座位行動の認知機能への影響は、活動の種類によって異なります。テレビ視聴と読書では認知機能への影響が全く異なる研究報告も

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座位行動の認知機能への影響は、活動の種類によって異なります。テレビ視聴と読書では認知機能への影響が全く異なる研究報告も

「長時間座り続けるのは健康に悪い」──このような情報を目にしたことがある方は多いでしょう。確かに、運動不足は様々な病気のリスクを高めることが知られています。しかし、最新の研究によると、同じ「座っている」状態でも、何をしているかによって脳への影響が大きく異なることが明らかになりました。

この驚くべき発見は、私たちの日常的な習慣を見直すきっかけとなるかもしれません。

ことに、私のような引きこもり派によっては、朗報と言えるかもしれません。

研究が明らかにした二種類の「座り方」

今日の情報源です。

システマティックレビュー研究によると、座位行動は大きく二つに分けられます。一つは受動的な座位行動、もう一つは活動的な座位行動です。

受動的な座位行動とは、テレビを長時間見たり、何もせずにぼーっと座っているだけの状態を指します。これに対し、活動的な座位行動には、読書をしたり、パソコンで調べ物をしたり、仕事で頭を使ったり、他人と会話をしたりすることが含まれます。

この研究では、合計85件の研究(参加者数約157万人)を分析しました。その結果、テレビ視聴を調べた43件の研究のうち、65%にあたる28件の研究が、長時間のテレビ視聴と認知機能の低下に負の関連があると報告しています。

一方、活動的な座位行動を調べた58件の研究では、認知機能との負の関連を報告したのはわずか5件(8.6%) しかありませんでした。

なぜテレビ視聴が脳に悪影響を与えるのか

テレビ視聴が認知機能に悪影響を与える理由はいくつか考えられます。

第一に、テレビ視聴は受動的な活動であることが挙げられます。多くのテレビ番組は、視聴者が積極的に考えたり、反応したりする必要が少なく、脳をあまり刺激しません。

第二に、テレビを長時間見る人は、運動量が少なくなる傾向があります。また、不健康な食習慣(スナック菓子を食べながら見るなど)を伴うことも少なくありません。

第三に、テレビの光やコンテンツが睡眠の質を低下させる可能性があります。特に就寝前のテレビ視聴は、睡眠リズムを乱す原因となることが知られています。

活動的な座位行動が脳に与える良い影響

一方、読書やパソコン作業などの活動的な座位行動は、脳に良い影響を与える可能性があります。

読書は、文字情報を処理し、内容を理解し、想像力を働かせるという複雑な認知プロセスを必要とします。このような活動は、脳の神経接続を強化し、認知予備能(脳の回復力)を高めると考えられています。

パソコンで調べ物をしたり、仕事で頭を使ったりすることも同様です。これらの活動は、問題解決能力や記憶力、注意力など、様々な認知機能を刺激します。

また、他人と会話をすることは、言語処理や社会的認知など、多様な脳の領域を同時に活性化させる効果があります。

日常生活に取り入れたい「脳に優しい」座り方

この研究結果を踏まえると、私たちの日常生活で実践できることがいくつかあります。

まず、テレビ視聴の時間を意識的に管理することが大切です。例えば、「1日2時間まで」と決めたり、テレビを見ながら簡単なストレッチをするなどの工夫が考えられます。

次に、活動的な座位行動を意識的に増やしましょう。新聞や本を読む習慣を作ったり、新しい趣味(パズル、楽器演奏、語学学習など)に挑戦したりすることが効果的です。

また、座りっぱなしを避けることも重要です。30分に一度は立ち上がり、軽い運動やストレッチを取り入れることで、身体的な健康を維持しながら、脳にも良い影響を与えることができます。

研究の限界と今後の展望

この研究は、座位行動と認知機能の関連について貴重な知見を提供していますが、いくつかの限界もあります。

多くの研究が観察研究であるため、因果関係を確定することはできません。また、活動の内容を詳細に分類することが難しい場合もありました。

今後は、異なる種類の座位活動が脳に与える影響のメカニズムを解明する研究が期待されます。また、高齢者の認知機能を維持・向上させるための具体的な介入方法の開発も重要です。

まとめ:座る時間の「量」だけでなく「質」を見直そう

この研究から学べる最も重要なことは、単に「座っている時間を減らす」ことだけでなく、「座っている間に何をするか」が認知機能に大きな影響を与えるということです。

もちろん、定期的に体を動かすことは、身体的な健康のために依然として重要です。しかし、すべての座位時間が同じように悪影響を与えるわけではないという認識は、私たちの生活習慣を見直す新しい視点を提供してくれます。

特に中高年の方は、認知機能の健康を維持するために、テレビ視聴のような受動的な活動から、読書や学習、社会的交流などの活動的な座位行動へと少しずつシフトしていくことが有効かもしれません。

毎日の生活の中で、ほんの少し意識を変えるだけで、脳の健康に良い習慣を築くことができるのです。今日からでも始められる「脳に優しい座り方」を、ぜひ実践してみてください。

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