
91歳で今もフルタイムで勤務する玉置泰子さん。
朝5時半に起床し、ヨガのストレッチで一日を始め、般若心経を唱えて感謝の気持ちを整えた後、朝9時から午後5時半まで大阪の専門商社で働き続けています。
玉置さんは2021年、ギネスブックに「世界最高齢の総務部員」として認定されました。入社は65年前、現在の会社の会長よりも12歳年上です。
定年退職は55歳の時でしたが、会社からの強い要望とご自身の希望で嘱託社員として働き続け、今では表計算ソフトを使いこなし、新入社員研修まで担当しています。
統計から見える高齢者就業の実態
今日の情報源です。
入社65年、91歳の総務部員
本当のホワイト企業はこういう方が
気持ち良く働ける会社だよねシンプルにとても尊敬する
— ツイッター速報?Buzznews???? (@buzsokk) January 23, 2026
玉置泰子さんのケースは特別かもしれませんが、高齢者が働き続けることは、現代日本では珍しいことではなくなりました。総務省の統計によると、2023年時点で65歳以上の就業者数は過去最多を記録し、約1000万人に達しています。
これは65歳以上の人口のおよそ4人に1人が何らかの形で働いている計算になります。労働力率(働く意思と能力のある人の割合)を見ると、60~64歳では71.4%、65~69歳では51.6%と、いずれも近年上昇傾向にあります。
高齢者の就業形態は多様化しています。パートタイム、アルバイト、嘱託、業務委託など、従来の正社員とは異なる働き方が一般的です。特に65~69歳では、非正規雇用の割合が約7割に達しています。
産業別では、卸売・小売業、医療・福祉、サービス業に高齢就業者が多く、肉体労働よりも経験や知識を活かせる分野が中心となっています。
高齢者に向いている仕事とは?
玉置さんの事例を参考にしながら、高齢者でも長く続けられる仕事の特徴を考えてみましょう。
まず、経験と知識を活かせる仕事です。玉置さんが「会社の歴史を一番よく知っている」と評されるように、長年の経験が価値となる業務は、高齢者にとって大きな強みになります。コンサルタント、講師、アドバイザーなどの役割がこれに当たります。
次に、柔軟な勤務形態が可能な仕事です。フルタイム勤務が難しい場合でも、時間や場所に制約の少ない働き方を選択できる職種は、高齢者に適しています。リモートワーク、フレックス制、短時間勤務などを活用できる職場環境が重要です。
また、肉体よりも精神的な負担が少ない仕事も適しています。デスクワーク、軽作業、コミュニケーションを主とする業務など、身体的負荷が比較的少ない職種は、長く続けやすい傾向があります。
玉置さんのケースでは、「必要とされ、誰かの役に立てること」が大きな働く動機となっています。単なる収入確保だけではなく、社会的役割を持つことが、高齢期の就業継続につながっています。
低年金・低福祉社会における就労の現実
日本では、年金のみで生活を維持することが難しくなっている現実があります。特に非正規雇用期間が長かった人や、離婚・死別などで年金受給額が少ない人にとっては、高齢期の就労は経済的必要に迫られた選択となっています。
しかし、玉置さんのケースは少し異なります。彼女は定年後に嘱託として働き続けることを選択しましたが、それは経済的必要以上に、「誰かの役に立ちたい」「必要とされたい」という人間の根源的な欲求に基づいています。
このような事例は、単に「働かされる」高齢者と、「働き続けることを選ぶ」高齢者の違いを如実に示しています。後者の場合、仕事は単なる収入源ではなく、生活の質を高める要素となっています。
福祉制度が十分でない社会では、高齢者の就労が経済的必要から強制されている面も否めません。しかし、玉置さんのような事例は、高齢期の働き方にはもっと豊かな可能性があることを示唆しています。
自分軸の人生設計で築く生涯現役の生き方
玉置さんの生活には、いくつかの特徴的な要素があります。朝のヨガや般若心経による心身の調整、会社での役割意識、新しい技術(パソコン)への適応力、そして何よりも「誰かの役に立つこと」を働く意義と捉える姿勢です。
これらはすべて、受動的ではなく能動的な人生設計の結果です。彼女は「会社はパートナー」と語り、仕事と個人の関係を対等なものと捉えています。このような自分軸で築かれた働き方は、長期間持続可能です。
自分軸の人生設計とは、他者の期待や社会の慣習に流されるのではなく、自分自身の価値観や能力、望む生き方に基づいて人生を設計することです。玉置さんにとっては、会社で必要とされ、役に立つことが、自分の存在意義につながっています。
生涯現役であることのすばらしさは、経済的自立だけでなく、社会的つながりの維持、自己成長の機会の継続、そして人生の目的意識の保持にあります。これらはすべて、生活の質を高める重要な要素です。
生きがいと認知症予防としての役割・目標
仕事や役割、目標を持つことは、高齢期の認知機能維持に極めて重要であることが多くの研究で明らかになっています。社会的なつながりを持ち、知的活動を継続することは、認知症の予防策として有効です。
玉置さんの場合は、表計算ソフトの使い方を学ぶ、新入社員に掃除の心得を教える、といった日常的な業務そのものが、脳の活性化と社会参加を同時に実現しています。
「生きがい」は、単なる趣味や娯楽以上のものです。他者から必要とされ、役割を果たしているという実感が、人間の基本的な心理的欲求を満たします。玉置さんが「会社に存在している意義」と語るように、社会的役割は自己肯定感の基盤となります。
高齢期に新たな目標を持つことは、人生に新鮮な刺激をもたらします。それは必ずしも大きな目標である必要はなく、玉置さんのように「エクセルをマスターする」「新入社員に会社の伝統を伝える」といった小さな目標の積み重ねでも十分です。
会社の会長に「右腕」「参謀」と評される玉置さんは、今でも毎朝5時半に起きてヨガをし、般若心経を唱え、パソコンに向かって報告書を作成します。
34人の新入社員に向けて掃除の心得を説く姿は、65年間の経験が結晶したものであり、その言葉は単なる業務マニュアルを超えた人生の知恵を含んでいます。
「必要とされ誰かの役に立てるのが、私が会社に存在している意義」。彼女の言葉は、高齢期の働き方について、経済的必要を超えた深い示唆を与えてくれます。
定年後の人生をどう設計するかは個人の選択であるが、玉置泰子さんの事例は、年齢に関わらず「誰かの役に立つ」機会を持つことが、人間としての尊厳と生きがいにつながることを教えてくれます。


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