スタンフォード大学の研究チームは、老化に伴う記憶力の低下が腸内細菌の変化によって引き起こされる可能性をマウス実験で明らかに

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スタンフォード大学の研究チームは、老化に伴う記憶力の低下が腸内細菌の変化によって引き起こされる可能性をマウスを用いた実験で明らかにしました。この研究では、高齢マウスの腸内細菌を移植された若いマウスにおいて、認知機能や記憶テストの成績が著しく悪化することが確認されています。

スタンフォード大学の研究チームは、老化に伴う記憶力の低下が腸内細菌の変化によって引き起こされる可能性をマウスを用いた実験で明らかにしました。この研究では、高齢マウスの腸内細菌を移植された若いマウスにおいて、認知機能や記憶テストの成績が著しく悪化することが確認されています。

これまでは、脳の老化に伴い結果として腸内環境が変化すると考えられてきましたが、今回の発見は腸が脳の機能低下を招く直接的な原因になり得ることを示唆しています。

つまり、脳が腸を管理していたのではなく、腸が主体となって脳の調子に影響を与えているわけです。

この研究により、脳と腸が密接に情報をやり取りする「腸脳相関」の仕組みを通じて、物忘れの新たなメカニズムが解明されつつあります。

この成果は、将来的に腸内環境を整えることで、加齢による認知機能の衰えを抑制できる可能性を提示しており、大きな注目を集めています。

腸内細菌の変化が記憶力低下(物忘れ)を加速

今日の情報源です。


実際に、高齢マウス(18~24ヶ月齢)の腸内細菌を若いマウス(2~3ヶ月齢)に移植し、「体は若いのに腸内細菌だけが老けている状態」を作り出した実験では、若いマウスの記憶力(見慣れた物と新しい物を見分ける能力や、迷路の位置を覚える能力など)が、明らかに低下することが判明しました。

反対に、老齢マウスに抗生物質で腸内細菌をほぼゼロにすると、記憶力低下がかなり防ぐことができたそうです。

そして、若いマウス同士を同居させた場合には同様の低下は見られなかったため、これらの結果は同居によるストレスではなく、特定の腸内細菌叢の変化に起因するものと結論づけられました。

具体的には、

1.加齢とともに腸内で Parabacteroides goldsteinii などの特定の細菌が増加します。

2. これらの細菌が、中鎖脂肪酸(MCFA)と呼ばれる代謝物質を過剰に産生し、腸内に蓄積させます。

3.蓄積したMCFAが、腸にある免疫細胞(骨髄系細胞)の受容体「GPR84」を刺激します。これにより、炎症性物質(サイトカインなど)が放出されます。

4.炎症物質が、脳と腸をつなぐ情報ハイウェイである迷走神経(腸と脳をつなぐ神経)を攻撃し、その働きを弱めます。

5.腸からの「内受容感覚(体の内部の状態を感じ取る信号)」が脳に届かなくなることで、海馬(記憶を司る脳領域)の機能が低下し、物忘れが進むと考えられています。

3.結果として、海馬(記憶を司る脳領域)の機能が低下し、物忘れが進むと考えられています。


このOGPによると、GLP-1受容体作動薬という、糖尿病・肥満で爆発的に使われている薬で、老マウスの記憶が回復したといます。

マウスの実験では、老齢マウスと若いマウスを同居させることで細菌を共有させましたが、これは「一緒にいること自体」が悪いのではなく、「自身の腸内環境が老齢型(多様性の欠如や悪玉菌の優勢)に傾くこと」が問題です 。

脳治療に新しいアプローチか?

この研究は、将来的に以下のような新しい治療や予防法につながる期待を持たせています。

脳をいじらない認知症対策:
外科手術はもちろん、脳に直接作用する薬でもなく、食事やプロバイオティクス(善玉菌の摂取)を通じて腸内環境を整えることで、記憶力の低下を食い止めるアプローチです

早期発見の指標:
腸内細菌の変化をチェックすることで、脳の症状が出る前に「物忘れのリスク」を予見できるかもしれません。

先のOGPに出てきたGLP-1受容体作動薬というのは、糖尿病の治療薬です。

ですから、正式に記憶力低下や認知症への適応が認められているわけではありません。

ただ、最近は、ソフトな糖尿病薬のメトホルミンに抗癌効果があるとか、クレアチンというアミノ酸が脳機能維持に有効とか、本来別の機能を期待されていたものが、他の効用もあるとわかってきたケースもあります。

さらに研究を進めることで、腸から脳に作用するはたらきをする食品や薬品などを発見していただきたいと思います。

みなさんは、腸のプロバイオティクス(善玉菌の摂取)について、日常的にされていますか。

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