志賀直哉の唯一の長編小説『暗夜行路』の草稿が、我孫子市の白樺文学館で一般公開されたというニュースがNHKで報じられています。

この記事は約4分で読めます。

志賀直哉の唯一の長編小説『暗夜行路』の草稿が、我孫子市の白樺文学館で一般公開されたというニュースがNHKで報じられています。

NHKのサイトで、志賀直哉の唯一の長編小説『暗夜行路』の草稿が、我孫子市の白樺文学館で一般公開されたというニュースが報じられています。『暗夜行路』は、1912年に執筆を始めてから試行錯誤を繰り返して25年後に完結。そのうち8年間は、千葉の我孫子に書斎を構えて執筆に取り組みました。

Webサイトによると、『暗夜行路』の草稿は、これまでに多くのものが見つかっていますが、今回、我孫子市の白樺文学館で一般公開されたのは、1915年ごろに書かれたものと推定されるそうで、市販のノートに鉛筆で記された49ページにわたる内容で、去年4月、我孫子市内の民家で見つかりました。

草稿は主人公の名前が出版された原稿と異なっていたり、主人公の京都での新婚生活や妻との花札のエピソードなどが描かれたりして、細かい手直しの跡も確認できるということです。

「あらすじ」ご紹介の前に一言

今日の情報源は、NHKニユースです。


まず、『暗夜行路』のあらすじを、今から書きます。

その前に一言……

SSブログの頃、青空文庫(著作権切れ作品掲載サイト)にある文学作品のレビュー記事を、週に5記事ぐらい書いていました。

それに対して、毎回粘着していたあるアンチが、「あらすじを書いたら作品を読む人がいなくなる」とケチを付けてきた、と以前ご報告したことがあります。

心理学の研究(カリフォルニア大学サンディエゴ校など)では、「ネタバレ(あらすじ)を知っている方が、むしろ物語を深く楽しめる」という結果が出ています(スポイラー・パラドックスと言われます)。

特に、文学的価値の高い作品ほど、展開の意外性より「どう描かれているか」が重要だからです。

そもそもさ、「あらすじがあるから読まない」なんていう層は、あらすじがなくても、どっちみち読まない層でしょ(笑)

それに、私が書かなくても、本作を含め有名な文学作品の「あらすじ」は、ネットに転がっています。

要は、私に対するレベルの低い嫌がらせ(のつもり)なんで、余生はあまりくだらないことに時間とエネルギーは使わないほうがいいですよ、ネガティブな心で成仏できなくなっても知らないよ(笑)

いずれにしても、「あらすじ」を見たくない人は、飛ばしてください。

出生と夫婦生活の「闇」に悩む主人公

本書は、時任謙作(ときとう けんさく)の、出生の闇と青年期の苦悩を描いています。

謙作は幼い頃に母と死別し、祖母のもとで育ちます。

青年期になり、実は母が祖父との過ち(近親相姦)によって自分を産んだという、衝撃的な出生の秘密を知らされます。

この事実は、謙作に深い苦悩と人間不信を植え付け、孤独感を強めます。

苦悩の中、謙作は直子と結婚し、一時的な安らぎと幸福を見出そうとします。

しかし、今度は、謙作が義母(お栄)を迎えに朝鮮へ行っている留守中に、夫婦の住む家で妻の直子が謙作の従兄と関係を持ってしまうという新たな悲劇が起こります。

帰国後、直子の異変に気づいた謙作は事実を知り、激しく動揺します。そりゃそうだ。

理性では許そうとするものの、感情が受け入れられず、直子に辛く当たり、生活は荒廃します。

彼は心の平安を求めて各地を放浪し、尾道などに滞在します。

最終的に、謙作は鳥取県の大山にある寺院にこもり、修行僧のような生活を送ります。

そこで病に倒れ、生死の境をさまよいますが、大自然の雄大さの中で、自己の存在の小ささと人間を超えた世界のありようを悟り、すべてを許し受け入れる境地に至ります。

重病の知らせを聞いて駆けつけた直子は、回復しつつある謙作の顔を見て、「助かるにしろ、助からぬにしろ、とにかく、自分はこの人を離れず、どこまでもこの人について行くのだ」と決意します。

物語は、夫婦が再び共に生きていく希望を示唆して終わります。

「私小説」に見える純文学作品

私が興味をいだいたのは2点。

1.これは志賀直哉のリアルな生活を描いたものか
2. 志賀直哉は仏教徒なのか

ということです。

研究者の書籍なども確認しましたが、物語と同じ「出生」ではなかったものの、親子関係は最悪だったそうです。

「妻の不倫」については、それを確認できるエピソードはありませんが、まあ夫婦だから、いろいろ考えることはあって、それが「不倫」という形で創作されたのかもしれません。

物語のモチーフに仏教を感じたのですが、志賀直哉は特定の宗派に属する仏教徒という確認はできません。

ただ、本作には、西洋的な「自我」の確立から始まり、最終的に東洋的な「無」や「自然との合一」へと至る、仏教的とも言える精神の変遷が色濃く反映されていて興味深いと思いました。

ということで、『暗夜行路』は、「志賀直哉が、実生活で感じた孤独、家族との確執、人間への不信といった内面的な感情や苦悩を核として、それを普遍的な文学作品へと昇華させるために、大胆なフィクションの骨格(出生の秘密や妻の過ち)を組み合わせた作品」と言えます。

主人公の内面が深く反映されているため、「私小説」の範疇に入れられることが多いですが、本作は強固な構成力と創作力に裏打ちされた、純文学作品としての評価が妥当であると思いました。

志賀直哉の作品は、読まれたことはありますか。

暗夜行路 (講談社文庫) - 志賀直哉
暗夜行路 (講談社文庫) – 志賀直哉

コメント