
社会学者の有馬哲夫先生のXにおける投稿が話題です。短期プログラムを、本物の留学や正規授業と呼ぶのは不当だと指摘しているのです。短期留学とは、一般的に数週間から3ヶ月未満(1学期間程度)の短期間、海外の学校や教育機関に滞在して学習する形態を指します。
短期留学は、長期留学(学位取得を目的としたもの)に比べ、休暇を利用して気軽に参加できるのが特徴です。
その実態は、「留学」というより「研修」だと私は認識しています。
ところが、スタンフォード大学のように、学外団体に名義と施設を貸し出す事例が多く、正規カリキュラム外の商用プログラムが多数存在し、その参加をもって「スタンフォード大学に留学」と称する事態があるようです。
有馬哲夫先生は、そうした商用プログラムに数ヶ月参加しただけで、あたかも留学したように語ることで、「留学」表記の信憑性を疑問視しているわけです。
「短期留学」自体を全否定する必要はありませんが、それを単に「留学」とだけ表現すると、実態以上の学歴・経験に見えてしまう、という指摘は以前からあります。
経験の粒度を区別してほしい
バカで噴飯物の記事。
短期留学を留学というの?
そもそもどの学部のどの学科の授業 ?スタンフォード大はいろいろな学外の団体のプログラムに教室などの施設を貸し出している。
スタンフォード大の正規のカリキュラムでないものがたくさんある。
業者の名義借りの金儲け。…
— 有馬哲夫 (@TetsuoArima) May 6, 2026
批判が起きやすい理由としては、主に次のような点があります。
1.「正規留学」との区別が曖昧になる
たとえば一般に「スタンフォードに留学していました」と聞くと、多くの人は、
正規課程への入学
学位取得を目的とした在籍
現地学生と同じ授業
厳格な入試や選抜
などを想像します。
しかし実際には、
数週間の語学研修
外部業者主催のサマープログラム
一般向けエクステンション講座
大学施設を借りただけの民間プログラム
※要するに、社会人相手の日曜学級のようなもの
なども存在します。
もちろんそれ自体に価値はありますが、「留学」という言葉だけだと、経験の性質が見えなくなるのです。
2.ブランド利用による「学歴の演出」が起きやすい
特に海外名門大学なら、
「○○大学で学んだ」
「○○大学留学経験」
「○○大学修了」
という肩書きが、社会的信用や知的イメージを強く与えます。
そのため、
実際は数日~数週間
非単位
正規学生ではない
外部団体運営
であっても、経歴欄では簡略化されることがあります。
これは完全な虚偽とは限りませんが、「誤認を誘う表現」です。
有馬先生が「名義貸しビジネス」と感じる背景には、この“大学ブランドの商品化”への反発があります。
3.教育経験の中身が見えなくなる
短期留学にも意味はあります。
たとえば、
英語環境に身を置く
異文化経験
海外生活体験
国際交流
将来の進学の動機づけ
などは十分価値があります。
ただし、それは「研究留学」「交換留学」「学位留学」とは性質が異なります。
全部を同じ「留学」で括ると、
どの程度学術的だったのか
何を学んだのか
どれほど選抜が厳しかったのか
が見えなくなります。
4.「努力の重み」の比較問題が起きる
長期の正規留学経験者からすると、
語学試験
出願
単位取得
学費
ビザ
現地生活
卒業要件
などを乗り越えています。
そのため、数週間プログラムと同列に「留学」と呼ばれることの反発は当然あるでしょう。
いえ、これはマウントではなく、「経験の粒度を区別してほしい」という、もっともな感情です。
数週間かそこらと、正規の学生としての4年間を一緒にするのはやはり無理があるでしょう。
正式に入学していなくても「学歴」になり得る
近年、科目群履修認証制度という、新しい学修の証明が認められつつあります。
2007年度の学校教育法改正によって誕生した制度で、大学などが、一定のまとまりのある学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し、修了者に対して、法に基づく履修証明書を交付できるようになっています。
たとえば、宗門系の大学には、住職になるための「教師課程」というのがありますが、大学に入っていない僧侶は、住職になるために、その大学に正科生として入学はしないけれども、「教師課程」だけを部分的に履修することがあります。
この場合、正式にその大学に入っていなくても、履歴書の学歴欄に「〇〇大学〇〇学部 科目等履修生 入学・修了」と明記できるのです。
住職だけでなく、AIとか経営学とか、実務的な課程は、いくつかの大学で実施しています。
つまり、正科生として入学・卒業していなくても、部分的な履修実績を認められるようになったのです。
ただし、それは裏を返すと、正科生として卒業したのかしないのか、どの科目を履修したのかなど、学歴に厳密さも求められることになります。
「短期留学」も、正直に「短期留学」とか「研修」とか名乗ればいいのであって、数週間の研修なのに、向こうの学校を卒業する留学と同じフリをすることで、その数週間の価値すらきちんと示すことができなくなるように思います。
コンプライアンスの厳しい現代は、田久保真希前伊東市長の一件にとどまらず、わたしたち一般の人々も、学歴により厳密さが求められてくるのではないかと思います。
田久保マッキーに眉をひそめる人が、翻って自分は夏休みだけの渡米を「留学」とか名乗ってたら、そりゃ「おまゆう」になっちゃいますからね。
みなさんは、「留学」や、どこかの大学の科目履修、日曜学級などの経験はありますか。
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