊んでいたところ、手をすべらせて落ちてしまい、危うく隣の人の傘の骨(露先)に目を刺しそうな動画がXにポストされました。この場合、子どもが悪いのか、親が悪いのか、周囲の乗客が悪いのか、いかが思われますか。

この手の投稿は、しばしば行われるのですが、検索して出てきたものをシェアします。

子どもがつり革にぶら下がって遊び、手が滑って落ちてしまい、隣の人の傘の先に目を突きそうになるという危険な状況です。


子どもにとって、電車内のつり革は非常に魅力的な存在です。

ちょうど手が届くか届かないかの絶妙な高さにあり、「つかまりたい!」という強い好奇心を刺激します。

特に幼児から小学校低学年くらいの子どもは、自分の身体能力を試したい、新しい動きに挑戦したいという発達段階にあります。

つり革にぶら下がることは単なる「遊び」ではなく、自分の能力を確かめる大切な経験なのです。

しかし、発達心理学の観点から見ると、子どもの危険認識能力は年齢によって大きく異なります。

研究によれば、危険を正しく認識する能力が芽生え始めるのは年長児(5~6歳)頃からとされています

幼児・児童における危険状況の認知の発達-子どもの安全教育に関する心理学的研究-
幼児・児童における危険認知能力の発達過程について、実験的に検討した。その結果、こうした認識が芽生え始めるのは年長児頃であること、正しい危険認識に基づき、危険回避行動ができるようになるのは小学1年以上であることが示された。また保護者へのアンケート調査から、保護者らは不審者の連れ去りに関して不安を感じてはいるものの、そうし...

それより小さな子どもは、つり革から手が滑ることや、落下した際に周囲の物(この場合は傘の先)で怪我をする可能性があることを、十分に予測できないのです。

また、子どもの行動特性として、保護者が目を離していなくても、事故は約0.5秒という一瞬で起こりうるという研究結果もあります

子どもの行動特性に関する研究 ~子どもの不慮の事故を防ぐために~ | | 特定非営利活動法人キッズデザイン協議会
公益財団法人大阪産業局/積水ハウス株式会社/コクヨ株式会社/株式会社ジャクエツ/ 特定非営利活動法人GIS総合

つまり、子どもがつり革で遊ぶ姿を見ていても、手が滑る瞬間を予測して防ぐことは、親にとっても非常に難しいのです。

さらに、子どもの「トンネル視」という特性も関係しています。

幼児は視野が狭く、一つのことに集中すると周囲の状況が見えなくなる傾向があります

https://www.iatss.or.jp/entry_img/03-2-05.pdf

つり革にぶら下がることに夢中になると、周囲の乗客や持ち物(傘など)への注意が完全に欠如してしまうのです。

では、大人たちの視点から考えてみます。

親の視点から考える

法的な観点から見ると、親には子どもの行動に対する監督責任があります。

民法714条によれば、子どもに責任能力がない場合、親が代わりに責任を負うことになります

未成年の子どもが事故を起こした場合の親の責任 | 船橋の弁護士
未成年の子どもが事故を起こした場合の親の責任についてのコラム記事です。子どもの事故における親の法的責任と対応策を詳しく解説します。このコラムで親の責任の理解を深め、情報収集にお役立て頂ければと思います。 | 船橋の弁護士【牧野法律事務所】

法律上は、親が子どもの行動を適切に監督する義務があり、それを怠った場合には責任を問われる可能性があるのです。

しかし、現実の子育てにおいて、子どもの行動を常に完璧に管理することがいかに難しいかは、子育て経験のある人なら誰でも理解できるでしょう。

特に公共交通機関という限られたスペースでは、さまざまな要素に注意を払いながら子どもを見守らなければなりません。

電車内で子どもがつり革にぶら下がるという行為は、確かに親として注意すべき行動です。

しかし、「電車内では静かにしていなければならない」という厳しすぎるルールを課すことで、子どもの自発性や探究心が損なわれる可能性もあります。

たとえば、公共交通機関を利用する際には、子どもが飽きないような工夫があってもいいのではないでしょうか。

さらに、「お子様の行動に関心と責任を持つ」ことの重要性も指摘されています

安全を守るために、小さなお子様と電車に乗るときの“騒がない”マナーを教えるポイント | Manner Up Magazine
外出するとついはしゃぎがちな子どもたち。公共の場である電車の中では静かに過ごすことが、周囲も本人も安全を守ることにつながります。小さなお子様でもマナーが守れるようになるポイントをお伝えします。

子どもが騒いでも、親がきちんと注意をしていれば、周囲の人はある程度許容してくれるものです。

問題は、子どもの危険な行動を親が放置している場合でしょう。

周囲の乗客の視点から考える

日本社会には、他人の子どもに注意することへの躊躇があります。

ある調査では、電車内で子どもが騒いだり危険な行動をとったりした際に、注意したら親から「邪魔しないで」と怒られたという経験も報告されています

Just a moment...

このような経験は、第三者が介入することへの躊躇をさらに強めるでしょう。

一方で、公共空間における安全確保は、一人ひとりの責任でもあります。

子どもが明らかに危険な状況にある場合、「怪我したら危ないよ」と優しく声をかけることは、決して過剰な介入ではないはずです

電車の吊り革で遊んだらダメなんですか?|ママの交流掲示板|ママスタコミュニティ
子供が吊り革で楽しそうに遊んでいたのでやらせてたら、「怪我したら危ないよ」と知らない人が注意してきた。楽しそうに遊んでいる子供の好奇心を伸ば・・・ママの交流掲示板「ママスタコミュニティ」は、あなたの質問に全国のママが回答してくれる助け合い掲示板です。

実際、そのような声かけが事故を未然に防ぐこともあるでしょう。

また、公共交通機関での子連れ利用についても、様々な意見があります。

「子どもは立つべき」という意見がある一方で、「子どもが安全に立てるようにできていない」という指摘もあります

電車で子供を座らせる親、どう思いますか?(39歳女性) | 生活・身近な話題 | 発言小町
先日、地下鉄に乗っていた時のことです。混雑していた車内で席がひとつ空き、近くに立っていた母親が自分の小学生くらいの息子(たぶん二人は親子でしょう)を座らせました。それを見ていた中年夫婦の夫の方が、わざと大きな声で「まったく近頃の親はわけわか…

子どもはバランス感覚も脚力も大人に比べて劣っており、中途半端に混雑している時は特に危険です。つり革にもつかまれず、手すりも空いていない場合、座席に座らせることも一つの選択肢かもしれません。

公共交通機関における子ども連れに対する理解と配慮も必要です。

近年、高齢者や障害者等に対する公共交通機関のバリアフリー化が進展しています。それに伴い、子ども連れの移動における制約も改善されてきましたが、まだ十分とは言えない状況です

https://www.mlit.go.jp/common/001002187.pdf

まとめ

今回の電車内での事故について、子ども・親・周囲の乗客それぞれの視点から考察してきました。

この事例から見えてくるのは、単純に「誰が悪い」と決めつけられない問題の複雑さです。

子どもには発達段階に応じた好奇心と未熟な危険認識能力があり、親には子どもを見守る責任と現実的な限界があります。

そして周囲の乗客には、公共空間の安全を共に守る社会的な役割があります。

要は、「誰の責任だ」「どっちが悪いか」なんて体面を考えるよりも、親であろうが周囲の人だろうが、気がついた人が適切な対応を取れるようにすることではないかと思いました。

「いじめ」と幼児期の子育て―親・保育者の責任と役割 - 平井 信義, 本吉 円子
「いじめ」と幼児期の子育て―親・保育者の責任と役割 – 平井 信義, 本吉 円子

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